いつまでも

月の頭に、じいじがしんだ。
それから初めておばあちゃんの家に来た。
快適だ。
とても綺麗になっている。
物が、とても少なくなったなあ。
じいじがしんでから、お母さんたちが何度かこの家に訪れていた。みんなでいろいろ捨てて、片付けたんだろうか。なにを話すんだろうか。
手続きとかも色々あるらしく、
「人がひとり死ぬって、大変なことなんだなあ」
とおばあちゃんは言った。

寝る前、私はスマホの充電器を忘れたことに気付く。
あいにくおばあちゃんはアップルユーザー、タイプCの充電器は持っていない。
電池は残り20%で、近くにコンビニなどはない。明日までもたないので少し焦ると、おばあちゃんが
「あ、そういえばじいさんのがあるわ」
と言った。
ラッキーと思ったが、おばあちゃんが取り出した袋を見てう、と胸が掴まれたようになった。
じいじの本名、脳外科、なにやら数字や記号が書かれたシールの貼ってあるジップロック。
病院に預けたものだ。じいじが死ぬ直前に使ってたものだ。
刑事ドラマで見る、被害者の遺物のように見えた。
「はいこれ」
「あ、ありがと」
充電器にも同じようにシールが貼ってある。そして今、現在進行系で、私のスマホを充電してくれている。
これを使ってた人はもういないんだな。


今週末は、父方の祖父母に会いに行く。
私は大学に入ると京都にトプンと浸かり、友だちと朝から晩まで騒ぎ、家族のことなんて放置していた。目を逸らしていたのもある。
久しぶりに会う祖父母はどんな顔をしてるんだろう。
怖い。
怖いなあ。
ごめんね。
たくさん大切にされたのに、薄情な孫でごめん。
そして近々、おじいちゃんもおばあちゃんも死んじゃうんだろうなあ。
なるべく、苦しまず、悲しまず、安らかに。
最後まで幸せを感じて生きてほしいなあ
そしてできれば私の知らないところで
ポックリしんでほしい
ごめんね
ごめんね


お母さんお父さん
私があなた方にイライラできるのも、口ごたえできるのも、労いの言葉をかけてあげられるのも、いつまでなんだろう。
10年後、65歳かあ。
ちゃんと高齢者だね。せめてそれまでは元気でいてほしいなあ。
私は31歳だね。65歳まではピンピンしてくれてたら、そこからもし体調が悪くなっても認知症になってきても、施設に入れれるお金は貯めれてるかなあ。
元気なうちに孫の顔も見せたいなあ。
それまでに花嫁姿も見せたら喜ぶかな、もう立派にお母さんお父さんのところから旅立つよって、今までありがとうって、ちゃんと言える場所だよね結婚式って。
お母さんお父さんいつもごめんね。元気に生きてね。

私もがんばるよ。
なにをって、なんだろね。
でもお金を貯めるのと、結婚と、子供産むのが、できるように頑張るよ。
いつも技術のことばっかり考えてるように見えるかもしれないけど、私もそうゆうの考えてるよ。

だって、じいじが死んでしまっても、どれだけ悲しくても、それを支えるお母さんと、いとこのお母さんと、孫たちがいるおばあちゃんは幸せなように見えるから。
私もお母さんお父さんにいつまでも幸せでいてほしいや。



じゃあね。

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