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陸自イラク派遣、7割評価~内閣府調査のごまかし

引用元URL:http://www.ohmynews.co.jp/News.aspx?news_id=000000002928

M原 A
2006-11-06 19:07

「教育改革タウンミーティング」のやらせ質問で話題になっている内閣府が、先週、自衛隊のイラク派遣に関する世論調査結果を発表した。11月2日のマスコミ各紙に
よれば、「高く評価する」と「多少評価する」があわせて71・5%で、イラク派遣評価が7割をこえた、とされた。私が、まず思ったのは「数字がずいぶん高いな」
ということだった。答えは質問の内容で大きく変わることがある。そこで、どんな質問だったのかを確かめようと思い、6日夕方、内閣府の担当者に電話をした。
   *    *    *
 記者「質問はどういう内容だったのですか?」
 内閣府担当者「(文章を読み上げ)あなたは陸上自衛隊のイラク人道復興支援活動について、どの程度評価しますか? 以下の5つからお選びください。高く評価す
る・多少評価する・あまり評価しない・評価しない・わからない」
 記者「わかりました。で、どういう方法で対象を選んだのですか?」
 内閣府「住民基本台帳から無作為に3000人を抽出しました」
 記者「電話で聞いたのですか?」
 内閣府「いいえ。委託した調査会社の調査員が、ダイレクトにお宅にうかがい聞きました。個別面接聴取法です」
 記者「そうですか」
     *    *    *
以上が電話のやりとりである。質問内容は「人道復興支援活動」という言い方で、自衛隊には好意的表現だが、それはいいとしよう。問題は、匿名調査ではなく個人
が特定できる調査方法にある。この時の回答率は60%で、40%の人が何らかの理由で回答を拒否している。半分近くが拒否したことになる。自宅に政府に委託された
調査員が来て、政治的問題をいろいろ聞かれて、答えたいと思うだろうか。また、正直に意見をいうことができるだろうか。プレッシャーを与える調査方法である。
こうした形で生まれたのが「陸自イラク派遣、7割評価」の数字なのだ。これは、ごまかしの世論調査ではないか、と私は思った。

私は以前、フジテレビの無作為・電話世論調査を受けたことがある。自民党総裁選がたけなわの時、フジテレビからいきなり電話がかかってきた。2~3分で終わると
いうので、協力することにした。質問は「あなたは、自民党総裁に安倍・麻生・谷垣の3人のうち、だれがふさわしいと思いますか?」というもの。答えにくい質問だった。「答えにくい質問ですね。だれも支持していないから」と答えた。この時、自分の身元に関して聞かれたのは、年代(年齢ではない)と職業(おおざっぱなもの)だけだった。もし、実名・住所を聞かれたら「勝手に電話をかけてきて、失礼だ」と電話を切っただろう。このフジテレビのやり方が、政治的問題での「世論調査」のふつうのやり方だと思う。

それに比べ、内閣府のやり方はひどい。マスコミは検証なしにこの結果を流したが、「7割イラク派遣支持」が一人歩きして、今後の政治動向に影響を与えかねない。
実際、「内閣府は『当初は国論を二分したが、結果的に多くの国民に理解を得られた』としている」(asahi.comの報道)。内閣府よ、世論誘導のごまかしの調査方
法はただちにやめていただきたい。

オーマイニュース(日本版)より

「自衛隊のイラク人道復興支援活動に関する特別世論調査」の概要
(平成18年11月 内閣府政府広報室)(PDFファイル)

ん? 回答率60%でそのうちの70%が肯定的な回答だから、全体では40%程度しか好意的ではないとでも言いたいのですか? 回答していない40%全員が否定的な意見を持っているとでも?

このアンケートは「政治的に微妙な問題に関するアンケートに回答したくない人の割合」を知るためにやってるんじゃないんですかね? 肯定的な意見にしろ否定的な意見にしろ、アンケートに回答する人は対面だろうが電話越しだろうが回答すると思いますよ。たとえばコロナ関連でNHKが世論調査した例だと、

コロナ国内初感染確認から3年 人々の暮らしや意識はどう変わったのか
(放送研究と調査 2023年5月号 2~25ページ)

報告の中心となる今回(第 3 回)の調査の概要は次のとおりである。
• 調査時期:2022 年11月1日~ 12月6日
• 調査方法:郵送法
• 調査相手:全国の18 歳以上 3,600人
( 12人×300 地点 )
• 有効数(率):2,266人( 62.9%)

放送研究と調査 2023年5月号 3ページ右列より引用

前年、前々年に行なわれた調査でも有効回答率は60%前後です。他の世論調査でも多少上下するとはいえ、回答しない人の率はそこまで大きな変化はありません。(絶対ではない)

世論調査と市民意識 : イラク戦争と自衛隊派遣(2003~2004年)を一事例として
(メディア・コミュニケーション : 慶応義塾大学メディア・コミュニケーション研究所紀要 No.55 (2005. 3) ,p.49- 62)

第二に,世論調査にはこうした「政治性」が備わるからこそ,政策過程に大きな影響を及ぼすことができるという点も指摘できる。特に,マス・メディアが手がける世論調査は,その結果がマス・メディア自身によって公表される可能性が大きいことから,こうした「政治性」が顕著になると言える。従って,世論調査そのものの問題点を認識しつつも,政策過程に及ぼすマス・メディアの影響について考察を行う際には,マス・メディアが実施する世論調査は重要な資料となるのである。

メディア・コミュニケーション No.55 2005 62ページより引用

記者さんは、朝日新聞や毎日新聞にも同様に「世論誘導のごまかしの調査方法」を指摘したほうがいいんじゃないですかね?