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臨床腫瘍医制度の確立を急げ

引用元URL:http://www.ohmynews.co.jp/News.aspx?news_id=000000001075

遅れる日本の専門医制度
記者名 M本 S

 日本の3大主要死亡原因は、順に悪性新生物(がん)、心疾患、脳血管疾患であり、がんの治療は依然として社会的な問題となっています。年に30万人以上の人が亡くなり、年々右肩上がりで増加しています。

 がんの治療では、一般的に外科的療法・薬物療法・放射線療法などが患者の病状の程度に応じて施されています。中でも抗がん剤は副作用が強く、患者に肉体的・精神的苦痛を与えています。外科的措置の場合、執刀した外科医が臨床経験に基づいて、薬剤師などの意見を参考にしながら投薬指示を行なっていますが、多くの外科医は、大学で薬物療法を学ぶことなく医師になっています。時として強い副作用の出現や薬効のなさに悩んだりと、手探りで投薬治療を行なっているのが現実です。

 ある薬物は僅かな投薬量で重篤な副作用を引き起こします。また投薬の仕方によっては全く効かないという薬物もあります。さらに個体差(代謝・吸収)もあります。結果、薬物療法の難しさから医師は安全圏をとろうとします。副作用を忌避するあまり、投与しても効かないということもあり得るのです。

 アメリカでは臨床薬剤師が臨床医を手助けしています。この制度の有用性を説いても、残念ながら現在の薬剤師教育では実現しそうもありません。(私の本音では、薬剤師の奮起をお願いしたいところです)

 こうした中、日本臨床腫瘍学会認定のがん薬物療法専門医(臨床腫瘍医)が今年4月、誕生しました。日本で初めての投与・副作用対処の専門医です。すでにアメリカでは、1970年代に専門医制度が確立し、厳しい試験にパスした臨床腫瘍医が9000名もおり、医療の現場で活躍しています。この結果といえるかどうかわかりませんが、アメリカでは心疾患が死亡原因1位で、がんは二番目となっています。

 今回、認定された医師は47名で、諸外国に比べ大きく遅れをとっています。認定医になるには、豊富な臨床経験・深い専門知識が求められていますので、育成には相当の時間を要すると思いますが早期に専門医の育成をお願いしたいと思います。

 アメリカのシカゴ中心街にノースウエスタン大学病院があります。ここに、臨床腫瘍医である日本人医師が外科医と放射線医と治療方針を巡って激論を交わしている姿が、ウェブサイトで取り上げられています。外科医長は「臨床腫瘍医がいることで手術に専念できる」と述べています。また、臨床腫瘍医はがんの薬物療法(化学療法)の専門家で、部位別ではなく総合的にがんを診る主治医として、治療方針に中心的な役割を果たすことを期待されています。がん治療の強力な助っ人である専門医によって、日本のがん治療が飛躍的に発展し、多くのがん患者の延命率向上が期待できると思います。

 日々がんと戦っている方、それを見守るご家族の方の心中を思うと一刻も早い臨床腫瘍医制度の確立を願わずにはおれません。
2006-09-13 08:25

この記事についたコメントは1件。

1 L'howon 09/13 17:29
『臨床腫瘍医制度の確立』を願うことは,感染管理専門医や終末期医療専門医などの必要性と同様に各論としては正しいと思います.しかし,こういったメディアで報じられる各論を実現するために,一体誰に願おうとしているのでしょうか.
 専門バカと批判されたため,現在の臨床研修制度は始まりましたが,おかげで各分野の専門分野での研修を開始する時期は遅くなっています.このため,小児科や産科が壊滅的な状況におかれていることは周知の通りです.米国と比べ医師やパラメディカルを合わせて医療従事者の数が圧倒的に少なく,世界的にも格安で治療をしている,日本の医療ではニッチな専門医を雇っていく余裕はないでしょう.米国では癌患者は誰でも臨床腫瘍医に診てもらえると考えているのでしょうか?
 我が国全体の医療費はパチンコ産業と同規模ですが,これだけで理想的な医療を目指すのは限界です.あまり,各論ばかりにとらわれると,宮内某のいわれるように,家を売って病院に行くようになってしまいます.
 最後に,日本では『臨床経験に基づいて』とまるで手探りで化学療法を行っているように書かれていますが,エビデンスに則って一定のプロトコルに従って治療されていることを付け加えておきます.

薬を飲めばガンがたちまち治る夢のような未来が来るといいですね。