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東高西低な「耐震」への関心

引用元URL:http://www.ohmynews.co.jp/News.aspx?news_id=000000003134

目標値90%実現へ、一層の助成拡充が必要
菊池 浩史
2006-11-15 12:11

 昨年11月に発覚した耐震強度偽装事件以来、住宅の耐震性に対する関心が高まっています。これが契機となって「宅建業法」が改正され、続いて「建築基準法」と「建築士法」も改正され規制が強化されることとなりました。

【画像省略】
国連世界会議における地震実験を見守る参加者(2005年1月、ロイター)

 住宅の安心・安全を重視し、購入時にコストアップしても耐震性が優れたマンションを選ぶ消費者が増えてきているようです。日経アーキテクチャー(06.11.13号)の特集「構造計算書偽造事件の発覚から1年」には、「建物に瑕疵があった場合の保険や確認検査、工事検査について消費者側でコストを負担しても実施すべきと考える消費者は半数を超えていた」という調査結果が紹介されていました。今回の事件をきっかけに耐震性の脆弱さが資産価値に甚大な影響を与えることを身に染みた方も多かったと思われます。

 このようななかで、日本経済新聞が築20年以上の分譲マンションの管理組合を対象に実施した調査を行いました。その結果、近畿地方は耐震強度問題への関心が低いことが浮き彫りになりました。

 調査は1986年以前に完成した全国の物件1576組合が対象で、回答は519組合(回答率32.9%)。近畿は80組合が回答しています。それによると、実際に耐震診断を実施した管理組合は近畿ではわずか8.8%(首都圏は15.2%、全国平均12.9%)。耐震診断を実施しない理由(この項複数回答)は「住民らの間で話題・議題に上がらない」(51.5%)がトップ、「耐震補強工事の実現が難しそう」(31.8%)が続きました(以上、日経新聞11月7日、10日)

 耐震診断実施率が近畿圏で低いのは、首都圏よりも危機感が薄いためのような気がします。直下型地震や東海地震が予想される首都圏に比べ、阪神・淡路大震災がすでに起こった近畿圏では、当分の間、大規模な地震は発生しないだろう、という意識が強いのではないでしょうか。

 また首都圏を含め、地域を問わず耐震診断の実施率が全般的に低い理由は、中古物件ゆえ合意形成が難しい点に起因していると思います。費用負担への抵抗は消費者の間で薄らいできていると冒頭に紹介した雑誌記事にありましたが、新築物件ではこの傾向が強まっていても、中古物件ではまだまだといった感がします。

 では中古マンションで耐震化を促進するには何が必要なのでしょうか。現行の耐震改修支援制度はまだまだ十分に活用されているとは言い難い状況です。自治体のなかには一定の条件のもとで耐震改修費補助制度を設けているところがあります。住宅金融公庫には耐震改修工事費融資制度があります。税制面でも耐震改修工事に対する住宅ローン減税があります。さまざまな形で耐震化を促進する仕組みはありますが、十分に活用しているとは言えないようです。

 今年6月施行の住生活基本法に基づき9月に閣議決定された住生活基本計画のなかで、住宅の耐震化の指標は90%に定められています。その実現には、住宅を「社会のインフラ装置」として明確に位置づけ、現行の助成制度の一層な拡充が必要です。

 耐震診断及び耐震改修工事の合意形成を図るためには「安心・安全な住宅の大切さ」「耐震性と資産価値の関連」を啓蒙することと同時に、経済面での支援を充実させることが欠かせません。

オーマイニュース(日本版)より

※引用文中【画像省略】は筆者が附記


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上記記事を読むかぎりだと5年前の2018年での推計で戸建てで8割、マンション等の集合住宅で9割以上が耐震補強工事を実施済みのようですね。「住宅・土地統計調査」(5年ごとに実施)に基づく数値でしょうから、来年あたりに最新の推計値が出ると思います。

新築なら最初から設計に組み込むことができるでしょうが、古い住宅だと追加の費用もかかりますし、むずかしい話です。