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ニカラグアで「親米候補」が敗北 ~桜井春彦コラム~

引用元URL:http://www.ohmynews.co.jp/OhmyColumn.aspx?news_id=000000003045

桜井春彦
2006-11-16 07:36

【画像省略】
ニカラグアの選挙で勝利したサンディニスタのダニエル・オルテガ氏(2006年11月9日撮影、ロイター)

 アメリカの中間選挙で共和党が惨敗したが、その直前にもジョージ・W・ブッシュ政権にとって頭の痛い出来事が中米ニカラグアで起こっている。11月5日に行われた投票の結果、アメリカ政府が敵視しているサンディニスタのダニエル・オルテガが勝利したのだ。

 サンディニスタには革命で実権を握った過去がある。1979年7月のことだ。この出来事を受け、アメリカでは軍需産業のロビー団体、ASC(アメリカ安全保障協議会)が中心になって「中央アメリカ特別対策本部」を編成、CIAによる反サンディニスタ秘密工作に発展した。


 ASCが編成したグループには、秘密工作の大物ジョン・K・シングローブ退役少将、DIA(国防情報局)のダニエル・O・グラハム元局長、破壊工作部隊OPC(政策調整局)で極東部長だったリチャード・スティルウェル、そしてロナルド・レーガン政権で国務長官に就任するアレキサンダー・ヘイグも含まれていた。

 政権がスタートした直後の1981年3月にレーガン大統領はニカラグアの革命政権に対するCIAの秘密工作を承認、ジェシー・ヘルムズ上院議員の側近を介してアルゼンチンに接触している。ソモサ(・デバイレ大統領)時代の国家警備隊メンバー約50名の訓練が目的だった。このグループはADREN(ニカラグア革命的民主同盟)の軍事部門で、「9月15日軍」とも呼ばれている。レーガン大統領の秘密工作承認から5カ月後にホンジュラスでADRENを中心とするFDN(ニカラグア民主戦線)が創設された。1982年9月には、コスタリカを拠点とする別の反サンディニスタ・ゲリラが創設された。エデン・パストーラが率いるARDE(民主的革命同盟)である。

 FDNとARDEを「コントラ」と呼ぶが、いずれも工作資金を捻出(ねんしゅつ)するため、麻薬の密輸も利用していた。この事実を初めて記事にしたのがAPの記者だったロバート・パリーとブライアン・バーガー。1985年のことだ。その後、1996年に同じ問題を「消費地」としてのロサンゼルスからメスを入れたのが、『サンノゼ・マーキュリー』の記者だったゲーリー・ウェッブである。

 パリーらの記事を有力メディアは無視したが、1986年10月にニカラグア上空でC123輸送機が撃墜されると事態は一気に緊迫化する。その輸送機のパイロット、ユージン・ハッセンフスとウィリアム・クーパーはベトナム戦争でCIAの秘密工作に参加した経験があった。

 コントラ向けのAK47自動小銃の入った箱を下に落とそうとしているとき、この輸送機は地対空ミサイルで撃ち落とされてしまったのだが、帰りには麻薬を積む予定だった可能性が高い。ところが撃墜事件の約1カ月後、レバノンの「アル・シラー」がオリバー・ノース中佐たちによるイランへの武器密輸を暴露、メディアは麻薬の話を忘れた。

 さて、1930年代前半からサンディニスタに倒されるまで、ニカラグアを支配していたのは、アメリカを後ろ盾とするソモサ一族である。

 1927年7月にニカラグアのアウグスト・セサル・サンディーノ将軍がアメリカ海兵隊に対してゲリラ戦を開始、1933年1月には海兵隊を追い出すことに成功したのだが、このサンディーノを1934年2月に暗殺したのがアメリカから国家警備軍の指揮を任されていたアナスタシオ・ソモサ・ガルシアだ。この人物はシオニストの武装組織「ハガナ」とも深いつながりがある。

 1948年4月4日にハガナは「ダーレット作戦」を発動、第1次パレスチナ戦争を引き起こした。デイル・ヤシーン村でアラブ系住民254名がシオニストに虐殺されたのは、その4日後である。

 その翌月、5月14日に「イスラエル」の建国が宣言されるが、それ以前にハガナが武器を調達することは困難だった。そうしたときに手を差し伸べていたのがソモサ・ガルシア。ハガナのメンバーをヨーロッパ駐在のニカラグア大使に任命し、ニカラグア名義でハガナは武器を購入していたのだ。

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桜井春彦(さくらい・はるひこ) 調査ジャーナリスト。早稲田大学理工学部卒。ロッキード事件の発覚を機に権力犯罪を調べ始める。1980年代半ばには大韓航空007便事件や大証券の不正をリサーチ。『軍事研究』誌で米情報機関のレポートを執筆。『世界』誌ではブッシュ政権の実態を発表。著書に『テロ帝国アメリカは21世紀に耐えられない』(三一書房)がある。桜井ジャーナルでも「非公式情報」を発信中。
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オーマイニュース(日本版)より

※引用文中【画像省略】は筆者が附記


この記事についたコメントは4件。

4 yonemura 11/17 11:35
>記事の中に「反米」などという言葉はどこにも使われていません。
>ニカラグアで「親米候補」が敗北
十分でしょうw

3 H坂F 11/17 11:21
それぞれの国にそれぞれの事情がある。
反米だの云々はそういった事実を(情報の発信者が)都合よく扱いやすくするための記号でしかないでしょう。

2 ラス・アメリカス 11/16 20:47
yonemuraさんへ:

 記事の中に「反米」などという言葉はどこにも使われていません。「反米」という言葉は、西側報道が勝手に使っていることで、ニカラグアをはじめラテンアメリカの人々は、キューバも含め米国との友好的な関係を望んでいます。
 ただ、その条件が米国の多国籍企業の横暴を認めることであれば、話は別でしょう。ニカラグアのFSLNは、79年の革命後、農地の公平は配分、教育や医療を受ける権利の確立、16歳以上の参政権の確立、死刑の廃止などめざしい成果をあげました。それを「反米」という慣用句で攻撃するのは間違っています。攻撃するのなら、具体的な事実を上げて、批評してください。

1 yonemura 11/16 10:40
人治主義の小国の方針なんぞ簡単に変わりますが。
反米反米とわめいてさえいれば金がもらえるライターって日本に何人必要なんでしょうか。


えぇ~そうだったんだ(棒)。

本家・韓国オーマイニュースの創業者、呉連鎬(オヨンホ)氏が北朝鮮と相当に親しい関係にあると知っている日本人はほとんどいないんじゃないかと思います。そもそも韓国の新聞に興味がない人が大半でしょうし。

オーマイニュースの知名度アップに貢献しますw