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保育士資格に更新制を

引用元URL:http://www.ohmynews.co.jp/News.aspx?news_id=000000000368

専門職は時代遅れであってはならない
記者名 M本 J

 3歳の息子を通わせている保育園の同じクラスに、Aちゃんという女の子がいる。内気ではあるが笑顔の素敵な愛すべき子どもだ。たまに顔をあわせる私にも、はにかみながら挨拶をしてくれることもある。ごくあたりまえの3歳児である。
 Aちゃんの母親は、私の妻と、親同士ということで、よく世間話をする。昨日、彼女が妻に訴えたところによると、担任の保育士が、Aちゃんをクラスの面前で叱責したというのである。その理由が聞いて呆れる。Aちゃんが毛布を離さないからというのだ。
 幼児がいわゆる「安心毛布」を手離せないのは、なにも珍しいことではない。「毛布」はときにはタオルであったりぬいぐるみであったりおしゃぶりであったりする。私の身近にもそんな子どもはたくさんいて、たとえば甥は3歳頃までガーゼを手離せなかった。異常でも何でもない。もちろん、子どもの世話をする側にしてみれば、いつもいつもそれを手離さないというのはやっかいなことかもしれない。そういう便宜上のことはあるから、子どもに早く安心毛布を卒業させたいという気持ちは十分理解できる。「安心毛布」を手離すよう説得するのも、決して否定されるべきものではない。しかし、安心毛布が本人の成長を阻害するというようなことはまったくない。まして、親や保育士が心配するようなことではない。まして強制や叱責するようなことではない。それは逆の効果しか生み出さない。
 実際、Aちゃんのおかあさんも、心配になって保健センターや医療関係者に相談したそうである。答えは一律に、「心配することはない、時間がたてば自然に離れる、無理に引き離してストレスを与えない方がいい」というものであった。ほとんどの地方にある公的な「子育てテレホン相談サービス」でも、「タオルが離せない」という項目で、同じようなアドバイスをしている。現代ではもう、これは常識なのだろう。
 かつて、子どもの成長ではなく子どもの管理が保育のおもな目的であった時代には、そうではなかったのかもしれない。保育園内での「集団生活」や「規律」にそぐわないようなものは、一律に排除された。「安心毛布」の類もその対象で、「園にはもってこさせないでください」と拒絶された。「健全な成長を妨げる」というのがその建前であったが、実際には管理しにくいからというのが本当の理由であろう。しかし、そんな時代は遠い過去である。過去であるべきである。
 現実には、その過去をひきずった保育施設、保育士が少なくない。Aちゃんは安心毛布を手離せないという理由でことあるごとに子どもらの面前で批判されている。この事実は、私の息子にも確認したし、保育士本人が、Aちゃんの母親に向かって「何度も何度も注意しています」と、述べていることからも明らかだ。そればかりか、そんな保育士の行動に対してAちゃんの母親が抗議をすると、多数の子どもや親のいる前で、「精神科には行ったのですか」と反論したという。
 問題があれば専門家に相談するのは、合理的な判断だろう。しかし、「安心毛布」は、精神科の専門領域というよりは、むしろ保育の専門領域の問題である。本来であれば、親が「安心毛布」について相談すべき専門家は、保育士であるはずなのだ。それすら気づかないこの保育士には、専門職としての見識がまったく欠けているといわざるを得ないだろう。まして、「安心毛布」を「矯正すべき問題」ととらえるようは不見識は、完全に保育士としての資格に適合していないといわざるを得ない。
 保育士の資格は、児童福祉法第18条に規定されているが、いったん資格を取得したら基本的に資格を喪失することはない。たった一度の試験に合格しさえすればいいのである。
 しかし、現実には保育の現場は大きく変化を続けている。保育士のような専門職には、常に新しい知識をとり入れ、時代に適合した実践の基準を身につけておくよう努める職務上の義務があるだろう。そのような努力をしない保育士は、時代遅れとなりおよそ見当違いの保育で、子どもや親、保育施設に混乱を引き起こしていく。
 保育士のように不断の研鑚が必要とされる専門職には、それに見合った資格の更新制度が必要なのではないだろうか。自動車運転免許でさえ、更新時に法改正の要点など最新情報の講習がある。保育士に対しても、定期的にその専門知識のアップデートを行う場を設け、時代に適合した知識を備えた者に対してだけ、資格の更新を行うべきではないだろうか。大きな法改正を行わなくとも、現在の都道府県単位の登録制度を利用するだけで、それは実行可能ではないかと思う。

 それにしてもあの保育士、園の管理者に事情を話して、厳重に注意してもらわなくてはならない。
2006-08-30 10:56

この記事は2006年8月30日07:49以降、2006年8月31日07:15までの間にニュースのたねに掲載されました。タイムスタンプは2006/08/30 10:56:56。後に編集され、2006年9月9日13:26に正式採用・再掲載されました。

この記事にはコメントが4件つきました。うち1件は記者本人による返答コメントです。自戒もこめて以下に引用します。

4 jun この記事を書きましたM本です。 09/12 21:27

この記事を書きましたM本です。
コメントをいただきました御三方に、お礼を申し上げます。実際、頭に血がのぼって原稿など書くものではありませんね。

実のところ、この記事は、投稿してから10日ほど、「ニュースのたね」の方で店晒しになり、「ああ、やっぱり感情的な記事は採用されないということだなあ」と思っていました。それが、どういうわけか忘れたころに掲載になり、少々慌ててしまいました。

おそらく、結論(資格に更新制をという提言)は無意味ではないのでしょうけれど、やたらと攻撃的な文面は共感をよびませんね。記事の出発点に「怒り」があることは決して悪いことではないと思いますが、もうすこしそれを熟成させるべきだったかもしれません。

御意見、今後の参考にさせていただきたいと思います。