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お湯の出る井戸(1)

引用元URL:http://www.ohmynews.co.jp/News.aspx?news_id=000000000574

地震の兆候か? 井戸の水温が上昇 【地震・震災特集】
記者名 上久保 廣信

 マグロで有名な静岡県焼津市にお湯の出る井戸がある。

 いつも、お湯が出ていれば温泉だが、これはときどきお湯が出る不思議な井戸である。2005年の1月27日、午前7時20分、これまでセ氏15.4度で推移していた浅井戸の水温がみるみる上昇し、1日かけて水温を10度ほど上げたのだ。その後も30.4度まで温度を上げた後、1カ月ほどで通常の水温に戻った。

 この不思議な井戸が見つかったのは、次のようないきさつからである。

 東京大学地震研究所の佃為成助教授は、地下水温の変化が地殻変動と関連があるのではないかと、全国のいくつかの井戸で調査をしていた。その佃先生のもとにある方から、過去に焼津市にある4つの井戸で温水が観測されたことを報じる新聞記事のあることが伝えられた。

 私は佃先生からの依頼を受け、その記事を図書館職員を通して探すことにした。まもなく記事は見つかり、そこには現浜松市立舞阪小学校、焼津市立大富小学校、同港小学校、同南小学校の名前があった。それらの学校に井戸の様子について伺う手紙を出したが、井戸についてはその存在も含めてよく分からないという返事であった。そこで現地に行って調べてみることにした。大富小学校のグランドをていねいに調査してみると、当時の井戸がそのまま残っていた。私たちは2002年12月からこの井戸での水温観測を始めることになった。

【画像省略】
観測を行っている井戸は、イメージされる「井戸」とは違い、校庭の隅にあるマンホールの中にある。(2006年8月9日撮影)
撮影者:堀 信

 観測を始めて1カ月ほど経ったころ、時折0.5度ほど水温が上昇しているのを計測器が捉えた。その日は最低気温1度ほどの寒い日だ。この水温の変化を見つけたときには驚いた。計測器を入れて観測できたことは、意味のあることだった。

 この井戸は深さが4mほどの浅井戸で、付近の地下水が染み出すようにして水を蓄えている。通常の水温は、年間15度から25度の範囲で、季節によりゆっくりと推移することが観測によって分かっている。近くに水温を上昇させるような原因もみつからない。自然現象である可能性が高い。

 佃先生は、「水温急変の仕組みや地震との関連は解明されていないが、地下数キロから下の岩盤の割れ目にたまった熱水が、地殻変動で圧縮されて地表まで上昇してきているのではないか」という仮説を立て、この研究を推進している。ここは東海地震の震源域でもあることから、地震との関連も心配されるところである。

 新聞報道から17年後に同様の現象が再現されることになった。もしかしたら、他の井戸でも同じような現象が見られるのかもしれないと考えて計測箇所を増やして行ったところ、焼津市の他の井戸でも温度の上昇が見つかった。さて、この事実をどう受け止めたらいいのだろうか。これからの動きと合わせて考えていきたい。(「お湯の出る井戸2」に続く)

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2006-09-01 15:38

※引用文中【画像省略】は筆者が附記
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地震のあと温泉が吹き出したとのニュースはたまにあります。