70日目 カルチャーイブニング

本日は大変満たされた良い日でした!ちゃんと働いた!グッドグッド!

今日の午前中はアートの授業だった。
前期ラストの授業。壁画が完成してアリックスとハグした。へへへ!へ!

そして今日のメインは"cultural evening"!
今日は「アートアンドクラフツの会」でグリーンランドのリアとデンマークのカーステンと薄情者含む日本人二人が企画しなければいけなかったのだが、彼らから特に提案がなかったので日本のカルチャー紹介会になった。
プランとしては、各々が自分の名前を漢字で書いて、それを栞にする。それから日本のデザートを振る舞うという流れであった。

先生から「寿司は何回か食べたことあるからデザートを用意してくれ」と言われていたので、私たちはもちをつくることにしていた。
周りの人もまじで楽しみにしてくれていた。
"mochi!!!??!?"
"Are you gonna make mochi!!?"
"OMG, mochi!! Japanese mochi!! fantastisk!!!"
みんなもちもち言っててかわいい。なんで日本語圏外の人がしゃべる日本語はこんなにもかわいいんだろうか。ねえ?
そんなわけで今日作るときも「何時からもちつくるの!?」と何人かに聞かれ、三時半には7人くらいの人が集まっていた。
さあさっそくもちを作るぞと意気込んだその時、ベルギーのアリックスが餅粉を指して恐ろしいことを言った。
「この粉、グルテン入ってないからもちもちしないんちゃう?」
嫌な予感が日本人たちを襲った。
私たちがオーダーしていた白玉粉はちゃんと英語で"grutain rice flour"だったのだが、キッチンレディが用意してくれていたのは"rice flour"であったのだ。
「ま、まあ作ってみよか」
嫌な予感をかき消すように粉をファッファとボウルに注ぐ水を適当に入れてこねるといいかんじにまとまって、ちょうど耳たぶくらいの柔らかいもちができた。
これこれ、想像通りよ、なんだできるじゃん!
お湯を沸かし、白玉をぽこぽこ入れる。
小さい頃作った記憶によると、白玉が浮いてきたらちょうど良いころ合いである。ざるみたいなおたまですくって水気を切ったらあら簡単、かわいらしい白玉の完成だ。

ーーーーー
いつだったか、9月、お月見の頃。あっちゃんちで白玉を大量につくって、ちゃんと木の台みたいなのにのせて、お月見団子を作ったことがある。今思えばああいう経験って大事だったなあ。そして楽しかったんだよなあ。意味もなくあんな大量に白玉作って。積んで。少しでも月に近づけるようにと思って高く高くしようとするんだけど、絵にかいたようなまんまるなもちじゃなくて、全然高さが出なくて、しかも積もうと思ったら四角錐型にしないといけないからけっこう大量の団子が必要で、、
小さい頃のことをほとんど覚えていない薄情者であるが、あのときのチビ薄情者がとっても楽しんでいたことはなんか覚えてるんだよなあ。
その記憶があるから、受験期でもお月見の日はセブンで串に刺さったお月見団子かって、帰り道に満月を見ながらもちをくわえたりして…
文化だなあ。こんなへんてこな行事でちょっと特別な気持ちになれるんだから、受け継いでいきたいなあ。へんてこで楽しいことじゃない?
ーーーーー

白玉が、沸騰して荒ぶっているお鍋の水の底から、出てこない。

「何分…経ってるっけ」
「えー………出してみる?」
「せ…や、な。ちょっとこの白玉ポンコツや、気抜けて寝てるわ」

一向に顔を出さない白玉を、強制的にざるみたいなお玉ですくいあげる。
姿を見せたその白玉は…なんかニョッキみたいな形をしていた。
一口サイズのその白玉を、ナイフで切って、口に入れる。
……
「もちじゃない」
その一言で十分である。
米粉なので米の味はするのだが、なんというか歯切れがよくて、ちょっとぼそぼそしていて、ニョッキとかニョッキみたいなパスタとか、そういうかんじのものである。
「もちもち!」と張り切っていたマリアも、ひとかけらを食べてゲボ吐きそうな顔をした。

海外に来る日本人たちよ、こちらでもちを振る舞うときは、絶対にグルテンの入ったもち粉を買って下さい。

私たちは頑張った。グルテンフリーの米粉からもちを作る方法を調べるも失敗し、レンジで作る方法を試すもカチカチになり、形、水分量、ゆで加減、全てにおいて試行錯誤を繰り返した。「real mochi」を食らうために。

そして私たちは「おいしい」ところまでたどり着いた。水分量の大変多いもちの粉をミニチュアのピザのように広げてさっとお湯でゆでる。塩気が多めのみたらしソースを作って、水を切ったそれにとろりとかける。
「んん!!!おいしい!!!」
日本人は言った。「どこかで食べたことのある味だ!」
その平たくて米の味をした歯切れのよいものにみたらしをかけたそれは、完全に五平餅の味であった。 

マリアやアリックスの反応が微妙であったので、我々は今度ちゃんと材料を揃えて「real mochi」を作るという契約を結んだ。そして今夜はもちを諦めたのであるが、「何かしらデザートを食べたい」ということで、チョコ餅を作るはずであったチョコを溶かし15分くらいでブラウニーを作っていた。早すぎる。なんというファインプレーだ。

ブラウニーは彼らに任せて私たちは書道体験の準備を始めた。
急いでプレゼン用のスライドを簡単に作り始める。英語もわかんないけど大丈夫かと思ったがなるようになれを信じるしかない。とはいえ始まる直前まで不安しかなかった。
時間の無さに震えながら夜ご飯を食べに行くとマリーがいたのでハグをした。落ち着く。てかサイズが大きいというのもかなりいい。同じサイズだったらなんか恥ずかしくなっちゃうので。いいにおいがして、セーターのふかふかが肌に優しかった。私も誰かがハグをしてきたら嫌がらずに受け止められるようになりたいぜ。けっこう無理かもしらんけど。

そしていよいよ時間が来た。
私はここでかなり大人しいキャラであったと思うが、大人しい人間がぼそぼそしゃべったってなんにも面白くないと思うので「ウエルカ~ム!」というテンション高めの入り方をした。ここまでくると緊張はしなかった。恥という概念があまりないのは私の良いところだ。恥の多い人生を送ってきたものだから。

そしてあまりに周りの雰囲気が良かった。みんな私が盛り上げようとするところで手を叩いたりひゅーひゅー言ってくれたりして場を作ってくれた。
そして何より、興味を持って真摯に取り組んでくれる。
私は当初心配していた。書道なんて楽しいのか?需要あるのか?
もし自分がネパール語やアラビア語の名前をもらってそれを伝統的な方法で書くというイベントがあったとしたら、本当に楽しめるのか?文字の意味も分からないのに??
しかし彼らはすごかった。楽しんでかいてくれるし、何より最善を尽くそうとたくさん練習して本番に臨んでいた。
漢字をかくって難しいかな?と思ってもいたが、心配は無用だった。みんなめちゃくちゃうまい。全然できます。
ある程度みんな大人だっていうのもあるけど、ちゃんとやらなくてスカすみたいなことが本当にない。全員だ。
みんな漢字の名前に喜んでくれて、意味を聞いてくれて、一生懸命書いてくれて、「めっちゃ楽しかった!!」と言ってくれた。
だから、結果的に成功だったと思えた。
嬉しかったー
嬉しかったなー
書道を楽しめるって、文化レベル高くね?
けっこうやってること意味分からんと思うねんけど、相手の文化へのリスペクトがすごいし、何よりそれを全力で行って楽しめるというということが、本当にすごい。すごいことだ。なかなかできないよ。
自分の彼氏の分の名前も書いたり、かわいいイラストを描いたり、
想像してたより本当に素敵な時間だった。

みんなのことがもっと大好きになったし本当にリスペクトが絶えない日であった。
私も彼らのように、何事にも興味を持って、自分の知らないたくさんのことを全力で楽しんで、楽しめるように生きていきたいなあ。

あと夜これを書きにグランドマルームに行くとマティーンがいて、でっかいクッキーをくれた。
「もう一個あげる」
でっかいクッキーをもう一個くれた。チョコが挟んであるやつ。いらねえ。
「遅く寝るのはあかんで、おやすみ!」
そう言ってドアを閉めた。日本のアニメが大好きなマティーンは本当に「おやすみ!」と言って去っていった。
でっかいクッキー。いらねえ。でも優しい。
こっちの人はケーキが出たら目を輝かせて「ケーキあるの!!?」と飛んでいく。痩せてる痩せてないとか関係なく。
マティーンもしぶしぶといったかんじでくれた。今日頑張ってるの見たから、楽しかったから、お疲れありがとうというかんじなのかな。クッキーもらったら元気が出ると本当に思ってるんだろうな。自分も食べたいのにくれてるんだもんな。優しいな~嬉しいな~
大きいクッキーの重みが、とってもマティーンの気遣いの質量な気がして、ずっしりと心地よく手の中に感じられた。
こんなにいらないけど、でも大きいっていいよね。

グッド!幸せ!おやすみー

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