医師が「的確な」リハビリを処方しにくい理由を考えてみた
リハビリテーションのイメージと言えば、一緒に歩いているだとか筋トレをしているだとか麻痺に対して何かをしているみたいな印象を持っている人が多いです。
これは一般の方のみではなく、リハ以外の医療職もそうだったりします。
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士達は何が得意で何ができて、どんな治療ができるのか。
これを理解している医師は少ないです。なんなら私たちの中にも理解していない人がいるかもしれません。
そのため、「とりあえず寝たきりを防ぐ」「関節拘縮予防」「ope後はとりあえずオーダー」このような具体性に欠ける処方となります。
これは医師が悪いのでしょうか?
違います。
正確な情報を発信できていない我々サイドに問題があります。
「とりあえず」の処方から「これを頼む」の処方へ
先ほども例に挙げた
「とりあえず寝たきりを防ぐ」
「関節拘縮予防」
「ope後はとりあえずオーダー」
このオーダーから、
「この人の人工呼吸器離脱に向けて排痰をどうにかしてほしい」
「脳画像はこうなっているけど、歩行可能かtryしてほしい」
のような具体的な依頼欲しくないですか?
もちろん前述の例も無駄ではないですし必要なことです。
なんならオーダーだけきて、介入の意義を自ら見出すことも日常茶飯事だと思います。
しかし、これってチーム医療でしょうか?
頼られているのでしょうか?
「とりあえずこんな状況になったりリハにお願いだ!」みたいな感じならともかく、惰性で出されるオーダーもたくさんあります。
便秘だからマグミット、出ないから半錠を1錠に
ope後だからリハ、退院間に合わないなら2単位に増やして
これって似たようなもんですよね。
リハビリテーションでこんな効果がある
更には自分はこの領域でこんなことができる
こんなセールストークを医師にしたことありますか?
オーダーは降ってくるものですか?
病院で働く多くのリハスタッフはオーダーは降ってくるものと思っています。
特に急性期病院やそのほか大規模な病院ではオーダーは取りに行くものです。
自らを売り込んで取りに行くものです!
リハは例えるなら「効果のばらつく厄介な薬」
各病院の歴史や機能によって、そのリハビリテーション部が得意とする領域・扱っている疾患の多い領域は様々です。
例えば呼吸療法1つ取っても、集中治療領域と慢性呼吸不全では毛色がかなり違います。また、集中治療領域内でも心臓血管外科・循環器内科・呼吸器外科などで求められる知識・技術は違ってきます。
それぞれ扱っている分野・領域が決まっていても、そこで働くセラピスト個人の能力は違います。
医師がある効果を狙ってリハオーダーを出してくれた。
担当したセラピストはそれに答え結果をだした。
同じような患者が来た際にまたその医師はオーダーした。
しかし、担当したセラピストはそれに答える知識・技術がなかった。
おなたが医師なら次に同じような患者が来た時にどうしますか?
オーダーを出さないよりは出してたほうがいいから出す
悪くされるリスクがあるからオーダーはやめる
セラピストを指定してオーダーする
色々選択肢はあると思いますが、ポジティブな選択肢が選ばれる事は少ないです。
これでは双方に成長もメリットもないどころか、患者がよくなる可能性を削ってしまう可能性があります。
リハビリテーションは非薬学的アプローチである
リハビリテーションは薬ではないですが処方箋をもらってアクティブになる点では薬と同等です。
薬といえば、一定の効果が得られると認められているものに点数がついています。
リハも一定の効果があるから診療報酬がついているんです。
どのような効果があるか説明できますか?
この疾患にこういうことしたらこうなる。リスクはこれで、得られるメリットはこれで、そのメリットはだいたいこれくらいの割合の患者が享受できる。エビデンスとしてはこういった論文がある。RCTなど大規模な研究はないが、ケーススタディやケースレポートとしてこういった介入も効果が出ている症例がある。この患者にはこのアプローチは効果がないとのデータがあるから介入はデメリットが勝る・・・
こんな会話したことありますか?
ないなら自らの職・知識・技を売り込めてません。
売り込めていなければ正しく使われるわけがありません。
我々は薬学的ではなく非薬学的アプローチを行います。
でも売り込みは薬みたいにしないとダメなんです。
薬には営業がついている
MRさんは薬を必死に売り込んできます。
自社の製品が同症状に用いられる他社製品と比較しどういった点で優れているのかを事細かに説明します・・・お弁当付きで
作用機序・効果効能・効果持続時間・他製品との性能比較論文の提示・コスト
このようなことを説明し導入してもらうのです。結構良いお弁当付きで
我々はお弁当を持っていないので理学療法の紹介を生業にしているわけではありませんから、毎度時間を取ってもらって現場でこれを説明しなければいけません。
いきなり関係性もできていない忙しい医師に売り込みなんてできませんから、病棟看護師にリハってこんなことができるだとか営業して、信頼を勝ち得たときにちらほらオーダーがくると思います。
そうなってから本格的に営業していかなくてはなりません。
リハを外から見た欠点
何に効くのかわからない
どんなことをしてくれるのかわからない
同じ職種なのに人によって対応差がある
人によってやることが違う
ラボデータなど客観的指標で判断が付きにくい
なんかよく休む!笑
こういった点を説明し理解してもらうことが最初の一歩だと思います。
リハの薬よりすごいところ
人であるということ
考えることができ、身体・精神症状を加味した介入ができる
負荷量の調整・増減が可能である
多職種と情報交換・連携ができる
多様な合併症にも配慮できる
多様な生活背景にも対応できる
患者のADLを考えることができる
患者の退院後の未来を考えることができる
運動学を他職種よりも理解している
こういった強みは常に意識しておきましょう。我々の強みは他職種に手を差し伸べれるポイントです。
まとめ
リハビリテーションは自らの意思で診療はできません。
医師に処方してもらって初めて可能となります。
その医師にただ漫然と処方してもらうのではなく、
医師が目的をもってリハ処方できるように調整しておくことも業務のうちと考えています。
そのためには、我々の強みは何か・我々の欠点は何か・それを補うためには何をすべきかを常に考えておく必要があると思います。
人間はひとくきの葦にすぎない。自然のなかで最も弱いものである。だが、それは考える葦である。だから、われわれの尊厳のすべては、考えることのなかにある。だから、よく考えることを努めよう。 -パスカル
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