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中国・集安における高句麗世界遺産の保護状況

引用元URL:http://www.ohmynews.co.jp/News.aspx?news_id=0000000002827

遺産保護のための理解を求む
K田 H行
2006-11-06 14:24
 中国吉林省集安市にある世界遺産、高句麗前中期の遺跡群の保護状況について、レポートする。

 中国にある高句麗前中期の遺跡群は、北朝鮮にある高句麗後期遺跡群とともに2004年6月、ユネスコ世界遺産委員会蘇州会議で世界遺産に登録された。

 高句麗遺跡群では世界遺産申請に先立って、2003年までに大規模な発掘調査が行われ、2004年には4冊の発掘報告書という形となってその成果が明らかとなった。中国政府は2002年に集安市で「高句麗の王城、王陵および貴族の古墳の保護に関する計画」を実施し、発掘調査直後の2003年には史跡整備を行った。

 集安は韓民族の発祥の地という理念が浸透しているため、韓国から多くの観光客が訪れている。旧間島省返還要求などの動きがある韓国に対する警戒感からか、中国では2002年から5年間のプロジェクト「東北辺疆(へんきょう)歴史與現状系列研究工程」、いわゆる東北工程が始まり、その中で高句麗を中国東北地方の少数民族政権と位置づける動きがある。これに対し韓国のマスコミや国会議員、市民団体、学者までが一斉に反発し、それが韓国国民の関心を呼んで、さらなる観光客の増加につながっているようである。

 巨大な切石を積んだ将軍塚では、周辺は芝生で整備され、大きな世界遺産のロゴマークがあしらわれていた。階段が設置され、石室の見学が可能である。将軍塚や太王陵など主要な古墳では、以前は博物館の職員だけで管理していたようであるが、現在では公安(警官)も石室の前で警戒にあたっている。内部の棺台は保護ガラスで覆われていた。一方、将軍塚の北側で発掘された、あまり目立たない祭祀台の石列は発掘後ほぼそのままの状態で、雑草に覆われていた。乱されないよう何らかの措置が必要ではないかと思われた。同じように祭祀台が発掘された太王陵でも同様の状況であった。ちなみに太王陵では2003年の発掘で好太王の銘文がある銅鈴が発見され、好太王陵であることが確認されている。

【画像省略】
将軍塚(前の芝生に世界遺産のロゴマーク)
撮影者:K田H行


 広開土王碑(好太王碑)や太王陵の周辺では、以前あった数百もの民家が撤去されて史跡公園として整備され、以前小学校で使われていたという建物も観光客用の施設となっていた。広開土王碑はガラス張りの覆屋が架けられ、風雨に曝(さら)されないように保護されて、付近にはどう猛な軍用犬をつなぐ念の入れようであった。

【画像省略】
ガラスケースに覆われた好太王碑と韓国人観光客たち
撮影者:K田H行

 国内城(通溝城)は一辺700メートルほどの平城で、漢の県城を利用した高句麗中期の都である。近年一部城壁が修復された。そのほか、発掘調査された石組排水溝の遺構が、遺構上部に覆いが造られて保存されていた。国内城内の建物は50~100年かけてすべて撤去し、高句麗の都を再現する計画があるという。

 丸都山城(山城子山城)は通溝城の背後の山に造られた山城である。石積みの点将台(見張り台)があり、観光客が石積みに登るのを防ぐためか、台のすぐ後方に近年設けられたと思われる木造の展望台が設置されていた。発掘調査が行われた宮殿跡を訪れたが、雑草が生い茂り、基壇の土も流されているなど十分な保存処置はなされず、放置された状態になっているように見受けられた。韓国のマスコミから「遺跡が保存されず放置されている」(朝鮮日報2005年7月26日)との批判があったが、残念ながら現在でもそのままであった。

 網野(善彦)史学に代表される「日本民族」論批判や「国史」批判を経験した日本歴史学界の潮流からみれば、さらにB・アンダーソンの『想像の共同体』以降の世界的なアカデミズムからみても、高句麗・渤海(ぼっかい)民族論争は時代遅れで不毛なものにみえる。実際は想像上の「民族国家」に必要な「国史」という歴史物語の衝突なのである。中国と韓国の歴史認識の共有はすぐには困難であろうが、遺跡の保護を願う気持ちは共通するはずである。お互いによい知恵を出して解決に向かうよう、期待したい。

オーマイニュース(日本版)より

※引用文中【画像省略】は筆者が附記


この記事についたコメントは3件。

3 ヤマト 11/06 16:36
野晒しだった好太王碑も今では立派なショーケース付きですか。今年、同じ中国東北部で栄えた
渤海国の遺跡を訪れましたが、この数年で随分と整備されたようです。もちろん高句麗遺跡と目的は
同じ。プロパガンダの片棒を担がされるくらいなら、いっそ朽ちてしまえと。いや、暴言ですな。

PS 最新の写真をありがとうございました。

2 おばかなねらー 11/06 14:54
もっと分かりやすく書いて欲しかった

1 すっとこ獸醫 11/06 14:36
『東北工程』は、中共が領土拡張政策の口実のために作ったものに過ぎません。

ですから、その管理がいい加減なのも当然のこと。

次は「長白山(韓国名:白頭山)」の世界遺産登録が目されています。

つまり、中國と北朝鮮の国境線を南にずらそう、ということです。


共産主義者は歴史をぞんざいに扱いますので当然の措置かと。自分たちに都合が悪ければ歴史の改変さえやってしまいます。ん? 具体的な例を書いてみろって?

六四天安门

六四天安门

大事なことなので2回書きました。


広開土大王(好太王)はハングル文字を創った世宗と並んで朝鮮民族の誇りとして語られる人物です。ドラマが作られるくらいには人気の人物だと思います。

日本人にとっても山川出版社の歴史の副読本で出てくるくらいには重要な人物(主に受験関係)でもありますね。

もっともここ最近では実在した歴史上の人物としてよりも駆逐艦の艦名としてのほうでその名前が知られていると思います。

韓国海軍艦艇による火器管制レーダー照射事案(最終見解)

この事件で火器管制レーダーを照射した韓国海軍の駆逐艦の名前が「クァンゲト・デワン(広開土大王)」です。