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【映画】『みえない雲』監督インタビュー

引用元URL:http://www.ohmynews.co.jp/News.aspx?news_id=000000003194

被爆国・日本へのメッセージ
豊原 富栄
2006-11-21 08:04

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[編集部注]

記事には映画の内容(ストーリー)に関する記述があります。

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グレゴール・シュニッツラー監督
撮影者:オーマイニュース

 原子力発電所の事故が人をどう変えてしまうのかということが、この映画では描かれている。そのなんとも対処し難い運命を支えてくれるのは、切なく純粋な愛なのかもしれない。

 そんなさまざまなテーマを内包するドイツ映画『みえない雲』の監督であるグレゴール・シュニッツラー氏(ドイツ)に、オーマイニュースがインタビューを行った。


■全編を通して伝わるメッセージ

 登場人物の心の機微を表現する音楽や、物語が進む中で登場する情景はなじみ深い。どこにでもある日常として、簡単に自分の中に落とし込めるだろう。だが、この映画が伝えようとするメッセージは、こうした何気ないシーンのいたるところに織り込まれている。

 例えば、主人公の少女・ハンナが恋人・エルマーの待つ視聴覚室に走っていくシーン。この中にピカソの名画『ゲルニカ』が一瞬映り込む。シュニッツラー監督はシーンをこう解説する。

 「ロケができる学校を探していると偶然、(ロケをした学校に)飾ってあったんです。持ち込んであそこに掛けたわけではありません。『ゲルニカ』は、ドイツのどの学校にもあるわけではなく、ドイツの文化や歴史にどう向き合うかという、学校の歴史に対する姿勢によって違います」

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『みえない雲』(シネカノン提供)

 ただ、あの絵の前を走らせることは意味があったという。それは物語が進むにつれ、画面全体の色調がモノトーンになるということと重なる。ハンナに訪れるさまざまな困難を予感させ、また、“過去の戦争”を考えさせられる一瞬でもある。

 町の中で牛が群れている奇妙なシーンもある。ハンナが弟・ウリーと駅に逃げるときに町の中心部にいる牛たちがいる。これを見て、チェルノブイリの原発事故の後、乳牛や食肉用の牛がこつ然と姿を消してしまったことを思い出す人もいるかもしれない。

 しかし監督は、「牛という動物が、人間に世話をされなければ生きていけないものだということを表しています。第2次世界大戦のときもそうでした。あのときは、乳搾りをする人手すらなく牛は放置されてしまいました。パニックに陥り人がすべてを投げ出したということ、そして、罪のない無垢(むく)な目を持つ牛にはその状況がどう見えるかを問いかけたシーンです」とその意味を話す。

 そして、放射能を含んだ雨に濡れたハンナの髪が、被曝(ひばく)によってすべて抜け落ちてしまうシーン。

 「女性にとって髪は“女性性”の象徴と言えます。その髪がまったくなくなってしまう。それでも彼女は帽子をかぶりません。それは自分の現実と向き合うということでもありますが、それと同時に『こんな姿にさせれてしまう危険なものの上に、自分たちの生活が成り立っている』というメッセージを伝えたかったのです」

 “生と死”を対比させ、希望を感じさせるラスト。2人で弟のウリーの亡骸(なきがら)を埋葬するシーンは、彼らの目の前にある死が間接的に見つめられている場面といえるだろう。

 「死は誰にでも訪れるものです。いやおうなしに死とは直面します。どのくらい生きられるかわからないけれどあきらめてはいけない。すべてを自分で決めるという決意が伝わるようにと思います」

 シュニッツラー監督はこう言って、それに続くシーンを解説してくれた。

 「ハンナに、次第に髪が生えてきていることがわかるでしょう。あれは『希望』なんです。そして風を体中に受けることで、これまでの苦難から解放され、未来へと飛躍する躍動感を表そうとしました。新しい世界へと向かわせようとしたのです。作中には風を使うシーンがよく見られたと思いますが、それぞれ意味があるのです」

 監督は、彼女の勇気や力強さを描き出したかったとも語っていた。日常の生活から突然突きつけられた現実に対し、勇敢に立ち向かうハンナ。そして、ラストシーンのこれまでとは一転して緑の輝く色彩が印象的だった。


■日本でこの映画を公開するということ

『みえない雲』(シネカノン提供)

 『みえない雲』がドイツ国外で公開されるのは世界で日本が初めてだという。監督は「被爆国ということもあり、そういう絆(きずな)もあるのかもしれない」と語る。

 「日本での公開は意味があると思います。核の恐ろしさを唯一、地球上で知っている国という意味で、放射能や原爆の力をより受け入れやすく、想像力を持って見てくれるのではないでしょうか」

 最後に、シュニッツラー監督はこれから映画を見る方々へこんなアドバイスをくれた。

 「まず、若い人や次の時代の担い手に見てもらい、問題意識を持ってもらいたい。できれば、友だちと見てほしいですね。親と行けば自分で考えるよりも『こうだ』と教えられてしまいますから。これは教育的な映画ではなく、考えるきっかけになればうれしいと思って撮ったものです。また、原子力の話だけではなく、ラブストーリーでもあります。自分たちに近い立場の人間が、事故によってこんな運命にさらされることもあるかもしれない……。そんなことに思いをめぐらせてほしいです」

* * * * *
 映画は12月下旬よりシネカノン有楽町にて正月第1弾ロードショーとして公開される予定だ。また、原作も文庫本で発売されている。「どういう視点から見るか」はこの作品に触れた人の数だけあるだろう。


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【関連リンク】
シネカノン有楽町

オーマイニュース(日本版)より

※引用文中【画像省略】は筆者が附記


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チェルノブイリ原発事故のすぐ後に書かれた原作を下敷きにしているとはいえ、(削除)。実際にわたし(たち)は福島原発の事故とその後の対応を目にしていますので、(削除)。

※削除しました。この監督が他にどういう作品を撮影したのか検索していただければw 記者さんは1年目ですのでそんなものかなという感想です。