ママ友は必要? ~村井理子コラム
引用元URL:http://www.ohmynews.co.jp/OhmyColumn.aspx?news_id=000000001900
記者名 村井理子
2006-09-29 08:27
「ママ友」。
子どもを産む前の私だったら、この言葉を聞くやいなや、両手を上げて「結構です」と言っただろう。ましてや、「ママ友とランチ」など、首をブンブン横に振って拒否したに違いない。第一、この歳になって「ママ」と呼ばれるなんて、恥ずかしいったらない。女友だちとランチだとしても…今となってはなんだか遠い世界の話だ。最近は週刊誌読みながら一人でたぬきうどんが定番だしねぇ。
そんな私が先日初めて、新生児をもつ近所のママたちの集まりに参加してきた。きっかけは、こちらに越してきてから仲良くなったSちゃんのお誘いだった。Sちゃんには今年の3月に生まれた女の子がいる。今まで京都に住んでいたが、今年になってこの山奥に新居を構えたところ、今年出産したところなど、私と似た境遇だ。そんな理由で自然と仲良くなった。越してきて以来、お互いの家を週1回ほど行き来し、世間話する間柄になった。
Sちゃんは私とは正反対で、社交的だし勉強家でもある。地域に溶け込もうと、近所のご年配の方々とすすんで会話し、育児にも全力投球だ。離乳食教室に通い、保育園に見学がてら遊びに行き、情報を山ほど仕入れてくる。私はというと、そんなSちゃんの活動のおこぼれをいただく形でズルさ全開。予防注射の受け方だとか、離乳食の作り方だとか、保育園の雰囲気だとか、すべてSちゃんが足を使って調べあげたことを、タダで教えてもらっているのだ。
正直、とても助かる。全部Sちゃんに聞けば教えてもらえるもん。Sちゃんがいないとなんにもできない。
一応、こういう状態については「申し訳ないな」なんて思っていたし、いつかお礼しなきゃ、とも思っていた。でも、私はまだSちゃんに何のお返しもできていなかった。そうだ、今度一緒に近江牛でバーベキュー…なんて思っていたある日、Sちゃんから電話がかかってきた。
「なぁなぁ、今度Nさんのおうちで近所のママさんたちとランチがあるんやんか。一緒に行かへん? 引きこもってないで、ふたご連れてたまには出ておいでよぅ」
引きこもってないでってか…正直、ちょっと迷った。しかし、ここはSちゃんの誘いだ、断れない。Sちゃんは社交的な反面、ちょっとシャイなところもある。たぶん1人では行きにくいのだろう。今までのお礼もしたいし、ふたごを引き連れて行ってみようか…。
しかし、だ。前の晩から超ブルーなのだ。とりあえず、気が重くってしょうがない。夫に、「明日ママたちの集まりに行くんだよね」と告白すると、ニヤニヤ笑いながら、「ふーん、あんたでも行けるんだ」と言われたりして、余計に行くのが嫌になってしまった。おみやげとか持って行くんだろうか。何を着せて行ったらいいだろう。ミルクとかオムツとかも持って行くのか!? …あぁ、わからないわからないと悩みつつ眠りに落ち、翌朝。のそのそと起き出して、もう断れないから行くしかないと覚悟を決めた。
どうしようもなくブルーな心をひきずって参加した、ママ友ランチ。結果はというと、これが奥さん、大収穫!私が勝手に決めつけていたママ友ランチのイメージは見事払拭された。私はてっきり、それぞれの家庭で不満に思っていることやら、育児で不安に思っていることやらを切々と語りあい、慰めあったりするのがママ友ランチだと思っていたのだが、大きな間違いだった。それは、ママたちの見事なまでの連係プレーに支えられた、いわば一時託児所だったのだ!
1人の子どもがぐずれば、近くにいるママがさっと抱き上げ、上手にあやす。それが自分の子どもだとか他人の子どもだとか、まったく関係ない。1人のママが働いたら、次のママがすっと立つ。順番なんて決まってないけれど、あうんの呼吸で何人もの子どもの面倒を1人のママが担当し、残りのママたちは、しばし育児から解放されるのだ。特に悩みを相談するだとか、愚痴を言うなんてこともなく、ただゆっくりと時間が流れていった。
私は正直感動した。なんてやさしい人たちなんだろう、なんて心の広い人たちなんだろう。感謝してもしきれなかった。出口が見えない真っ暗なトンネルの中を1人歩いているようなふたご育児の真っ只中で、こういう時間がどれだけありがたいか、うまく表現することができない。決して押しつけではないやさしさに涙が出そうだった。ほんのひとときでも育児から解放され、1杯のアイスコーヒーをゆっくり飲めたのも久しぶりのことだった。
【画像省略】
アイスコーヒーを飲んで、お菓子をつまんで。昔はなんでもない時間だったのが、いまでは貴重なひとときに。
撮影者:村井理子
「1人ぐらい預かるからいつでも言って」
「ふたごは大変だけど、3歳になったら楽になるよ」
「遠慮しないでみんなに頼ればいいのに」
帰り際、「今度ふたごママんちにおじゃましようかな」といわれ、「うん、いつでもおいでよ!」と笑顔で即答した自分が信じられない。ママって呼ばれて笑顔で振り返る自分…夏の終わりのホラーです。
_________________________________________________________________________________________________________________________________________________________
村井理子(むらい・りこ):
1970年生まれ。滋賀県在住の翻訳家。「ブッシズム」と呼ばれるジョージ・ブッシュ米大統領の迷言・暴言をつぶさに追い続け、ウォッチャー歴は7年に。趣味は読書とインターネットと料理。今年4月にふたごの男児を出産、現在、仕事と育児に奮闘中。著書に『ブッシュ妄言録 ブッシュとおかしな仲間たち』(二見書房)など。
オフィシャルサイト= ジョージのブログ
_________________________________________________________________________________________________________________________________________________________
※引用文中【画像省略】は筆者が附記
-----
この記事についたコメントは6件。
6 GONTA 10/01 16:16
立場も環境も違いますけど、何か色々考えさせられて
学ばされる記事だと思いました。
5 T中M彦 10/01 14:03
保護者のネットワークは虐めや犯罪の防止にも有効 φ(..)メモメモ
4 sir 09/30 06:41
本当の体験談に興味を惹かれました。
結構、自分の中に壁を作ってしまいがちに成るもので、参考になりました。
育児の大変さの一部を垣間見る事ができました。
3 pinky 09/29 13:30
ウチの場合、既に子供も保育園に預けているし、
「面倒臭い」と思ってしまっていましたが、
村井さんの様子を伺うと、なんだか楽しそう♪
バスでよく合うママと、今度お茶でもしてみようかな♪
2 うしき@篠ノ井 09/29 09:11
>アイスコーヒーを飲んで、お菓子をつまんで。昔はなんでもない時間だったのが、いまでは貴重なひとときに。
お気持ち、分かります。2歳になったらラーメン屋も喫茶店でも一応同伴できるようになってきました。保育園に行ってくれるまであと一息です。
赤ちゃんが、親の人間性を鍛えてくれますよね・・・ママ友、みんな優しく、素敵です。「○○ちゃんママ」という呼ばれ方に違和感があるのでしたら、「苗字で呼んでね。」宣言すると自然にそうなります。「おばちゃんと遊ぼうね」と一人称に自然に言えるまではちょっと葛藤の日々が続くと思います。
育児も介護も息抜きができる時間は絶対に必要です。