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なんのためのセーフティネットか

引用元URL:http://www.ohmynews.co.jp/News.aspx?news_id=000000003104

生活保護の申請不受理
下川 悦治
2007-03-28 11:43

 私が住む福岡県は炭鉱地帯でもあったことから以前から生活保護受給者が多いと言われてきた。保護率の全国平均が11.1‰であるが、福岡県は18.0%(全国5位)と依然として高率を保っている。会計検査院が今年10月に報告した「社会保障費支出の現状に関する会計検査の結果についての報告書」からも申請不受理の問題も浮かびあがってくる。


■福岡県の生活保護状況-北九州市・受付けたのは14.6%■

【画像省略】
写真はイメージ

 九州市での水際作戦による申請不受理などがあり、今年、門司区の北九州市営住宅で生活保護を申請しようとした男性(当時56歳)が孤独死した問題を受け、全国の学者や弁護士ら約300人で結成した調査団(団長=井上英夫・金沢大教授)が10月25日現地調査の結果を基にした「アピー ル」を発表した。市の福祉行政について、「生活保護法の趣旨を逸脱した対応がまかり通っており、違法性が高い」と厳しく批判。また、これまで拒否されていた集団申請も受理された。

 今回の会計検査院報告によると、北九州市の受付け率は14.6%と政令市で最低であり、最高の千葉市は69.7%であり、大きな差になっている。福岡県内の状況をみると

(1)政令市の保護率平均が18.3%であるのに、福岡市は平均を上回り、北九州市は下回っている。高齢者が多い北九州市の保護率が低いのは不自然である。
(2)市別についての保護率平均は15.4‰で、最も高い山田市(2006年3月より嘉麻市)の68.7‰と最も低い小郡市の3.1‰の間には22.1倍の格差がある。
(3)町村別保護率については平均は26.1‰で、最も高い福岡県田川保健福祉環境事務所管内(香春町ほか8町村)の105.3‰と最も低い同糸島保健福祉環境事務所管内(二丈町ほか1町)の6.3‰の間には16.7倍の格差がある。
(4)支給済みの額では、政令市等の平均は195万9738円なのに対して、最も大きい北九州市の224万7186円と最も小さい仙台市の158万482円との間には1.4倍の格差がある。
(5)申請件数に対する開始件数の割合(以下「開始率」という)の全国平均は89.5%であり、最も高い千葉市の98.0%と最も低い福岡市の87.0%との間には1.1倍の格差がある。

 以上が会計検査院報告に示された福岡県内の状況であり、「報告」では地域格差の例として、福岡県内の例が多く示されている。


【画像省略】
写真はイメージ

■なぜか寂しい風景■

 自治体の受給制限の動きは、1981年に厚生省が出した通称「123号通知」と呼ばれる「生活保護の適正実施の推進について」という通達に始まる。暴力団などの不正受給があるとマスコミも含めて宣伝された。それがいつのまにか不正受給を防止するという名目から、受給制限という本音のところで活用されるようになってきた経緯がある。

 OECDによると、その国の平均的な世帯所得の半分以下しかない人の比率を示す「貧困率」は、日本は15.3%(2000年)ということであり、世界5位である。この層の増大は不正規雇用を増大させるなど政策的に作られたものが大きい。自治体にしてみれば、政策的に誘導されたものを、「三位一体の改革」ということで、自治体の負担分増になれば、厳しい自治体財政はさらに大変になるという思いもある。

 しかし、自治体の不受理の問題に対して、厳しい批判が上がってこない。そのひとつに、今年度でも最低賃金の方が生活保護費より低いという国民感情もある。良く比較される最低賃金や年金が個人単位なのに、生活保護費は世帯単位である。そのことは捨象されて比較されることが多い。いずれにしろ、貧困層の広がりは、生活保護受給者にも厳しい環境となりつつある。次のような調査がある。

 毎日新聞社会部著『縦並び社会』の中のアンケート結果で以下のようなものがあった。
◆ 生活保護者が増えています。どう考えますか。
最後のセーフティネットなので仕方ない71%(974)
もっと審査を厳しくして減らすべきだ29%(395)
 
 約3割が厳しい対応を求めている。弱者に対して容赦ない人たちが増えているのではないかと指摘している。申請を制限するのは権利侵害あり、是正されるべきであるが、最後のセーフティネットをどう機能させるかは国民の意思にも深く関係している。

オーマイニュース(日本版)より

※引用文中【画像省略】は筆者が附記


この記事についたコメントは2件。

2 匿名28号 03/28 13:16
編集者へ


訂正する際、編集部がやりそうなミスを先に指摘します。
その数字が生活保護率の数字なのか、その他(受付け率、アンケート結果等)の数字なのかに留意すること。

1 匿名28号 03/28 13:11
生活保護率の単位はパーミル‰のようですが、
記事では%と‰がごちゃまぜになってませんか?

ひどいよ、これは....
編集者、記事のどこをみて編集してるの?


やぶ蛇になりそうなので事実だけ。

この記事が執筆された2006年11月上旬、北九州市長は末吉興一氏(後ろ盾は麻生太郎氏)。この記事が掲載された2007年3月下旬、北九州市長は北橋健治氏(民主・社民・国民新党推薦)、2007年2月の市長選で当選(在任4期16年)。

北九州市長は北九州の市民が選びます