見出し画像

経済用語の新常識(13) ~山崎元コラム~

引用元URL:http://www.ohmynews.co.jp/OhmyColumn.aspx?news_id=000000003356

[アーニング・サプライズ]
山崎 元
2006-11-24 07:30

【アーニング・サプライズ】

 現在、3月決算の会社の9月中間期の決算発表がだいたい一巡しつつあるところだ。決算発表と株価の関係を考える上でのキーワードが「アーニング・サプライズ」(Earnings Surprise)である。アーニング・サプライズは、「発表された決算数値と予想されていた決算数値の差」として定義される。

 市場参加者の予想以上の好決算が発表されると株価は上がることが多いし、それそのものは好決算であっても、株式市場の参加者があらかじめ予想していたくらいの数字なら、株価は特に反応しないこともあるし、ときにはプラスのアーニング・サプライズがない、という失望から値下がりすることもある。

 いずれにしても、「新しい情報」の意味は「これまでの予想」との「差」によって決まる、ということが株式投資に限らず、マーケットの基本だ。

 ところで、株価というものは基本的に将来の予想を現在の価値として評価するものだ。従って、すでに終わった過去の決算数値よりも、将来の業績の予想の方により強く反応する。3月期決算の会社でいうと、目下発表されている2006年9月中間期の実績の数字よりも、これと同時に各社から発表される2007年3月期末時点での業績予想の数字の方が重要だ。

 情報の読み方としては、たとえば『会社四季報』のような市場参加者がよく見ている情報源に載っている2007年3月期の予想利益の数字と、中間決算と共に会社から発表された業績予想の数値をくらべて、両者の「差」を見ることが基本だ。過去の最新予想と新たに発表された予想の差が、実質的な情報であり、株価に対するインパクトが大きな情報なのだ。

 日本では証券会社など、いくつかの業態と会社を除くと、証券取引所の要請で、大半の上場企業が、自分自身で業績予想を発表する。この情報は、おおむね証券アナリストによる予想よりも良質であり、情報効果が大きい。

【画像省略】
(写真はイメージ、ロイター)

 株価は、情報に素早く反応するとはいっても、収益予想の上方修正に対する反応が遅れる(つまり、予想が発表されてしばらくしてから株価が上がる)ことが、しばしばあり、決算発表を丁寧にチェックしていると、こうしたチャンスを見つけることがある。

 今年の9月期の中間決算発表は、結果としては、おおむね好業績なのだが、来年3月の決算数字の予想が期待されたほどは大きく上方修正されていない。景気にかんする弱めの数字(機械受注の減少や、都銀の貸出残高の対前年比減少など)がちらほら出ていることもあって、投資家の姿勢はおしなべて慎重で、これが株価にも表れている。

 ただ、会社によっては、なかなか魅力的と思える決算(予想)を出しているところがいくつもあるので、株式投資をされる方は、丁寧にチェックする価値があると思う。

--------------------------------------------
山崎 元(やまざき・はじめ)
1958年生まれ。経済評論家。楽天証券経済研究所客員研究員。株式会社マイベンチマーク代表(投資と投資教育のコンサルティング会社)。著書に『「投資バカ」につける薬』(講談社)、『お金をふやす本当の常識』(日本経済新聞社)など多数。著者ブログ「評論家・山崎元の王様の耳はロバの耳!
--------------------------------------------

・第12回[ファンド・オブ・ファンズ]
・第11回[村上ファンド]
・第10回[エージェンシーコスト]
・第9回[ロングショート運用]
・第8回[地政学的リスク]
・第7回[年金一元化]
・第6回[インフレ・ターゲット]
・第5回[イノベーション]
・第4回「IPO」
・第3回[ストラテジスト]
・第2回[ラップ口座]
・第1回[TOB]

オーマイニュース(日本版)より

※引用文中【画像省略】は筆者が附記


この記事についたコメントはありませんでした。


株式投資して儲けるには、株価が上がる前に買って株価が下がる前に売れという基本を守りましょうという記事。そのためには各社の出す業績予想などの情報をよく読み取りなさい、ということかなと理解しました。

情報商材として売るにはこういう「差分」を秒とか分で見分けて提供できる能力が必要なんでしょうね。ある程度は機械化できそうだけど多分に経験とか勘とかの要素を含んでいそう。経済学の何とか理論がその範囲をカバーするのかのぉ。