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【トラベル】ひっそりとした田舎の無人駅で秋を見送る

引用元URL:http://www.ohmynews.co.jp/LookKorea.aspx?news_id=000000003101

ソ・ブウォン
2006-11-13 13:20

【画像省略】
撮影者:ソ・ブウォン

 木枯らしが吹き荒れた週末、全羅北道・益山(イクサン)と郡山(クンサン)を結ぶ鉄道の中間にある臨陂(イムピ)駅を訪れました。人の往来が途切れて久しいこの駅舎は、優に樹齢百年を超える二本の太い銀杏の木のあいだに、忘れ去られたように横たわっています。

 少なくとも、10月の末まではこんなに荒れ果ててはいなかったはずです。11月1日付けで勤務していた最後の駅員が去ってほどなく、化粧室や窓は閉鎖され、欄干など「使えそうなもの」は誰かに持ち去られた状態で放置されているのです。

 今は捨て置かれたようにみすぼらしい姿ですが、臨陂駅は韓国に残る駅舎のうちもっとも古く(1912年竣工)、近代文化遺産(登録文化財第208号)に指定された建物です。

 一時は人びとが頻繁に利用した待合室には、「やむを得ず(?)駅員が勤務できなくなった」という内容の案内文と、駅に行き交う通勤列車の時刻表が壁に真新しいまま貼り出されています。郡山と益山を日に八回往復する通勤列車が今もここに停車していることを物語るのは、待合室の隅に置かれた乗車券の収集箱だけです。もはや、臨陂駅に人の気配はありません。

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撮影者:ソ・ブウォン

 ありふれた椅子ひとつない殺風景な待合室を出ると、すぐに鉄道があります。プラットホームといえど土台を厚くした低い堤といったおもむきです。もともと臨陂という地名は、押し寄せる海水を遮断する堤防があったという意味に由来するそうです。干拓前は、臨陂駅の真ん前まで干潟が広がっていたようです。もしかすると鉄道と平行するプラットホームが防波堤だったのかもしれません。

 今は色あせた青い塗装屋根と壁のはげたペイントの跡、錆びた看板など、すべてが古びていますが、ただひとつ、ホームに高くそびえる「臨陂駅」の立て札だけが艶やかで新しく、目をひきます。

 呆然と、今は野原になった干潟を眺めていました。秋の収穫を終えた野原は、地平線が見えるほど広々としています。その地平線を追って行ってみようとした時、郡山行きの通勤列車が閑寂とした静けさを破る轟音をたて、駅に入ってきました。

 午後2時、週末の昼時でもあって、汽車のなかにはたくさんの乗客が乗っていました。鞄を背負った学生たちも、恋人ふうのカップルも、身なりのよい中年夫婦も、またカメラを肩から下げた私のような旅行客もいます。
 
 駅員がいないため乗車券を買うことができず、汽車の中で料金を出さなければならない煩わしさがあります。しかし、適時乗務員が来ては、市場で駆け引きをするようにやりとりする新鮮さは、遠い昔の記憶のような遥かで暖かな経験です。

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撮影者:ソ・ブウォン

 ふたつの無人駅を過ぎ、終点の郡山に着きました。汽車旅行と呼ぶには足りない19分の旅程でした。来た道を戻るには、たっぷり一時間待たなければなりません。なんの目的もなく汽車でも乗ってみようと来た道だけに、これといってやることもなく駅周辺をぶらつきました。郡山駅のすぐ右側にある、うらぶれた、しかし生活味あふれる昔ながらの市場に立ち寄り、きな粉餅数個、みかん数個を買い、乗ってきた汽車にふたたび乗りました。  

 来るときには見られなかった晩秋の風景が、戻るときには目にいっぱい飛び込んできました。午後の消え入りそうな陽射しが、広い野原にやわらかく和やかに降り注いでいます。この素朴でゆるやかな風景は、汽車のガタゴトという音によく似合います。

 聞くところによると、麗水(ヨス)と木浦(モッポ)の間を往来し全羅南道を隅々まで走っていた通勤列車が、少し前に廃線になったといいます。運営上赤字だという理由だけで、田舎のあちこちに世の情報を伝えてきた連絡線が、鉄道だけを残し姿を消しています。いくつかの地域では、観光用に衣替えを図るなど、それなりの努力を続けていますが、赤字という「汚名」を拭うには役不足のようです。

 臨陂から郡山までを往復してみると、短い半日のパック旅行になりました。臨陂のプラットホームに降り、秋をつんで去ってゆく汽車をしばらく眺めていました。どこかのように、赤字を理由にいつなくなるかもしれない運命だけれど、ここだけはその姿のままに残ってほしいと、汽車の後姿を眺めながら願いました。

オーマイニュース(日本版)より

※引用文中【画像省略】は筆者が附記
この翻訳記事の元記事は以下。


この記事についたコメントは1件。

1 八又蛇 11/13 16:30
日本に韓国を紹介するなら、もっと記事を選ぶか再編集すれば?いまのままなら「Look!! Korea」なんて要らない。


臨陂駅は現在、列車の停車しない駅になっているようですね。

(削除)歴史のある文化財として保存されるのでなければたぶん取り壊されていたんだろうな。残したいものを残したい人の思い出補正というのも案外大事なんだろうと思います。(削除)