劇場版レヴュースタァライトの感想覚書

※雑多な覚書程度の感想ですが、ネタバレを含みますので未見の方はご注意を。未見の方はぜひ劇場でご覧になられてください。


先月友人から勧められてアニメ版を見た後、今朝方劇場版レヴュースタァライトを見て来ました。

この作品、なんらかの形でものづくりを経験したことのある人なら絶対に響くものがあると思うのですよね。

個人的に響いたのは純那の選択。純那ってアニメ版から努力家として描かれているのですけれど、それが過ぎて決断を先延ばしにしてたんですよね。作中でそんな彼女が早稲田大学文学部志望からNYの劇団へと進路を変更した姿に勇気をもらえた気がしています。

これは私事で恐縮なのですけれど、私は趣味で絵を描いています。20歳ぐらいの時からなのでかれこれ15年ぐらい。お世辞にも上達したとは言えないのですけれど、これって努力したつもりになっていて挑戦をしてこなかったからだなと劇場版を見て思いました。

努力をすることで自分を誤魔化すのではなく、何が自分の作りたいものなのか、自分の創作の情熱の根源はどこなのかを見つめ直して、しっかりとそこへ向けた努力をしなければならない。そんなふうに感じました。

劇場版レヴュースタァライト、自分の熱を「再生産」するためにきっと折に触れて見返す作品になると思います。

以下は雑多な感想
・物を作る人って、プロアマ問わずきっと自分の中に衝動や情熱(「種」や「キラめき」と表現される)を抱えていて、それが尽きない限り表現活動や創作活動を決してやめられないんだろうなと。あと観客や受け手から受け取る情熱(応援や感想)もまた燃料になるって改めて言われると、そうだよなって思いますもの。

・でもそれを野菜の寄せ集めのキリンを燃やすことで表現するのは何食ってたらそういう発想に至るのかわからない。その元ネタになった野菜の寄せ集めの肖像画、ジュゼッペ・アルチンボルドってルネサンス期の画家の絵なんですね。てっきり現代アートだと思ってました。

・チャップリンの「私の最高傑作は次回作だ」って言葉は有名ですけど、世の中、作り上げた作品が最高傑作になってしまって歩みが止まってしまうことってありますよね。その恐怖をどう克服するかはすごく難しいことだけれど、華恋たちの場合はそれを乗り越えて、前向きに進もうという意思が作中から感じられてよかった。

・のっけから始まるばなな無双。というか彼女ってもしかして年単位でループ繰り返してて、一人だけ成人してたりするんでしょうか。だから何かの拍子にお酒を口にしたことがある?それとも何かの比喩だろうか。あと、丸の内線は湾岸地域は走りません。どこ走ってんだあれ、舞浜の方か。

・まひるがまた闇落ちしたのかと思ったらまさかの演技。怖いよ。そりゃひかりもアンデルセン神父に追い詰められたみたいになりますって。構図としてはアニメの再演なんですけれど、当初ひかりを疎ましく感じていたまひるがひかりの背中を押すのがいいなあと思いました。あとあの猫らしきキャラクター名前あったんですね。

・京都組の劇伴が完全に仁義なき戦いのテーマのパロディで笑ってしまった。というか、99期生の子達の前口上って「仁義を切る」ってやつですよね…時代劇っぽさもありますけど。それはそうと、清水の舞台にデコトラ並べてぶつけるって発想おかしいですよね。清水の舞台から飛び降りるってそういうことじゃなくね?

・純那とななのレヴューは個人的に感じ入る部分も多かったので、一番好きなシーンです。「人には運命の星がある。綺羅星、明星、流れ星、己の星は見えずとも見上げる私は今日限り。99期生星見純那、掴んでみせます自分星!」って元々の口上も好きだったけれど、劇場版でもっと前向きで泥臭い言葉に変わったのが本当に良かった。99代生徒会長って首席の真矢や次席のクロディーヌにもない純那だけの「役」なんですよね。

「殺してみせろよ、大場なな!」から始まる逆転劇は、得物が弓でもなければ、リーチで劣る小太刀でっていうのがいいですね。しかも自決用に渡されたものだし。退場の時に純那は涙を流さず前を見据えて進んでいくのも彼女の成長を感じられて本当に良いシーン。

・真矢とクロディーヌのレヴューの心臓云々は『ファウスト』のパロディですかね。後半戦に入って急激にテンポが加速するのが見ててすごく気持ちよかった。落ちてきたフレームを剣が貫くことで絵画のようになるってすごい発想。

・古川監督は東京タワーをなんだと思っているんだろう。アニメ版でも約束タワーブリッジで度肝を抜かれたけど、ロケットの発射装置に見立てたり(しかもロケットに見立てられてるのは魔改造された丸の内線だし)、はたまた東京タワーそのものがロケットになってポジションゼロにぶっ刺さるしでもう何が何だか。参りました。確かにあの役割はスカイツリーには難しい。

・このシーン、言い訳できないレベルでマッドマックスのパロディなのが好きです。全体的に鉄道の上で物語が進んでいくから、その意味でもマッドマックスのパロディとも言えそう。

・最後、華恋が東京タワーから落ちていくシーンで思わずガッツポーズしました。アタシ再生産!目的を見失って、それでも失意から立ち直った華恋の胸に、ひかりの手によって再び「ポジションゼロ」が刻まれるって本当に綺麗な締め方だと思います。

・エンディングで99期生のその後が描写されるのですけど、スタッフロールにあわせて描写していて上手く情報を取捨選択しているなあと思いました。普通にアニメとして描いてもいいのでしょうけど、蛇足になっちゃいますしね。華恋だけワンシーンありますけど、想像を膨らませるような描き方でこれもまた良い。

以上、長文にお付き合いいただきありがとうございました。もう一度ぐらいは劇場で見ておきたいなあ。


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