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平壌の「博士の異常な愛情」

引用元URL:http://www.ohmynews.co.jp/News.aspx?news_id=000000002344

元映画監督・金正日による出来の悪いドラマ
ピーター・ヘイズ/ティモシー・サベジ
2006-10-13 14:55

 スタンレー・キューブリックの1964年の核戦争に関する映画『Dr. Strangelove』(邦題『博士の異常な愛情』)はサブタイトルにこうある。

「私は如何にして心配するのを止めて、水爆を愛するようになったか」

 ストレンジラブ博士と同じように、北朝鮮の金正日は、近隣の国が北朝鮮の爆弾を愛することを望んでいる。実験を発表したときに、北朝鮮の朝鮮中央通信は「核実験は、朝鮮半島と周辺地域の平和と安定を守るうえで寄与するであろう」と述べた。

 しかしながら、近隣諸国はそのように見ていない。韓国、日本、中国でさえも核実験を非難した。その3カ国は、北朝鮮のミサイルの射程範囲内にある。米国は、世界は核武装した北朝鮮と共存できないと言っている。

 知っている人はほとんどいないが、じつは金は、最初は映画制作者であった。その後に、核兵器国家の指導者になった。

 彼の映画制作についての大げさな文書の第7章は次のように書かれている。「映画をどう指揮するかの責任は監督にある」

 出来のよくない“映画”かもしれないが、金がこのドラマの振り付けをしているのは疑いない。

 核のDoomsday Machine(訳注:映画に出てくるソ連の兵器)という悪魔の特質とは、それが敵対者に自分の生存を左右させてしまうことだ。

 核兵器を持った金正日というのは世界にとって、受け入れ難いかもしれないが、他の選択肢はさらに悪い。ワシントンや東京の強硬派がずっと前から抱いている夢、すなわち政権崩壊が起きた場合、朝鮮での戦争の最中に権力狂の将軍らの手に核が渡ったり、国から密かに持ち出されてテロリストの手に渡るという公算がある。

 韓国、中国、ロシアは、これを理解している。だからこそ、金融圧力を通じて北朝鮮を屈服させようとする米国とは同調しない。両者は短期的には関与から退くかもしれないが、早急に北朝鮮を再び関与させるであろう。

 では、核実験にどのように対応したらいいのか。

 今の最善の対応は、爆弾の評価を低くするために、ほとんどせず、何も言わないことである。国連憲章第7章に基づいた国連安保理の制裁による海上封鎖やその他の軍事手段など対決行動は、北朝鮮の主張--すなわち米国の「敵対政策」から守るために核戦力が必要だとする主張--を正当化させるだけである。

 さらに、状況は軍事行動のリスクをとるには危険すぎる。北朝鮮の核兵器については、指揮統制体制がどうなっているのか、どのように守られているのか、使用についての将来の配備・作戦ドクトリンはどのようなものなのか、ほとんど何も知られていない。非武装地帯での危機に、北朝鮮が核戦略を場当たり的につくるような事態は、誰も望まない。

 米国と中国が、北朝鮮の核実験を防げなかったことについて責任のなすりあいをするのは避けるべきである。

 6カ国協議は死んだ。北朝鮮に直接関わっている2大国として、北朝鮮を関与させ、交渉を再開させる(新たな3カ国協議という可能性もある)のための、実行可能な戦略を一緒に編み出さなければならない。米国が北朝鮮を関与させるのを渋るなら、中国とロシアは情勢を安定させるために金正日と取引をするであろう。

 最後に、米国は同盟国である日本と韓国が対抗して核兵器をつくるようなことを防がなくてはならない。米国の核兵器が存在するだけで十分、北朝鮮による核の第1使用への強力な抑止力となっている。米国の核兵器を日本、韓国、西太平洋の海上に再配備しても、米国の報復能力には何ら戦略的優位性は加わらない。

 この点に関して、日本は扇のカナメである。米国はあらゆる可能な策をとって、中国と朝鮮半島を刺激するような日本の核拡散を避けなくてはならない。北朝鮮に最後通牒を出したり、新たな核の脅威を示すことは、さらなる実験をさせ、対立を導くだけである。

 誰もがストレンジラブの今回の平壌での出現に、どうのように対応すべきか考えているが、映画で米大統領が次のように忠告していることを思い起こすべきである。

 「みなさん、作戦司令室では戦闘は起きていません」


 ピーター・ヘイズ……米シンクタンク・ノーチラス研究所所長
 ティモシー・サベジ……ノーチラス研究所アソシエイツ

オーマイニュース英語版から

オーマイニュース(日本版)より

この記事についたコメントは7件。

7 HIKO 10/14 00:10
日本の経済制裁といっても所詮抜け穴はあります。しかし、日本、米国が経済制裁を行わない事は姿勢として愚かです。私はブッシュは好きではありませんが対北の政策はそれなりに評価します。北はKEDOを始め友好的な状況の中で裏で行動し現在の状況となりました。他国の圧力のあまりこうなったのではありません。経済制裁などの圧力のあまりこうなったという説明はABCD包囲網のあまり戦争になったという日本を思い起こさせますがそれは本質論ではありません。

私は中国、韓国、ロシアが北を孤立させず(扉を閉ざさないという意味、食糧援助はある程度行われたとしても軍需物資が行かないように全ての国が協調して目を光らせねばならない、そして経済制裁もある程度中韓も行うべき)、日米等西側諸国は徹底した圧力をかけ、それらが協調して進められる事が良いと思っています。扉を開く国と北風の国が協調して最終的に北の民主化を目指し、インド、パキスタンのように核保有、実験をしながら米国と友好するという夢を北に持たせてはなりません。非核化と民主化が得られたら協調して北を助けるビジョンを描きつつそれまでは妥協を各国とも北に許さない事だと思います。

>米国は同盟国である日本と韓国が対抗して核兵器
>をつくるようなことを防がなくてはならない。
別に米国が防がなくても日本が核保有国になる事はないと信じたいですが、持つ、という意見があれば徹底的に反対すべきだとは思いますよ。そして韓国は6割が核保有賛成という報道がありましたので、事実であればそれは改めるべき姿勢と思います。私は韓国が最終的には北を統一、非核化する事を望みますが韓国が信頼に足りる国である事を望みます。

6 HIKO 10/13 23:55
金正日は映画好きで、日本のものでは虎さんファンで
ありましたよね。
さて、
>核兵器を持った金正日というのは世界にとって、
>受け入れ難いかもしれないが、他の選択肢はさらに
>悪い。
>ワシントンや東京の強硬派がずっと前から抱いて
>いる夢、すなわち政権崩壊が起きた場合、朝鮮での
>戦争の最中に権力狂の将軍らの手に核が渡ったり、
>国から密かに持ち出されてテロリストの手に渡ると
>いう公算がある。
政権崩壊がおきなくても十分に北は様々にそれらと繋がっているといいますしテロリストに渡す公算はあります。よって他の選択肢がさらに悪いとは思いません。核兵器を持った金正日というのは十分に最も悪い状況です。現在はまだまともな技術をもっているとも思いませんし北朝鮮が十分に脅威になるのは時間がかかりますが脅威への方向線であるのが確かだと思います。よって本当の意味で核兵器を持った金正日という状態になる前に対処する必要があります。

>韓国、中国、ロシアは、これを理解している。
>だからこそ、金融圧力を通じて北朝鮮を
>屈服させようとする米国とは同調しない。
>両者は短期的には関与から退くかもしれないが、
>早急に北朝鮮を再び関与させるであろう。
北を孤立させない努力はするでしょうが、それは中国は周辺に敵対的な核の保持国がある事を嫌い、韓国、中国とも難民を警戒するからと思われます。

>米国と中国が、北朝鮮の核実験を防げなかった
>ことについて責任のなすりあいをするのは避ける
>べきである。
そう思います。そして米国内は韓国内のなすりあいもそれ程意味あるとは思いません。民主主義議会政治の駆け引き的弊害にこの話題を載せるのではなく、本質論から考えられるべきです。

>6カ国協議は死んだ。
そうは思いません。これからこそ必要です。

5 野良猫 10/13 23:33
ハリウッド好きときいてます。
笑いますね。

4 たろちゃ 10/13 23:12
しかしまあ、なんと読みにくい記事なのでしょうか。
OMN日本版の編集部様におきましては、infoseekかどこかの翻訳サイトで直訳なされていませんか?
>Right now, the best response is to do little and say nothing, in order to devalue Kim's bomb.
>今の最善の対応は、爆弾の評価を低くするために、ほとんどせず、何も言わないことである。

ほとんどせず、って‥‥。
せめて「キムの爆弾の評価を下げるために今できる最善のことは、何も言わず、大げさに行動しないことだ」くらいの訳はできないものでしょうか。
言ってる意味はわからないでもありませんが、文章を書く人としては合格点にほど遠いと思います。

2 八又蛇 10/13 21:32
質の悪い爆弾で、一発目が不発だったからって、爆弾で脅した事実は変わらない。二発目も不発弾になるとも限らない。

1 スベリヒユ 10/13 16:23
今回の自称核実験を喩えて言うならば、「おれは真性拳銃を持っているぞ!」と強盗に来た奴が実際は模造拳銃で発砲(発火)させようとしたら平玉火薬が湿気ていて「プシュッ」という煙が出た程度のお粗末な結末だったようです。
結局記事に書いているように、「失敗」とかも言う必要もないし冷笑しつつ「シカト」するのが一番で、誰かのブログにも書いていた様に、周辺国や世の中の皆様には「騒ぐなアホ」と言うしかないんではないでしょうか。


ノーチラス研究所は現在も鋭意活動中です。全世界から核兵器をなくすことは究極の目標としては正しいのですが、このピーター・ヘイズ博士の論は現実を見ていないように思われます。

で、上記イベントに関しては主催の長崎大学が出したプレスリリース(PDF)のほうがもう少し参加者についてくわしく書いてありますね。

「北東アジアにおける核使用の可能性:核リスク削減にとっての示唆」
報告書(英文)発表について

閑話休題(本来の意味で使用しています)。

「いわゆる従軍慰安婦」問題についての日韓合意がなされた当時、どちらかといえば安倍晋三総理(当時)の決断に対して反対の声が大きかったように思います。(もちろんそうでない意見も見受けられました)

執筆者がちょっとアレな人であることは脇に置いて、大きな流れは上記記事の通りでした。”あまり歓迎されない”決断が当時の岸田外相(現首相)と尹外相の間でなされましたが、事前の予測通り韓国側の一方的な合意破棄により、この決断は高い評価を得ることになります。

日本版オーマイニュースに掲載されたこの記事に戻ると、この記者さんが書いた「6カ国協議は死んだ」は間違いです。言葉は悪いですがアリバイとしての機能は現在も維持し続けています。食糧支援もした、核開発放棄の見返りとして化石燃料の支援や軽水炉建設支援(中止)も行なった、複数の国家を交えて真摯な話し合いもした、というアリバイですね。

そうした「約束」を北朝鮮は全部一方的に破棄して小型核弾頭を複数所持し、大陸間弾道ミサイルを持とうとしています。

約束というのはルールを守ることです。「武力による現状変更を許さない」というルールを守らなかった国がどうなるかよく見ておきましょう。あ、そうだ。デフォルトおめでとうございますw>某侵略国さん