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動かない「地域緊急用メールシステム」

引用元URL:http://www.ohmynews.co.jp/News.aspx?news_id=000000003213

期待されるシステムに税金の無駄
三田 典玄
2006-11-21 07:43

【画像省略】
撮影者:OhmyNews

 私が住んでいるのは東京都の港区だ。2005年の12月半ば、この地域の小学校と中学校の児童や父兄を対象に「港区緊急用メール配信システム」が稼働を始めた。いや、正確に言うと「稼働のアナウンスがあった」と言うべきだろう。

 12月の半ばといえば、学校が休みになり、親も何かと気ぜわしい年の瀬だ。そして、夏休みと同様、子供の非行や、最近問題となっている子供の誘拐・誘拐未遂、暴力事件などが頻発する時期でもある。そういう時期になる前にこのシステムの稼働が学校から知らされる、というのは、子を持つ親としても、心強い味方が1つ増えた気がして、ちょっとだけほっとさせられた。

 折りしも、世間では多くの子供の連れ去りや連れ去り未遂事件が多く報道されていて、父兄や地域の人たちの夜回りなどが始まっていた。特にこの地域は、東京のJR山手線の内側でも私立・公立含め学校が多く、近くには高額所得者の多く住む地域もあることから、事件が頻発し、毎日のように学校から「このような事件があったので注意するように」という印刷物が回ってくる、という状態だった。

 「港区緊急用メール配信システム」は、自分のメールアドレスを登録すると、港区内で暴力事件などが合った場合、すぐさまメールで事件が起きた場所や時間、状況を知らせてくれる、というものだ。このシステムがあれば、例えば、暴力団の発砲事件などがあった地域がリアルタイムでわかり、その地域へ近寄らないなどの自己防衛策をとることができる。

 このシステムの稼働を知らせる通知が学校から届いたのは12月16日。私はこのシステムへの登録申請をオンラインで行った(登録申請はオンラインのみである)。そして間もなく、このシステムは開始するはずだった。しかし、翌06年1月10日に冬休みが開けても、このシステムへの登録完了を知らせる通知は来なかった。

 1月24日、私は業を煮やして、このシステムの管轄である港区の区役所に電話をし、登録完了のメールが来ないことを告げた。システムの担当部署は教委の学事係だった。電話をして2時間半が過ぎた頃に「システムの登録に必要な学校での処理を長い間怠っていたため、登録が完了していなかった。すぐに学校の登録処理を継続するよう指示した」との返事が返ってきた。そして翌日、登録完了メールが来た。この時点で1カ月以上、システムは稼働していなかったことになる。

* * * * *

 登録から約2週間が過ぎた2月8日、子供が学校から持ち帰ったプリントには、この地域で子供の連れ去り事件が2月6~7日の2日間で2件起こっており、各自が注意するように書かれていた。しかし、この時点で、メールによる緊急通報は一切来ていなかった。

 それから現在に至るまで、多くの同様の事件があり、学校からは情報を知らせるプリントを頻繁にもらった。しかし、このシステムを使ったメールによる通報はこれまで1通だけ来ただけだ。それも、事件があって2日後にである。学校からの印刷物は事件の翌日に来たのに。

 このことを同じような年ごろの子供を持つ杉並区の友人にも話たところ「状況は全く同じだ」とのこと。「事件の通報が学校から電話で回ってきたが、そのすぐ後にメールが来たので見たら、なんと前日の事件の“緊急”通報だった」という笑えない話もあったそうである。おそらく、日本全国でこのような「動かない緊急システム」は、かなりたくさんあるのではないだろうか。

 私もシステム屋の端くれだが、システムはもちろんコンピューターとかネットワークだけで動いているわけではない。それを理解し、使いこなす人が継続的にそのシステムにかかわって、初めてシステムが有効に働く。ITのシステムといえど人間のシステムの一部であって、人間がシステムを動かしたり維持したりすることを怠れば、ITのシステムだって動くわけがない。

 今回のようなことが民間の企業であったのであれば、その担当者は通常すぐにクビか左遷だろう。

 住民の税金で作られ、住民にもおそらくは期待されていたであろうシステムが放置され、その役目を果たしていないというのは、大きな問題である。そして今またこの問題が解決されないうちに「いじめ」「自殺」などの問題に学校とその職員の興味が移ろうとしている。

 言われれば一生懸命やっているように見せるが、言われないうちはなにもしないどころか、仕事を怠けることさえする。昔から「お役所仕事」と言う言葉が示す通りのあきれた行いだ。これまでのこのシステムに関する経緯から考えて、今回の「いじめ」「自殺」もまた、このキーワードが忘れ去られるまでに多くの時間は要しないのかも知れない。

 もうすぐシステムが稼働して2回めの年の瀬がやってくる。コンピューターは今も日本全国で無駄に電気代だけを食い、毎月のプロバイダーへの接続料金か、ホスティングサービスの料金を私たちの税金から垂れ流しているのだろう。


<記者注>この件については、こんなことになるのではないか? といういやな予感がした。そこで、当初から記録に残す必要を感じた私はリアルタイムでこの件を自分のブログに書き残した。
登録完了メールが来ない
登録完了メールがやっと来た
登録は完了したものの稼働していない
そして3月

オーマイニュース(日本版)より

※引用文中【画像省略】は筆者が附記


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これかな? 記者さんのブログを確認できないので詳細は不明です。今でこそ「緊急速報エリアメール」や「防災行政無線」で緊急時に広く事態を知らせるシステムが行き渡っていますが、立ち上がり時には何らかのトラブルはつきものです。記者さんも「しっかりしてくれよ」という気持ちで記事を書かれたのでしょうが、ルーチン化して業務の一部として定着するまでは余計な仕事が増えたという認識になるのもある意味仕方ないと思います。それじゃいけないのはそうなんですけど、人間はそんなもんです。

今(2024年)この記事を読み返していますが、この記事が書かれた当時(2006年)はiPhoneの発売前、i-modeやEZwebの頃です。(ここは削除)

(削除)

iPhoneもパラダイムシフトの節目ですが、Apple Vision Proもネット端末の概念を変えるんだろうなぁ、50万円なら手が届くんだよなw ちょっと欲しい。

『電脳コイル』の電脳メガネの時代が来たと考えるとワクワクします。