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ユーチューブの日本発クリップが大量削除

引用元URL:http://www.ohmynews.co.jp/News.aspx?news_id=000000002533

「おもしろい」のパワーをいかに維持するか
I坂 N樹
2006-10-23 12:51

【画像省略】
日本のコンテンツは世界で人気(日本のアニメコスチュームを楽しむ香港の若者、2006年8月、ロイター)

 ユーチューブ(YouTube)で「キャンディーズ」を見る。「亀田父vsやくみつる」を見る。「太平洋戦争のクリップ」を探す……。映像の訴える力は強力で、いとも簡単に時空を超えさせてくれる。その意味でユーチューブがもたらした変化は大きかった。

 さて、今回NHKなど放送10社や音楽著作権協会(JASRAC)など団体がユーチューブに2万9549ファイルを削除させた。この件をどう考えるか。そして次に来るのは何か。

 今回の削除要請はまさに既得権益団体の過剰な反応である。普通の人はクリップを保存してまで見ようとは思わないし、まして自分からアップしようなんて思ってない。著作権侵害は明らかとはいえ、完全なオリジナルを複製できるMP3などとは遠くかけ離れている。

 ユーチューブを見ている人の素直な感想はおそらく「あの程度の質の動画をなんで?」というものではないか。もちろんグーグル(Google)に広告収入は入るだろうが、クリップを元に儲けようなんて考えている人は皆無だろう。それは既得権益者もよくご存じのはず。さらに言えば、一旦削除されようが、あっと言う間に復活するのも想定内だ。

 要するに、彼ら既得権益者の考えるユーチューブとは、ファイル交換ソフトのウィニー(Winny)と同じである。本来、著作権を持つことで50年間は享受するはずであった利益が不法な使用によって失われているという理屈だ。もちろん1つのソフト=作品を生み出すのは相当な資金的・人的・時間的労力を要する。それを回収するため報酬への道筋をつけるのが著作権だが,そのウマミを、たとえユーチューブ程度のへなちょこビデオだろうが、何だろうが、誰にも渡したくないというのが既得権益者なのである。

 しかし、著作権を侵害しているのは誰か。ユーチューブ自体はデジタルミレニアム著作権法によって削除すれば済むわけで、実際に侵害している主体はアップしているユーザーである。今回の事態は明らかに既存メディアによるユーチューブ殲滅作戦の第1段階であり、次の標的はもちろんアップするユーザーであろう。

 あれだけユーチューブが注目された背景には,せっせとアップしてくれる職人たちの存在があるわけだ。では,なぜ彼らはせっせと仕事をしているのか。目立ちたいからか、それとも趣味か。確かに閲覧者にとってみれば賞賛に値する作業である。しかし、彼らの仕事を表立って賞賛するコメントはほとんど無い。閲覧数が掲示されはするが、それがモチベーションになっているとは思えない。いったいなぜ彼らは無賃労働にいそしむのか。

 その意図は明らかだ。単に「おもしろい」からである。著作権への挑戦とか、ネットによる構造改革などではない。「おもしろい」ツールを使って「おもしろく」なれば、誰かが「おもしろく」感じてくれるだろう、という信頼感だ。ネット上で直接反応が返ってくることもあるだろうが、ほとんどは雰囲気だ。彼らはネット上の反応について直接的な反応が無くても、「雰囲気」で感じ取れるセンスを身につけている。「空気を読む」ってやつだ。

 もし、空気を読める奴らがこぞっていなくなったとしたら、全く空虚な空間になってしまうだろう。しかし、こういったクリップが創造性の土台になり、新たなコンテンツを生み出す源泉になっているという事実は、既得権益者には全く関係のない話ってわけだ。

 我らが日本人の職人たちがアップしているのは、今のところアニメや映画のクリップといった違法コンテンツが中心。米国でも最初は同じようなものだったが、最近ではオリジナルメッセージや映画のパロディといったコンテンツも増えてきた。

 たとえば米国でブレイクした謎の少女Breeが語るモノローグビデオ『Lonelygirl15』。実は台本ありきの女優の仕業であったが、多くのファンを巻き込んで映画化されると報じられている。

 こういったコンテンツが出始めたのは、ユーチューブの新たな発展の方向性の表れだろう。それがビデオブログなのかオリジナルビデオなのかはわからないが、ユーチューブに出回る違法クリップを踏まえて新たな表現手段が生まれつつあることは間違いないだろう。違法クリップの閲覧に飽き足らないユーザーがその牽引役になりつつあるのである。

オーマイニュース(日本版)より

※引用文中【画像省略】は筆者が附記


この記事についたコメントは8件。

8 椎名 10/27 03:58
1.YouTubeでライブ映像を探して観る
 ↓
2.ついでに関連映像も観る
 ↓
3.知らなかった名曲に出会う
 ↓
4.CDやDVDを買う

こう言う流れが最近自分の中で出来上がってきてます。

自力や口コミによる情報収集では出会えなかったかもしれない
作品に出会えるチャンスはYouTubeのおかげで増えてます。

権利関係で永久に発売されることはなさそうなバラエティー番組の映像を始め、
商業ベースにのらないために発売されない様々な映像に出会えるのもYouTube。

文化を保存して手軽に気軽に観られる利便性は素晴らしいと思います。

なんとか共存して欲しいですね。
アメリカではそう言う動きもある見たいですが、日本はまだまだですね。

7 たろちゃ 10/25 15:35
儲けようとしてなかろうが何だろうが、他人の作った物を勝手に投稿するのは非難されるべきではないでしょうか。
普通の人はクリップを保存してまで見ようとは思わないかも知れませんが、YouTubeから削除されない限りは何度でもYouTubeに来ることによって見ることができますよね。
自ら進んでUPしようとは思わないのは、手元にそういうコンテンツがないからではないでしょうか。
例えば普通の人はTVの画像をわざわざキャプチャしてWinnyに載せようとはしませんよね。単に手元に他のところから持ってきた動画ファイルがあるから、自らも再配布しているだけで。
要するに素人は荷担しようとしてもそのスキルがないから荷担していないだけだと思いますが。
YouTubeが多くの違法クリップなどによってPVを伸ばし、PVが多いからたくさんの人に見てもらいたいオリジナルコンテンツ作者からの投稿も増える、と悪事象からたまたま好結果が生まれている可能性は僕も否定しません。
だからといって違法クリップをUPすること自体は僕は決して正当化されないと思いますし、著作権を保有する人が自己の財産権を主張するのは当然のことだと思いますよ。

5 yonemura 10/25 02:00
これは面白いですね。
特にアート系パフォーマンスにはYoutubeは合っているのかもしれません。

4 poteto 10/23 23:43
好きなビデオに「輪派絵師団(RinpaEshidan)」という日本のアートグループがアップしているものがあります。非常に絵の完成度も高く、またそれを創造的に展開している様子がビデオになってさらに際立つ作品になっています。「puzzle」という作品はおすすめです。(http://www.youtube.com/watch?v=sKKl1bybZKg&mode=related&search=)

また、PrsBigTigga207による「Two Brothers Free Running」、単純にすごいだけかもしれませんが、これを音楽を付けてビデオにしてアップしてしまうあたりにツールを使えるようになった新しさを感じたりなんかしています。(http://www.youtube.com/watch?v=Vjco3boDZ7A&mode=related&search=)

多分今までは、このようなビデオを配信するためには相当な費用や設備、あるいはコネクションなどが必要だったでしょう。それがほとんどノーコストで発信でき、さらにこういったサイトで相互にインスパイアされるといった状況も出てきているのではないかと思います。

3 yonemura 10/23 22:16
なるほど。
どうせですからLonelygirl15のほかにも、いくつかそういった作品のリンクをいただけませんか。
単純に興味があります。

2 poteto 10/23 21:44
yonemuraさま、本記事を投稿したものです。
「YouTubeの違法クリップを踏まえて」というところですが、確かに「単なる違法クリップを投稿することを超えて」とか、「様々なビデオにインスパイアされて」といった表現の方が適切かもしれません。

YouTubeのコメントの傾向として、投稿者自身が出演するモノローグやプライベート映像に対するものが多くなってきています。また、こういった映像へのレスやヒントを得て制作したものなどがビデオレスポンスとして、投稿されていますが、結構よくできているものも増えてきているようです。

まあ、表現手段としては確立されていないのかもしれませんが、その萌芽を感じさせるという意味での意見でした。

1 yonemura 10/23 20:27
>ユーチューブに出回る違法クリップを踏まえて新たな表現手段が生まれつつあることは間違いないだろう。

という根拠がいまひとつ説得的でないように感じます。


察しろってやつですの。察してください。