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部分削除が目立つ翻訳出版

引用元URL:http://www.ohmynews.co.jp/News.aspx?news_id=000000002439

できれば原著を手にとって
M原 S
2006-10-20 06:49

 日本で大ヒットした映画『ラスト・エンペラー』。清朝最後の皇帝・溥儀のイギリス人家庭教師であるレジナルド・フレミング・ジョンストンの原著(1934年刊)は89年、岩波書店によって『紫禁城の黄昏』(1989年)として翻訳出版された。しかし05年3月、渡部昇一氏の監修のもと『紫禁城の黄昏―完訳 (上)』『紫禁城の黄昏―完訳 (下)』(ともに祥伝社)として再翻訳出版された。

 これが、なぜ今になって再出版されたかというと、渡部昇一氏が岩波文庫版『紫禁城の黄昏』を読んだうえで、原著を購入して読んだところ、原著の全26章のうち、第1章~10章と第16章、序章の一部が削除されて翻訳出版されたことを発見し、激怒して自著の中で岩波書店を「悪質だ」と言って批判したという経緯がある。

 両書を見比べていただくだけでも分かることだが、岩波文庫版は1冊で収まってるのに対し完訳版は単行本にして上下2巻にわたっている。これだけでも岩波書店が原著の内容をどれだけ削除して翻訳出版したか分かろうというものである。ここまでされては原著者の出版意図が正確に伝わらなくなるという意味でも悪質としか言いようがないというものである。

 洋書の翻訳出版の際はこういうことはよくあるようで、アメリカの代表的なマーケティング・コンサルタントであるジェイ・エイブラハム氏の著書が01年、PHP研究所から『お金をかけずにお金を稼ぐ方法』というタイトルで翻訳されたが、これも原著にあった内容を相当量削除して翻訳出版されたものだった。この本は05年2月、金森重樹氏監訳のもと『ハイパワー・マーケティング』として原著の内容を忠実に翻訳出版された。

 また、これまたアメリカの代表的なマーケティング・コンサルタントであるダン・S・ケネディ氏の著書の翻訳書であった『ビジネス版 悪魔の法則 ポジティブ思考のウソを斬る』(TBSブリタニカ、99年)という本も05年4月、金森重樹氏によって『常識の壁をこえて こころのフレームを変えるマーケティング哲学』(阪急コミュニケーションズ、05年)として原著の内容を削除せずに忠実に翻訳出版された。

 外国語ができる方は翻訳書など手にせずに原著を購入した方が賢明というものである。

オーマイニュース(日本版)より

この記事についたコメントは3件。

3 ネコヤナギ 11/04 15:48
報道でも意図的に一部を削除したり、わざととしか思えない誤訳をしたりする記事が見受けられますね。

わがオーマイニュースでは、桜井春彦記者が常套手段としています。
典型的な例を提示します。
http://www.ohmynews.co.jp/OhmyColumn.aspx?news_id=000000000856
http://www.ohmynews.co.jp/OhmyColumn.aspx?news_id=000000001993
コメント欄で、その安易さと稚拙さが糾弾されています。

1 八又蛇 10/20 11:21
できるだけ原典を当たれ。これはニュース報道でもいえる。特にアメリカで日本を非難しているって報道は要注意。強引な意訳や恣意的な誤訳がよくある。最近ではTBSのアメリカ下院議員ハイド氏インタビューとかが有名。翻訳には加工者の性格、思想、意図が混じってしまうのは仕方ないのかも知れないが・・・


ん~、原書よりも翻訳版のほうが良いという場合もあるのですがw

具体的な例をあげると、ハヤカワSF文庫の『宇宙英雄ペリーローダン』シリーズです。原書のほうは安っぽいワラ半紙のような紙質に読み捨て雑誌スタイルの製本なのに対し、日本語翻訳版は文庫本スタイルで蔵書としても見栄えがする製本となっています。これは初代翻訳者の松谷健二先生も「あとがきにかえて」でおっしゃっていたと記憶しています。挿絵(イラスト:依光隆氏)も日本語版のほうがはるかにかっこいい(個人の感想です)。

残念ながらお二人とも道半ばで亡くなられましたが、日本語版のファンは全員お二人の偉業を忘れることはないと思います。

翻訳者もイラストレーターも代替わりしましたが、文学の香りの残る翻訳が続いていて違和感はありませんので、引き続き購読を続けていきます。もうずいぶん前になりますが、第500巻は力の入った傑作の表紙だったと思います。かっこいい。