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書籍レビュー「ビッグ・ポテンシャル」

『優れた一人の力は、チームの力にはかなわない』

チームの生産性を最大に高めるために、本書で扱われているテーマは「最大ポテンシャルの発揮」である。最大ポテンシャルとは、チームメンバーの創造性を発揮させて自分を取り巻く生態系の力を存分に発揮すること、と説明されている。

逆に最大ポテンシャルの対義語として説明されているのが限定ポテンシャルであり、限定ポテンシャルの考え方では優秀な個人の力を発揮させて、それによりチームの成果を高めるというものである。限定ポテンシャルの考え方に従って優秀な社員を褒章する制度を設けている企業も多いと思う。しかし、本書ではいくつかの実例から、限定ポテンシャルの考え方よりも、周囲への貢献や他社とのつながりによってチームの成果を高める最大ポテンシャルの考え方の方が成果が高まると示されている。

つまり、一人の優秀な社員が力を発揮できる環境を作るよりも、平凡な才能であっても多くの社員がお互いに影響しあい、貢献しあう組織の方が成果が高いということである。

ではどうやって最大ポテンシャルを発揮できる環境を作るのか。そのための手法がいくつか説明されている。「ポジティブな意識を持った環境作り」「お互いの称賛」「多様性」「誰もがリーダーシップを発揮できる環境」などが興味深い。

特に「お互いの称賛」についてはすでに様々な取り組みをしている企業も多いと思う。本書で示された事例では、メンバーが相手に称賛とともに会社からの一定の金額の賞与を送る権限を持つ、という仕組みがあった。この事例で明らかになったのは、送られた相手の生産性に影響を与えたのは金額ではなく、称賛された回数であったことである。称賛は多く贈られるほど相手に良い効果を与え、また送られた相手もまた誰かを称賛するトリガーになって、組織に称賛の嵐を巻き起こしていく。

こうして最大ポテンシャルを発揮する組織を作っていくのである。

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