肝気鬱結によるストレスで、生理前に発症する舌痛に対する漢方処方・鍼治療

はじめに
肝は五行説では木に属し、草木の枝葉が四方八方に広がり伸びるような条達(ジョウタツ
木の枝が伸びるように四方に伸び通ずる)の生理状態を好み、逆に束縛や制限を嫌います。
肝の一番重要な働きは疏泄作用で肝の条達の性質により全身の気をスムーズに停滞することなく運行させる事です。肝の疏泄が順調に働いて気のエネルギーがスムーズに全身や五臓六腑に送り届けられれば肉体や精神は正常に機能します。
しかし、精神や肉体が束縛や制限を受け続けると肝の疏泄作用が失調(肝気鬱結)し気の停滞が発症すれば、発生部位に様々な病態を引きおこします。肝気鬱結証を発症すると、肝胆の臓腑と連結する足少陽胆経と足厥陰肝経、衝任脈の運行部位に大きく影響します。
肝の疏泄失調が脾胃の働きに影響すれば、束縛や制限などのストレスが引き金になって、食後の胃もたれ、胃痛、食欲不振、腹痛、下痢などの症状が起こります。
唇の裏面や舌の側面は足厥陰肝経と衝任脈が通過する部位のため、束縛や制限のストレスによって肝鬱気滞化火を生ずれば、口唇の裏面、舌の側面に痛みや炎症が発症します。
また、肝の疏泄失調は胆汁の分泌にも影響するため油性の食品の運化が苦手になります。

今回は、肝気鬱結によるストレスで、唇の裏面、舌の側面に強く腫れや痛みを発症した患者の例を報告します。

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