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学校で「受け身」を教えよ ~鈴木邦男コラム~

引用元URL:http://www.ohmynews.co.jp/OhmyColumn.aspx?news_id=000000003273

鈴木邦男
2006-11-21 07:58

 いっそのこと、日本の学校はすべて、ミッション・スクールにしたらいい。キリスト教は自殺を罪と教えている。人間は神によってつくられた。その命を勝手に奪うことは罪になる。自殺を防ぐには、それしかないかもしれない。だって教師や校長までが自殺する。これでは生徒に「自殺するな」と言えない。

 日本は世界有数の「自殺大国」だ。年間3万人も自殺する。学校をミッションにするだけでは間に合わない。キリスト教を国教にして自殺を阻止するか。その3万人だって表に出た数字で、本当はもっと多いという。元刑事の北芝健が言っていた。交通事故、病院での病死にも実は自殺がかなりある。家出、失踪者の中にも自殺している人が多いという。

 必ずしも弱いから自殺するのではない。抗議や責任感からも自殺する。家族に保険金を残すために自殺する人もいる。校長、政治家、警察官……など、一般には「強い人」と思われている人も自殺する。職種でいったら警察官の自殺はいちばん多いかもしれない。何かあったら責任をとって自殺する。「武士道」精神が残っているのか。それもあるが、普段、悪を追い、悪と闘っている人は、「守り」に回ると弱い。不祥事などで自分が「攻められる」立場になると、あっけなく自殺する。そういうときの「受け身」を教わってないからだ。

【画像省略】
(写真はイメージ、ロイター)

 大学のとき、合気道を習っていた。ある日、合気道の先生に聞かれた。「最高の護身術は何だと思うかね、鈴木君」。「合気道でしょう」と自信を持って答えた。「違いますね」。じゃあ柔道か、空手か。あるいは武器を持つことか。「それも違います。最高の護身術は、逃げ足が速いことです」。エッと思った。からかわれていると思った。「危険を避け、逃げることが大事です。川があれば泳いで逃げる。塀があれば飛び越えて逃げる。だから、走るだけでなく水泳も、走り幅跳びも、棒高跳びも、元々は護身術です」。そうなのか。さらに言う。「逃げ足が速いこと、それに受け身です。それが最高の護身術です」。


 交通事故で車に撥(は)ね飛ばされながら瞬間的に受け身をとって助かった、という人の話をよく聞く。それだけではない。「人生の受け身」も必要だ。僕は子どものときから、失敗、挫折(ざせつ)の連続だった。いじめられ、受験に失敗し、退学になり、大学では左翼にリンチされ、会社はクビになり、負け続け、投げ捨てられ、たたきつけられてきた。逃げ出せばいいのに逃げ遅れ、痛めつけられた。でも、その中で自然と「受け身」をおぼえた。木や鉄のような<強さ>ではなく、ムチのようなしなやかな<強さ>が必要だと思った。

 子どもの頃から優秀で、トントン拍子に偉くなる人はかえって弱い。大人になって、脆(もろ)い。失敗、挫折を体験した人間の方が強い。だったら、少なくとも、「受け身」くらいは教えたらいいだろう。極端なことを言ったら、学校ではそれを教えるだけでいい。知識や情報を教えるよりもずっと大事だと思う。

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すずき・くにお
1943年、福島県生まれ。67年、早稲田大学政治経済学部卒業。70~73年、産経新聞社に勤務。学生時代から右翼・民族派運動に飛び込み、72年に一水会を創設、「新右翼」の代表的存在となる。現在は同会顧問。『新右翼 民族派の歴史と現在』(彩流社)、『夕刻のコペルニクス』(扶桑社)など著書多数。近著は『愛国者は信用できるか』(講談社現代新書)
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オーマイニュース(日本版)より

※引用文中【画像省略】は筆者が附記


この記事についたコメントは8件。1件自己削除されましたのでシステム上は7件です。

7 飛☆浪漫 11/22 03:46
NHK教育の子供向け番組『からだであそぼ』のミニコーナー『今日のサムライ』では
刀で斬りつけられた時の体裁き『見切り』とか『半身よけ』とか教えてます。
『受身』ではダメージがあるので すんでに身をかわす方が良いと思いますが。
これを会得したなら物事の動き他人の動静に気を配って素早く対処できる人間ができると思います。

6 罵倒観音 11/21 21:28
>ご隠居様

 編集部に「コメント欄が怖くて記事が書けない」と泣きついたのは、案外斎藤貴男だったりして。

5 編集部・朴(てつ) 11/21 19:52
逃げ足か。すごく共感してしまった。

学生時代に3人に囲まれたことがあります。テコンドを習ってたので、ムキになって戦ったのですが、結局ボロボロになりましたね。傷だらけで家に帰ったら当時一緒に住んでたおじが「何だ、その顔は」と聞き、事情を説明したら、こういいました。

「お前は馬鹿だ。お前はテコンドも習っているけど、陸上もやってるじゃん。タイマンだったらわかるけど、その足がもったいない」と。

まるで、俺の昔話と一致しているようなコラムだったので、しばらく頭から離れないと思います。おもろい話、ありがとうです。

4 ワルキューレ 11/21 18:09
鈴木さんの文は「夕刻のコペルニクス」以来拝読しています。
思想的には、反対の人間ですが。
ただ、もうしわけないのですが、最近、もの分かりのよすぎる文が多いように思います。穏健すぎて。あの緊張感を、もう一回味あわせてください。
この文も、「そうだよね」と思っても、常識的な話で。
「狂」というのを右翼の方に求めたいのですが。
あと斉藤貴夫氏は、コメント欄を削除する態度には失望しましたね。
口舌の徒なんですよ。ジャーナリストと自称しても。もっと左系で「できる人」に欠かせればいいのに。
ただ、鈴木氏は著書に自宅の電話番号を書いていらっしゃる。私は意見は違っても、自分の行動と言説に責任を持つ人を、私は尊敬します。
ただ、もう少し、尖がってください。

3 行雲 11/21 16:29
>>1
確かに斎藤氏の今度のコラムは「ひと言」欄がカットされていますね。
こんなのもありなんかな。

2 全力失笑 11/21 14:58
日本の自殺率は10万人あたり24,1で世界10位だそうです。
日本より上位は旧ソ連あたりの国が入っています。
子供が親より先に死ぬ事が親不孝だということを教えるべきでしょう。

自分の通っていた学校は体育で柔道があったので
受身を習いましたが、男だけでした。

1 ストリーム 11/21 10:04
さすがに鈴木邦男コラム。コメント欄を閉じてしまうような斎藤貴男コラムとはひと味違う。
(24時間以上経過してるんだからまさかミスではあるまいと判断したんだけど・・・自信なし)


わたしも高校の授業で柔道を習っていました。受け身を日常で使う機会などほぼないのですが、雨の日に滑ってころんだ時にとっさに受け身が出た時にありがたみを感じました。腰を強く打ってしばらくor2になってましたが頭を打つよりはマシだったと思います。もっと真面目に習っておけば腰を強く打つこともなかったんだろうなと。デパートの前の大理石の床は濡れているとよく滑るのよね。

(削除)

(削除)。行き着く所まで行かないと気づかない人もいるようですが。