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木村太郎代議士に聞く、平和国家・日本が考えるべき安全保障

引用元URL:http://www.ohmynews.co.jp/HotIssue.aspx?news_id=000000002922

安倍政権の行方を探る~若手国会議員リレーインタビュー 【第6回】
河野浩一
2006-11-07 06:31

 「安倍政権の行方を探る~若手国会議員リレーインタビュー」の6回目は、青森県第4区選出の衆議院議員、木村太郎氏です。

【第5回】鴨下一郎氏「財政再建のきっかけ、3度目のチャンスでつかんだところ」
【第4回】宮沢洋一氏「憲法改正と公務員改革へ、対話の新政権」
【第3回】上川陽子氏「大転換期の中にいる日本」
【第2回】近藤基彦氏「新政権に課された国家の基礎図面づくり」
【第1回】小野晋也氏「恐竜も、時代とともに消えていく」


木村太郎(きむら たろう)氏
[プロフィール]
1965年7月20日、青森県南津軽郡藤崎町生まれ。衆議院議員。東洋大学法学部法律学科卒業後、米テネシー州立大学マーチン校語学課程修了。帰国後、三塚博(元外務大臣)の秘書となり、91年青森県議会議員初当選、続く95年2期目当選。96年衆議院議員初当選、現在4期目。防衛庁長官政務官、農林水産大臣政務官、自由民主党内閣部会専任部会長(防災・警察)、防衛副長官等を歴任。現在、衆議院安全保障常任委員長として活躍している。
オフィシャルホームページ:http://www1.biz.biglobe.ne.jp/~k-taro/


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撮影者:河野浩一

■周辺諸国の状況が変われば、日本の安全保障の姿も変わる

――小泉政権で防衛副長官をつとめるなど、安全保障問題に力を入れて取り組んでいらっしゃいますが、今回のように北朝鮮が地下核実験をするという事態は想定していたんでしょうか?

 小泉政権で防衛庁の副長官をしていましたが、そのとき目にしたもの、耳にしたものは国家機密ですからお話しすることはできません。ただ、だいぶ前から北朝鮮自らが核に関することをいろいろと発言していましたし、だからこそ6カ国協議を通じて交渉してきたわけですが、その一連の流れの中で、北朝鮮が核実験を行う可能性があり、その動きがあることは十二分に想定していました。

――それにしても、日本は国家の安全保障問題に関して決して積極的に取り組んできたとはいえないし、国民の意識も低かった。ここ最近、かなり空気が変わってきましたが、防衛庁の前副長官として日本の安全保障をどう考えていらっしゃったのかぜひお伺いしたい。

 戦後60年の間には、世界の各地で紛争が起きています。アジアに限っても、中国がいろいろな面で強気な発言をしてきましたし、実際、中国とベトナムの国境近くで戦争に近い武力衝突が起きたこともありました。

 それに対し、日本は間違いなく平和国家として歩んできました。もちろんそれは過去の歴史の過ちを踏まえてのことですが、この平和国家としての歩みは日本国民として誇るべきことです。国際社会からも「日本は平和国家として歩んでいる」と、きちんと評価されていると思います。

 日本の安全保障の考え方の基本は、自衛隊はあくまでも防衛のための組織であり、軍隊ではないということです。「攻められたら守る」という考え方であり、ケンカでいえば、自分から手を出すことはできない。手を出されたら、あるいは出されそうになったときに、初めて行動することができる。この原則は、これからも変わることはないと思います。

 ただ、20年前、30年前と比較して、周辺諸国の軍事的な情勢は大きく変わってきました。その変化には対応していかなければなりません。

 例えば、北朝鮮は20年前はミサイルを持っていませんでした。その北朝鮮が、ミサイル発射や核実験を行いました。20年、30年前までは、旧ソ連のお下がりの装備品を使っていた中国にしても、軍事費が極端に伸び、装備面で近代化を進めています。国際社会は、中国の軍事費は中国政府が自ら発表している軍事費の2倍から3倍あると見ています。このままのペースだと、アメリカについで世界第2位の軍事大国となるのも時間の問題かもしれません。

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北朝鮮が保有するミサイルの射程

 このような日本周辺諸国の環境の変化、あるいは世界情勢の変化を考えると、日本の安全保障の姿が20年前と同じでいいわけがないのは当然です。日米同盟の安保条約を基本としながら、それに対応していくのは独立国家として当然であり、そのためには在日米軍再編も含め、日本の陸海空のトランスフォーメーションの再編をしていくことが必要だと考えています。

――しかし、 例えば、弾道ミサイル防衛システムの導入についても、まだまだ反対論が多い。安全保障問題については、国民の間ではどちらかと慎重論が強いのでは?

 私は、そうではなくなってきていると思います。国民のみなさんの中にも現実的な危機感が出てきていると思います。例えば、 在日米軍再編のからみで言えば、私の地元つがる市にある航空自衛隊の車力基地に最新鋭の「Xバンドレーダー」(弾道ミサイル探知用レーダー)を導入しました。現在はまだ暫定的導入ですが、来年には恒久運用となります。

 最初、みなさん不安に思ったでしょう。反対の動きもたくさんありました。「なぜうちの地域なのか」という思いもあったでしょう。しかし、どなたも国民のひとりとして日本列島のどこかに、Xバンドレーダーが必要であることは理解していた。だからこそ、誠心誠意説明させていただきましたし、結果的に暫定運用を始められたのです。その直後に北朝鮮のミサイル発射があったわけですが、住民の方々の理解は得られたものと考えています。

 いずれにせよ、日本は平和であり、これからも平和でなくてはならなりませんが、国際情勢や周辺情勢を考えると不安定要素があることに疑う余地はありません。いまやニュース番組で安全保障的なニュースがない日はないほどです。私たちは、率直に、この問題について日々注視し、議論し、対応していくことが求められているのです。

――そうした論議の中で、日本も核を持つべきとの論がにわかに出てきています。

 個人的には非核三原則を守るべきだと思います。日本は、有事にはアメリカが日本を守ってくれるという日米安保を前提に、この非核三原則を大事に守ってきたわけですが、仮に日本が核を保有したとすると、周辺諸国の反発もさることながら、北朝鮮のいつもの勝手な解釈で、北朝鮮に核を保有する理由を結果的に与えてしまうことにもなりかねません。あくまでも、わが国が擁しているものは自衛のための防衛力である――この姿を大事にするべきです。

――在日米軍の話ですが、とくに沖縄が払わされている犠牲は非常に大きい。しかし、肩代わりしてくれるところがあるかというと、なかなか話が進まない。そんな中で(木村)代議士の地元ではXバンドレーダーを受け入れる方向に動きました。こうした動きは全国的に広がりを見せるのでしょうか?

 そうなると思いますよ。米軍再編でいえば、全部で55の市町村県が関わっています。そこへ額賀福志郎・前長官はじめ、我々が行って地元の人々に説明をして回りました。最初は否定的な意見が多かったのですが、説明していく中で徐々にご理解をいただいてまいりました。

 空の訓練でも、沖縄でやっていたものをいくつか、私の地元の三沢も含めて本土で受け入れる取り組みもしています。沖縄県民のみなさんにだけ負担をかけるのはよくない、とみなさんにもご理解いただけるのではないでしょうか。

■改憲と安全保障は、整理して議論すべき

――安全保障を論じるとき、必ずといっていいほど憲法9条改正の問題が出てきます。軍隊と自衛隊は違う、というご意見は非常によくわかるのですが、軍は軍として認めよう、そのためには憲法9条を改正しようという論議も盛んにされています。

 それについては少し整理する必要があると思います。憲法改正の話になると、いつも9条の問題が出てきますが、憲法改正イコール9条改正と短絡的に考えず、2つの議論を整理すべきです。ひとつは「安全保障の面から見た憲法9条の解釈に限界がきているのではないか」という議論、もうひとつは「戦後、GHQを中心につくられた憲法を日本の国民の手でつくり直そう」という議論の2つです。しかし、この2つの議論がごっちゃになってはいけないと思います。あくまでも分けて考えるべきでしょう。

――ご自身はどのようにお考えですか。

 改憲は必要だと思います。日本の憲法なんだから、我々が自らの責任で国民の同意を得て、きちんと全体を見直すことが必要だと思います。そのことを前提にすべきです。

――では、安全保障の面ではどうでしょうか。例えばいくら自衛のための自衛隊だといっても、日本以外の国から見れば軍隊以外のなにものでもない。いまの憲法9条の理屈は国際社会から見て通用しにくいと思うのですが。

 国際社会から見れば「軍隊ではないか」と思われがちかもしれません。けれども、たとえば今、国会で防衛庁を省にするための法案を議論しているのですが、名前ひとつをとっても防衛庁を防衛省にするという考え方で、あくまでも“防衛”なのであり、その理念をなんら変えることなく取り組もうとしています。

 とはいえ、確かに憲法9条の解釈には限界が見えてきていると思います。

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木村氏は「地域の安全保障機構を構築するのが世界の流れ」という
撮影者:河野浩一

 よく話題になるのが集団的自衛権ですが、国際情勢の変化や、先ほど述べたように、各国が保有する装備、武器の進歩・進化の現在の姿を見極めながら、どこまでが集団的自衛権なのか、その解釈が難しくなってきています。しかし、私たちは、あくまで“防衛”のための組織であることを前提にきちんと論議すべきことでしょうね。

 ただ過去の歴史に学ぶならば、これから国対国の全面戦争というのはなかなか起こりにくいと考えています。これからは国連を通じた活動が大切になっていくだろうし、NATOをはじめとしたそれぞれの地域の安全保障機構がある。アジア版NATOのようなものも考えられるでしょう。世界の流れはそちらの方向にあると思います。

■安全保障、食料、教育の3つは国が責任を持つべき

――安全保障問題に関してはいろいろお伺いしましたが、安倍政権はどういう方向に進んでいくべきなのかお聞かせください。

 難しい話ですね(笑)。最近よく言われる言葉に「格差社会」がありますが、私の地元は青森県です。いろんなデータを見れば、大変厳しい地域のひとつだと思います。

 例えば県民の平均所得は下から2番目、有効求人倍率も全国最下位と大変に厳しい。首都圏、名古屋圏と景気がよくなってきていると言いますが、うちの地元を含め、なかなか地方には届かない。

 一方で人手が足りない地域もあってアルバイトの募集に人が集まらない、あるいはフィリピンから看護師などの受け入れが求められている。しかし、一方では職がなくて困っている人が多い地方もある。もう少し国の中で調整する必要があるのではないでしょうか。

 私が子どものころには出稼ぎがありましたが、いまやIT社会で情報・通信手段や交通手段も発達して、人材派遣的な企業も増えてきました。昔の出稼ぎのイメージとは違った形で、この国全体の活力を分散する、場合によっては相反しますが、上手く集約するような仕組みをつくれないだろうかと最近よく思うんです。これをうまく整理していくことが格差社会の是正につながると思っています。

 また農林水産業、すなわち1次産業は国家の根幹として大事にしていく必要があると思います。日本の食料自給率が40%になって、外国のものがどんどん入ってきているという印象を、国民のみなさんもお持ちでしょう。単に農家のための農業ではなく、いかに田畑がその地域に貢献しているかをもう一度、広く国民全体に理解していただく必要があるでしょう。

 新しい動きも出てきています。“攻めの農業”と言いまして、たとえば私の地元のリンゴでいうと、これは世界一おいしくて品質がいいと自負していますが、1個2000円の高級リンゴとして出荷して、なんと上海、北京の高級スーパーで売り切れになったんです。知恵と工夫でJapanブランドとして差別化を図ることで、農業の再生は、まだまだやれると思います。私の実家も農家なので、農林水産業を大事にしなければいけないと思います。これを大事にしなければ、歴史を見ても国家の衰退にもつながっていくと思うんです。

 地方分権、市町村合併が進み、あるいは道州制の議論がなされている中であっても、安全保障、食料自給のための農林水産業、それに教育の3つは、特に国が永久的に責任を果たしていくテーマだと思います。


 【編集部注】プロフィール生年月日の記載に誤りがあり、正しく訂正いたしました。木村代議士ならびに読者のみなさまにご迷惑をおかけいたしました。(2006/11/11 1:50)

オーマイニュース(日本版)より

※引用文中【画像省略】は筆者が附記
この記事は【特集】安倍政権点検に掲載されました。


この記事についたコメントは10件。

10 まぐ 11/12 09:18
憲法前文は「それなりに、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼してわれわれは安全と生存を保持しようと決意した」に変えるべき。平和は両者間に成立する以上、日本の姿勢は相手の姿勢により、当然変化する。核恫喝に対抗し、日本が敵基地先制攻撃能力を身につけるのは、正当防衛行為である。今、早急に必要なのは、空対地ミサイル、バンカーバスター、空中給油機であり、日韓合同演習(敵基地先制攻撃)の次期韓国政権への呼びかけである。

9 まさしくんはい! 11/11 09:37
編集部 平野様

ご対応有難うございます。折角ですのでこの記事企画の感想でも。

正直1回目・2回目あたりのインタビューはおいおい何について聞きたいんだよもっと相手議員の得意分野やテーマを絞って聞けよ・内容が散漫になってるぞという印象が強かったですが、5回目や今回は非常にターゲットが絞れた中身のある内容になったかと思います。

河野さんって市民記者でなく編集部員だと思われますが(笑)、場数を踏んでるうちに進歩してきているという印象を持ちましたよ。

8 編集部(平野) 11/11 01:56
>まさしくんはい!さま
ご指摘ありがとうございました。誤記、お恥ずかしい限りでございます。訂正いたしました。

7 まさしくんはい! 11/10 18:48
編集部様へ
木村議員のプロフィールが
1985年7月20日、青森県南津軽郡藤崎町生まれ。
となっておりますが、現在21歳の衆議院議員であられるのでしょうか(笑)
衆議院議員の被選挙権って何歳でしたっけ(笑)
しかも6歳で県議に当選とは杉村タイゾー君もビックリのキャリアですね?(笑)

後、コメント欄が実に香ばしい事になってますな。
お~い山田君、6番さんはいいセンスしてるので座布団1枚! そしてセンスの無い3・4・5番の座布団は全部没収しなさ~い(笑)

6 monkey 11/10 14:26
平和国家と言うならば、武器は全て捨てるべきだ。
自衛隊は立派な軍隊であり、その存在は立派な憲法違反。
自衛隊の存在や軍事同盟を明確にできるよう、憲法9条を改正すべきである。

5 普通の日本人 11/10 12:19
平和国家と言うならば、武器は全て捨てるべきだ。
自衛隊は立派な軍隊であり、その存在は立派な憲法違反。
自衛隊の存在や軍事同盟を明確に禁ずるよう、憲法9条を改正すべきである。

4 普通の日本人 11/10 12:13
平和国家と言うならば、武器は全て捨てるべきだ。
自衛隊は立派な軍隊であり、その存在は立派な憲法違反。
自衛隊の存在や軍事同盟を明確に禁ずるよう、憲法9条を改正すべきである。

3 新党を欲する人~立憲平和党党首 11/08 20:32
自民党の本性が これほどまでに明らかになっているのに 
このままでは 日本の民主主義は 立ち行かない

自民党は 本当に危ない いけない党だ
独裁によって 民主主義をぶっ壊そうとしている

2 閃光 11/08 01:54
「平和国家」の定義って、何でしょうね?
「平和国家」以外の国は戦争国家? 平和じゃない国家?
日本は立憲君主・議会制民主主義の独立国であって「平和国家」なんて、意味不明の国ではないです。


東京で開催される大きなイベントだとこれくらいしかないかな。

守ろう平和といのちとくらし 2023憲法大集会
日本共産党(東京臨海広域防災公園(有明防災公園))東京都江東区

午後1時に開会し、室蘭工業大学教授の清末愛砂さん、沖縄大学地域研究所特別研究員の泉川友樹さん、漫画家の東村アキコさんがスピーチします。各党とともに、日本共産党の志位和夫委員長があいさつします。「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」から、市民連合@新潟共同代表の佐々木寛さんが連帯あいさつ。入管法問題や鹿児島・馬毛島の軍事基地問題、性差別問題について、各分野の代表がリレートークします。

守ろういのち・くらし 5.3憲法大集会(日本共産党東京都委員会)より

福岡のような地方都市でイベント出演したり、都内でも小さなホールでゲスト講演したりじゃ目立たないですし、取材にも来ないでしょ。

わたしはこれに100ガバスベットします。