地元のツレ

年内最後の労働を納めて電車い揺られていると、高校の友人FからLINEがきた。

「出発いつやったっけ?」
「一月二日」
「明日の夜空けといて」

おっとこれは?
なんで空いてる前提で話が進んでいるのかは分からなかったが、これはお見送り会的なものじゃあないですか?
その日Fは同じく高校の同級生と遊んでいたので、「薄情者が出発するから皆でお別れ会しようぜ」みたいな話になったに違いない。なぜならその面子で半年前、タイへと留学する友達のお見送り会を盛大に開いたからである。

当日、私はわくわくして駅に着いた。
集合場所も決まっていなかったのでFに電話をする。

「駅ついたでー、どのへんおったらいい?」
「決まってへん」
「今日どこ行くん?」
「トリキ」
「てか誰が来るん?」
「え、私とY。」

あ、FとYだけなんや。
え、お見送りパーティーじゃ…ないの?
てか私はYと別にあんまり接点が無かった。ちなみにFとYも、話せるけど別に仲良くしていたわけではない、そんな関係である。Yは男子である。
その三人?どういう会?
なんとなく気まずそうなので友人のSに電話をかける。
「ちょ、来てや」
「無理やって」
「お願い!お見送りしてよ私を!楽しいよ!」
「あのなあ、私が今どういう状況か分かってる?家でこたつの中入ってるねんで。無理です。」

私はこたつに負け、Sの勧誘に失敗した。

そして、FとYと接点がある人を探し、私が昔付き合っていたNが来ることになった。

FとYと私なんて高校時代三人でしゃべったこともないのに気まずくならんかなと思っていたが、実際会うとそんな心配は杞憂であったことに気付いた。三人ともアホだったので「気まずい」という単語を知らなかったらしい。昔からの仲良しだったと言われても「そうかも」と思ってしまうくらいにゲハハと笑っていた。

そして後からNが現れる。
なんか、男というか、ちょっとおっさんになったなあ…
見た目はそんな印象だった。
しかし中身は相変わらずで、絶妙な気遣いができて、小さなこともよく見ていて、アホで、無駄に器用で、優しかった。
煙草を吸っていたが全然さまにはなっていなかった。
ちょくちょく、距離が近いシーンがあった。三軒目のバーでダーツしながら、なんとなくくっついていた。

…いやよくないよくない、え?なにしてんの?
男だよ?私知ってる知ってる、こいつ下心あるんですよハイ、
しばらくくっついていて、絶妙なタイミングでスッと離れた。
冬の厚い布越しに、なんとなく人の体を感じて安心感があったが、女子とくっつくときのそれとはやはり少し違うかった。
いやお前も離れろよ、なあ。
友だちだ。
二年くらい付き合ってたけどmixなんてしてない。本当に、すごい良い距離感の、青春の、ハイ、中高校生の恋愛でした。
そしてずっと友達でした。
波長が合うし、基本的に人として大好きなんですよ。
だから大切な存在なんです。
大学に入って、久しぶりに会って、ぬるっとセフレになんて絶対になりたくない。酔っぱらってたって彼には抱きつかない。付き合ってないんだから。

だから離れた。
「これ以上はだめですよ」という小さな私なりの意思表示だった。伝わってなくてもいい。


結局カラオケでオールナイトした。
クリーピーナッツで盛り上がったり、玉置浩二のモノマネをしながらスキマスイッチの『奏』を歌ったり。銀魂とかハイキューの懐メロも歌ってね。
めちゃくちゃ楽しかった。
写真を撮った。
高校生のときの、放課後に行ったカラオケ。
そのまんまだった。
あの延長線だ。
なんにも変わってないな。
いや少しずつ変わっているんだけど。
あのときの生徒であった自分と、友達と、今の私と、友達はちゃんと同一人物なんだなと。
環境や見た目が少しずつ変わっているからこそ、感じた。
あのときのままだとは言わないけど、同じ人だよ。
当たり前かもしれないけどね。


大学に行って京都で暮らした。中高時代の友達としばらく疎遠になっていたが、地元に戻ってきてその繋がりを少しずつ取り戻しつつある。
これが、こいつらが、私にとっての「地元のツレ」なんだなあ。
なんだかこの言葉って画面の中の少し離れた言葉だと思っていたけれど、
私にも「地元のツレ」ってやつができたようだ。
地元のツレと離れてそれなりに、時間が経ったってことでもある。
Yだって別にすごい仲が良かったわけじゃないけど、昔の姿を知っている。
なんだか素敵な事だなあと思う。
Fは大学に入ってもそれなりに会っていた唯一のツレだ。だから地元のツレ感はあんまりない。
Nは中高時代の姿だけをよく知っている。大学でなにをしているのかは知らない。煙草を吸ってようがGPAが1を切っていようが(ちなみにFも1無い。どうなってるんですか?)、Nの心の奥底にある柔らかくて優しいところを、私は知っている。と思っている。
姿形は変われども、それなりに平等でぶつかり合っていた中高時代の友人って、やっぱりちょっと特別かもなあ。
大好きです。大切にしようと思った。


社会人になって上京した場合、京都の大学の友達は「地元のツレ」とはまた違う存在なんですかね?

将来楽しみだねえ。

そんなこんなで、アデュー



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