痴漢のリアル

おはようございます。
こんな気持ちの良い朝にする話ではないですが、私は下ネタが大好きです。
そんな私でも中学生のときにしっかり痴漢に遭ったことがあります。
別につらい思いをしたとか、トラウマという自覚もないのですが、それでもあの時のことは克明に覚えてます。
ので、まだ克明なうちに記録に残しておきますね。

あれは中学三年生のころ、夕方家に帰るときのことでした。
私は電車で2時間弱かけて通学していたので、近所に友達はいませんでした。家の最寄り駅に着いたころには日も暮れてきて、薄暗くなっています。
私は駅前のパン屋でパンを数個買って、晩御飯前に食べるのが日課でした。中学生恐るべし。持ち金全てをそのパン屋につぎ込んでいました。
その日もパンを買って、駅を出て、家まで20分くらいの道をぷらぷらと歩き始めます。
駅から少し離れたところで、キャップを被った男が近付いてきました。
「君かわいいね」
無視
「ねえねえメールアドレス教えて」
ほんとはここでも無視するべきなんです。でも私はなんやこいつと思って応対してしまいました。これが間違いでした。
「携帯持ってないんで。」
真っ直ぐ前を向いたまま言ったので男の顔は分かりません。
もうこのころには辺りはかなり暗くなっていました。
でも私はこれからどうなるとかは何も思っていませんでした。そのうち去るかなと思ってた。
でも男はしつこくネチネチついてくる。
そして駅から徐々に離れ始める。バス道なので道路は広いが、歩道は狭い。人通りも多くない。道路と公園に挟まれて、助けを求める家もない。一方通行。
「なに持ってるの?荷物持つよ。」
私が男側の手で持っていたパンの袋を見て言う。
「パン」
「パ、パン?も、持つよ」
「いやです、やめてください」
「持つってば」
男は私からパンの袋を強引に取り上げた。「返して!パンだけは!本当にマジで!!」すごいパンに必死なJCにちょっとひきながらも、パンの袋を持ったまま男は詰め寄ってくる。
「メアドがだめならLINE教えてよ」
「LINEやってない」
「え~本当に~?けど携帯は持ってるじゃん。じゃあ電話番号は?」
「しらない」
「おうちの電話番号は?」
「110」
言ってる間に、男はあいてしまった私の右手を握ってきた。いわゆる恋人繋ぎ。大人の男の骨ばったでかい手。
街頭に照らされて男の顔が一瞬見える。狐みたいな顔。細く長い目がギラりと光った。

これは、マズい。

私はここでようやく危機感に差し迫られた。こんな田舎で、私の育った平和なホームでこんなこと起こるとも思っていなかった。
手をガッチリ掴まれている。振り払おうとしたけど離れない。気持ち悪い。逃げられない。
こんな時に限って、周りに誰もいない。すぐ隣で空いた道路を車がびゅんびゅん走っているだけだ。
でも少し先に行ったら一方通行の道から階段を上がって抜け出す道がある。そっちの方が暗いけど、住宅街に出る。叫んだら人が出てきてくれるかもしれない。今のまま進んでも誰にも助けを求められず逃げられず埒が明かないので、私はそこに賭けることにした。それまでの間、万が一のときあとで通報できるように、男のことを問いただし始めた。さっきちらりと見えた顔から、大体20代前半くらいだろうと推測した。
「大学生ですか?」
「うん」
「どこの大学?兵庫県?」
「あー、まあそう」
「なに大学ですか?」
なに大学かまで教えてくれたが、なぜかここだけ覚えていない。くそう。知らない名前だったしそもそもそんな大学なかったのかも。
「お兄さんの名前を知りたいです」
「えー…そんなことより電話番号は?」
「名前も知らない人に教えられません」
とか言うてる間に、一本道から抜ける階段に辿り着いた。トントン歩いてゆく。やはり街灯は少なく一気に暗くなる。人がいる気配もない、ちょっと後悔する。怖い。失敗したかも。
しかし向こうには住宅街がある。
男もそれに焦ったのか、階段をのぼりきって急に事態を進展させた。
「じゃあ分かった、帰るから。最後にチューしよ」
心臓がバクバクする
マズい
手は辛うじて繋げてもチューなんて絶対したくない。そもそもチューとか言うな。こっちは少女漫画を読んで育ってこなかったいたいけな女子中学生ぞ。

男は私の手を放し正面から迫った。
身を翻し逃げようとする。
背後から抱きつかれる。
下からガシっと胸を掴まれる。
0.1秒まさぐられて
ぞわわわわ
「っっ気持ち悪いんじゃボケエエエエエッッ」
叫びながら、肘で力の限り背後の男のみぞおちあたりをど突いた。
手が離れて、私は全速力で走った。
走って
走って
どんどん走った。
振り返らず走った。家の間をうねうねと曲がり、裏道を使い、もし追いかけられてても撒けそうなルートを使って走った。
うちのマンションが見えて、ようやくゆっくりと振り返った。
誰もいない。
よかった。
助かった。
とりあえず友だちに電話した。
「やばいやばいやばい」
というようなことだけ言って、何が起きたかは言えなかった。
「明日学校で言うわ」
そして電話を切り、私はバタバタと体を振って、鞄をはたいた。
発信機とかがついてるのではないかと思ったからだ。
今後も同じ目にあったらまずい。次は逃げられないかもしれない。
そして、少し冷静になって、私が一番恐れたのはこれだった。

親にバレたらどうしよう

親にバレるのが一番怖かった。「怖かったね」などと抱き着かれて泣かれるなどするのが一番怖かった。性的対象として見られたことが親に知られるのが心底怖かった。
もう一度制服と鞄をはたいた。大丈夫だ。家までは来るまい。
大丈夫、大丈夫。
私は平静を装ってマンションに入っていった。何事もなかったように過ごした。そこからは覚えていない。

バレなかった。

それがたぶん金曜とかで、土日を挟んで、学校でようやく仲良し4人くらいに話した。聞いてほしかったのもあるけど「こういうことマジであるみたいだわ。みんなほんまに気を付けてくれ。」ということをひたすら聞いてほしかった。
さすが私の友達、みんな大げさに同情するわけでもなく「まじか」「それは怖いな」「カメラ持ってる人おらんかった?AVの導入撮ってたんじゃ」とか口々に言って時に笑かして消化してくれた。「それ親とか警察に言った方が…」とちょっと言う子もいたが、私が「それは痴漢に遭うよりいや」と言うとそれ以上強くくることはなかった。
現に、その時点でもう私はあの狐顔大学生野郎に対する恐怖とか怒りとかはあんまり無かった。「本当にこんなことあるんだ…」「やばい体験をした…」「男ってほんまに胸触ってくるんや…」としみじみ感じていた。無論あんな経験は二度としたくないが。

そうしてそのまま何もなく、京都に行き、帰ってきて、今に至る。

電車の痴漢はどこでも起きるけど、こんな路上の痴漢・性犯罪とかも都会だけの話じゃないみたいよ。本当にたぶんどこでも起きるんだよ。こんな美しい平和な町でも起きたんだから。本当にみんな気を付けてね。
あとなんか話しかけられたら無視一択だよ!!!


結局あの狐野郎は今頃どうしてるんだろうか。こうやって被害者が通告せず野放しにしちゃうからまた同じことが起きてしまうんだろう。もっと酷い事件が起きてしまうかもしれない。でもそれでも、私は親に知られたくなかった。今でも言えない。


そんなことがあったからって全然フェミニストにはならなかった。全然男嫌いじゃないし、全然下ネタ好き。
なんで?
でもこんなもんなんだろうな
しかし今考えると女子中学生にそんなことするなんてまじあり得ん。中学生なんて子供やからねほんまに。同級生に相手にされないからって子供にそんなことすんな!!!しねカス!!!


あんの狐クズ野郎に正義の鉄槌が下ったことを、生涯下り続けることを、祈るばかりである。


今日も平和な一日を!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?