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松坂と携帯電話産業

引用元URL:http://www.ohmynews.co.jp/News.aspx?news_id=000000003188

長期的戦略なきジパング・ユートピア構想を憂う
F木 O
2006-11-27 07:25

 過日、ポスティングシステムで大リーグ入りを表明していた西武ライオンズの松坂大輔投手の独占交渉権を、ボストン・レッドソックスが5111万ドル(約60億円)という日本選手史上最高額で落札したことは、日米両国で大きく報道された。メディアから伝わる日本各層からの感想も、ただ60億円という金額の大きさに驚き、その高さに晴れがましさを感じるという素朴なものであった。しかし60億円は本当に高いのだろうか。

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15日、渡米前に成田空港で会見する西武・松坂投手(ロイター)

 米国は、松坂という投資案件に60億円かけてどれ程のリターンを得られるか、冷静に計算したはずだ。放映権を始め、松坂を介した日本ファンの囲い込みなどにより、数十倍、あるいは数百倍を回収できる、という見積もりがあるからこその額であったろう。

 一方の、松坂を失う日本球界の損失は、得られる60億円で補填(てん)できるものではないと思う。

 話題はずれるようだが、今月14日、総務省で開かれた「電気通信事業分野における競争状況の評価2006 公開カンファレンス」に出席した。電気通信事業全体を対象としたものだが、注目は携帯電話関連競争の評価であった(番号持ち運び制=MNP=が実施されてまもない時期で、評価には早過ぎる感はあったが)。競争評価は定点評価と戦略的評価に分けられており、この戦略的評価3テーマの1つがMNPであった。

 カンファレンスのハイライトは、NTTグループにKDDI、ソフトバンクといった通信事業者(キャリア)と、総務省、大学教授らによるパネルディスカッションであった。しかし、議論は想像通り、攻めの姿勢を強調しようとしながらシステム不具合を犯して十分攻めきれなかったソフトバンク、ひとり勝ち(と言っても大した数ではないが)の余裕を示すKDDI、多少減らしたとはいえ「自社ブランドを維持している」と健在ぶりを強弁するNTTドコモ――といった近視眼的な競争論理の攻防に終始していた。

 個人的には、携帯キャリア3社の競争が、ユーザーに安く、多機能で高性能、多面的なサービスを提供することにつながるのは喜ばしいと思う。ただ現実を見ると、キャリア3社のもとで、国内携帯電話メーカー各社は、過当競争のため、技術革新に使うはずの資金を販促金に回さざるを得ず、体力を消耗しているのである。膨大な資金を持ち国際的に携帯ビジネスを展開している外資が、体力の弱った国内メーカーに買収を仕掛けてこないとも限らないのだ。

 日本の携帯端末の安さ、サービス内容の豊富さ、他産業との連携による新たなビジネスモデルの開拓--。こうした競争の熾烈さは、それぞれ世界トップレベルにあるといえる。

 しかし残念ながら、これは日本というコップの中の話で、「鎖国ジパング」のユートピアに過ぎない。通信機器メーカー各社は、国内競争で戦術争いをするのではなく、長期的に世界へ拡がる戦略を持って競争して行く時期に来ているのである。

 求められるのは「国内の競争が世界での競争力につながる」ものにしていくことだ。たとえば、国際的に通用する新たな多機能サービスとビジネスモデルを開拓し、諸外国の市場開拓を行う事が考えられるだろう。また、不要な機能の選別がされてもいい時期に来ているようにも思う。行政も、こうした競争の方向性に少しは指導性を持っても良いのではないか。

 日本と、資本主義の先輩格にあたる欧米の国々で何が違うのか。それは突き詰めると、あちらには長期的戦略があり、日本のそれは、短期的かつ対処療法的な対応に過ぎないことであろう。

 松坂投手が米国で活躍する事を願うとともに、西武はポスティングで手にする高額の契約金を、長期的視野を持って、真に日本球界を発展させるような戦略的投資に使ってくれることを願ってやまない。

オーマイニュース(日本版)より

※引用文中【画像省略】は筆者が附記


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松坂大輔選手(当時)の大リーグ移籍と携帯電話のMNPと何か関係あるの?

通信市場の動向について(令和5年(2023年)4月25日)※PDF

移動系通信の契約数(MNO:シェア86.2%のうち)
NTTドコモ:36.1%
KDDIグループ:27.0%
ソフトバンク:20.9%
楽天モバイル:2.2%

通信市場の動向について(総務省 令和5年4月25日)7ページより引用

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