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“改悪”な教育基本法“改正”法案 ~斎藤貴男コラム~

引用元URL:http://www.ohmynews.co.jp/OhmyColumn.aspx?news_id=000000003241

斎藤貴男
2006-11-20 07:44

 自民・公明の与党は先週17日、衆院本会議で教育基本法“改正”法案を強行採決で可決し、参院本会議でも単独審議入りさせた。“改正”法案が本当に成立してしまったら、悲惨すぎる事態が訪れる。だから幾度でも繰り返させていただこう。

 かの「我が国を愛する態度」をはじめ、ざっと20項目にも及ぶ官製の価値観、徳目が、いずれ確実に子どもたちの通知表に書き込まれよう。それらは評価の対象にされていく。「国を愛する態度」に欠けると見なされれば内申書に響くから、彼らはいつの間にか、これまで以上に、お上の望みどおりに振る舞う生き方を積極的に身に着けていくはずだ。

【画像省略】
この“改正”により日本の教育はどうなるのか?(写真はイメージ、ロイター)

 深刻化の一途をたどる格差社会が、教育によっても拡大・定着されてもいくだろう。すでに先行している教育改革を貫く「教育機会の均等など取るに足らない」「限られた予算や人手を将来のリーダー候補に集中すべし」などとする選民思想を、“改正”教育基本法は確実に加速させる。なにしろ現行法では1カ所しかない「能力」という用語が、改正法案では5カ所も登場する。能力がないと判定された子どもには教育を受ける資格がないとでも言いたげに。

 来年4月に実施される予定の全国統一学力テストは、十中八九、お手本とされている英国と同じ結果をもたらすに違いない。学校評価制度や教員免許の更新制の導入、学校単位の成績の公表等が絡み合って、かの国では退学が激増した。勉強の得意でない子どもが小中学校から排除されていったのだ。クラスの平均点を上げて人事考課のポイントを稼ぎたい教師たちの小賢しさが、彼らの教育を受ける権利を奪ったことになる。“Naming, Shaming, Blaming”と呼ばれた政策の産物だという(藤田英典『教育改革のゆくえ』岩波ブックレットなど)。問題校を名指しし、そこの生徒や教職員や地域社会を辱めて、社会的な背景を斟酌することもなく、すべての責任を当事者に背負わせる――。


 教育改革や教育基本法“改正”のねらいがミエミエだから、私は「教育改革タウンミーティング」でのヤラセが絶対に許せない。たとえば青森県教育委員会は、内閣府の役人に命じられて地元中学校のPTA会長を発言者に仕立て上げ、こんな文書を送りつけていた。

〈◯依頼発言についての注意事項について
 できるだけ趣旨を踏まえて、自分の言葉で。(セリフの棒読みは避けてください)
 「お願いされて」とか「依頼されて」というのは言わないでください。(あくまで自分の意見を言っているという感じで)〉

 言わせる方も言わされる方も恥を知るといい。権力に都合のよい法体系を演出するためなら世論の捏造(ねつぞう)さえ厭(いと)わない人々が、あろうことか他人様(ひとさま)の子どもを支配せんと企て、実際、そのための教育“改革”が果たされてしまいつつある狂気。

 満州事変のきっかけとなった柳条湖事件(1931年)も、ベトナム戦争を泥沼化させたトンキン湾事件(1964年)も、それぞれ旧日本軍と米軍によるヤラセだった。大きく言えば謀略で、もしかしたら9・11事件だって、と最近の研究は進んできている。強大な力を有する国家、政府がヤラセの類(たぐい)を始めれば、ロクな結末が招かれないのは歴史が証明してきたとおりだ。スケールの大小は、この際あまり問われるべきではない。

 タウンミーティングのヤラセ事件が露(あら)わになって、安倍首相やその周辺はそれでも、「教育基本法改正とは無関係」だと言い張り続けている。これほどの居直り、デタラメが、にもかかわらず彼らの政治生命に響きもしないとは。この国にはもはや正気の人間が消え失せてしまったのだろうか。

 今さらながら思った。小泉純一郎、安倍晋三と2代も続いた世襲権力者の系譜は、それだけで強烈なメッセージを国民に投げつけているのだな、と。

 「諸君! この世の中は家柄がすべてだよ」と。

 何が再チャレンジなんだか。こんなもんに騙(だま)され続けている方もよっぽどどうかしているけども。

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さいとう・たかお 1958年東京都生まれ。早稲田大学商学部卒業。イギリス・バーミンガム大学修士(国際学MA)。日本工業新聞記者、『プレジデント』編集部、『週刊文春』記者などを経てフリーに。『カルト資本主義』(文春文庫)『バブルの復讐』(講談社文庫)『小泉改革と監視社会』(岩波書店)など著書多数。最新作に『ルポ 改憲潮流』(岩波新書)
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オーマイニュース(日本版)より

※引用文中【画像省略】は筆者が附記


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この記事の魚拓は残っていませんでしたが、翌週に掲載された斎藤貴男氏のコラムの魚拓は残っていましたので現物でご確認ください

あまりに醜悪な日本社会 ~斎藤貴男コラム~
(斎藤貴男 2006-11-27 09:03)

あまりに醜悪な日本社会 ~斎藤貴男コラム~』より引用

比較として同時期に日本版オーマイニュースでコラムを執筆されていた山崎元氏のコラムの現物をおいておきます。

経済用語の新常識(13) ~山崎元コラム~
[アーニング・サプライズ]

(山崎元 2006-11-24 07:30)

経済用語の新常識(13) ~山崎元コラム~[アーニング・サプライズ]』より引用

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