ある元・新聞奨学生の物語(後編) 1 ねなしぐさ はじめ 2022年8月25日 07:29 引用元URL:http://www.ohmynews.co.jp/News.aspx?news_id=000000002634店長が変わって、一変……中台 達也2006-10-27 16:50【画像省略】三木康文さん(仮名、中央)撮影者:OhmyNews 【関連記事】ある元・新聞奨学生の物語(前編) 1999年春、山口県内の実家で1年間、家業の手伝いをしていた三木さんは放送作家を目指して再び上京した。国分寺のアパートに住み、ゲームセンターで週5回のアルバイト。週1回、放送作家関係の講座を受講しに行く毎日だった。そんな生活が約1年。 翌年春、三木さんは再び新聞奨学生に応募した。「前に嫌な思いをしているのに、なぜまた奨学生に?」と記者が問うと、三木さんはこう答えた。 「慣れた仕事がいいなという気持ちがありました。また、奨学生はある程度稼げますし、きちんとした販売店でなら勉強の時間も確保できますから」 奨学会から大田区内の勤務先を提示された三木さんは、奨学会を通じて、店長と事前に面会をした。「新聞販売店は、店長次第でガラッと変わる。店長さんがどんな人か確認したかったんです」。納得して入店し、それから半年ほどはいい奨学生生活だったという。 「その店長さんは40代くらいの方だったのですが、ものすごくよく面倒を見てくれました。食事も普通でしたし、勉強もはかどりました」 00年秋、店長の交代があった。店員もガラッと変わった。すると、それまで店専従従業員の仕事だった古紙袋配布が奨学生の仕事になった。なぜか、インターネットプロバイダのCDの配布をやらされもした。奨学生の業務には、新聞配布のほかに“付随業務”があり、どこまでを付随業務とするかは店長のサジ加減ひとつだった。 いじめも始まった。広告の折込作業の最中に、三木さんの横に従業員がぴったりと付いて、仕事ぶりに文句を言うようになった。「お前、放送作家の才能ねえよ」と毒づく者もいた。店舗内では、食事をとることもままならなくなった。 極めつけは、有給休暇の扱いの変更だった。新聞社には年10回、休刊日があり、月曜日の朝刊が休みになる。日曜日には夕刊がないため、新しい店長は「休刊日のとき、日曜の午後から月曜の午前中まで休めるな。これをもって有給休暇を消化したとみなす。奨学会から認められているやり方だ」と言い出した。それまで奨学生たちは、有給休暇を使って夏や冬に帰省していたが、それも不可能になった。 「開いた口が塞がりませんでした」。三木さんが労働基準監督署に訴えると、担当官は「そんな消化の仕方は認められない。それはありえないよ」と断言したが、それ以上のことはしてくれなかった。 直接、反抗したら、報復されるに違いない……。約半年間我慢して1年契約を終えた後、三木さんは奨学会事務局に訴えた。しかし「確かに認めている」と取り合わない。新聞社の販売局に訴えたが「確かに承りました。でも、奨学会と販売店は別物だからね……」という以上の返事は得られなかった。 販売局はさらに、自分の訴えが店に残っている人に不利益とならないように配慮してくれと訴える三木さんに「守れるかわからない」と返答した。その直後、三木さんの懸念が当たった。 販売局に苦情を申し立てた直後のある日。午後10時過ぎ、三木さんの電話が鳴った。朝刊配達に備え、奨学生はみんな熟睡している時間。電話の主は、東京都内の専門学校に通う、販売店の後輩だった。 彼は開口一番、疲れた声でこう言った。「もうやめて下さい」。「誰だ三木とつながっているのは」と数時間に渡り、店長から詰問されたという。 「ものすごくいい販売店の店長さんもいる。一方で、ダメな店長さんもいる。その差を新聞社に申し立てても焼け石に水」。三木さんが今、新聞奨学生の相談を受け付けるNPOの創設にかかわっているのは、自分のように苦しい思いを後輩にさせたくはないからだ。オーマイニュース(日本版)より※引用文中【画像省略】は筆者が附記前編は以下。 この記事についたコメントは8件。8 kz 10/30 15:05知らなかった現実を知りました。とても良い記事だと思います。7 Mint 10/28 17:15このシリーズは面白く読んでいます。知らなかった実態が解る楽しさの「面白く」です。先に書かれてますが、新規購読勧誘も問題ありますよね。新聞記事にはなりませんが、山ほど三文判を集めて架空契約を作り上げて手数料を貰い、朝からパチンコ店の開店前の行列に居る奴に学生時代(30年程前)話を聞きました。折込チラシも折込料取っているのに実際には織り込まれず販売店から古紙回収業者へ流れるし。次回作も楽しみにしています。#実は予備校時代、朝日新聞の新聞奨学生の広告を見て、東京へ出たろうかと一瞬考えた体験があります。6 うしき@篠ノ井 10/28 06:47>新聞社の販売局に訴えたが「確かに承りました。でも、奨学会と販売店は別物だからね……」という以上の返事は得られなかった。小さなことですが私もいつでも止められますと言われて印鑑を押した新聞が6ヶ月や辞められないのはなぜと販売局に抗議したときに契約取る人はこちらとは別なんですよ。と言われました。書く方はそんなに偉いのか・・・雨の日も毎日配達して頭を下げて集金に回る人達の方がよっぽどご苦労様だ。流しの契約取りの人はどういう人達なのでしょうか?新聞が書かないニュースで大変興味深く読みました。5 LIYON2006 10/28 00:08新聞奨学生はその店で一番若く、体力があるのでよく言えば「頼りがいがある」、悪く言えば「無理を押しつけやすい」存在でもあります。だから古紙袋の配布やポスティングなど、専従やパートさんには頼みにくい仕事を三木さんのように押しつけられます。新聞奨学生で、卒業時にまともに就職できる人はほんの一握りで、ほとんどの人がそのまま販売所に勤めてしまいます。なぜか?夕刊の配達があり、休みも無いので就職活動が出来ないから。そういう奨学生のためにほとんどの育英会では就職相談や紹介をおこなう、みたいな謳い文句を書いてますが、そういった就職相談や紹介はまったくおこなわれていません。新聞奨学生→販売所専従→集金・拡張業務→拡張団という流れが多いんじゃないでしょうか。だから今、新聞奨学生を検討してる若い人に大きな声で伝えたい。「入学金や授業料を他の手段で都合出来るのなら、奨学生はやめた方がいい!!」4 レナード 10/27 20:49中台さんすばらしい記事です。新聞の問題を追及していくと女工哀史に行き着いた感じですね。貧しい若者の青春物語も垣間見ました。記事には、こういう書き方もあるんだ!と目からうろこが落ちる思いがしました。抑制気味な筆致なので、かえって心に響くものがあります。3 ヨッシー 10/27 18:39後編だからこれで終わりだと思うんだけど「まとめ」がないね。中身についてはとりあえず新聞業界は一度再編されるべきだね、酷い話だ。1 ひろ 10/27 17:06これが実態とすれば,すごいことですね。しかも,無責任状態・・・。ま、昔からよく聞く話ではあります。で、今もよく聞く話ですね。 世の中には怖い人たちがたくさんいますね。あぁこわいこわい。 ダウンロード copy #OhmyNewsJapan 1