見出し画像

体感できない“好景気”

引用元URL:http://www.ohmynews.co.jp/News.aspx?news_id=000000003374

過去の好景気と比べて
A尾 T司
2006-12-01 07:57

【画像省略】
撮影者:OhmyNews

 今、続いているといわれる好景気が、59カ月目に入ったそうだ。東京に暮らす友人と時々話すが、確かに景気が良いと言う。しかし地方に住む記者には、実感が全く無い。むしろ明るさが見えず、周りは暗いままなので「不景気なままだよ」と敢えて答えている。

 いざなぎ景気というのが昔あったそうだ。1964年の東京オリンピックの翌年から始まったらしく、57カ月続いたと言われている。当時記者は、高校、大学に通っていたので、改めてそのころの生活状況を思い出してみた。

 確かに好景気だったのだろう。なぜなら、高校生の私に父親はホンダのオートバイを買ってくれた。90ccで比較的排気量の小さいもので、当時の人気モデルであった。

 また大学2年生のころ、父親が田舎から私の住む東京へやって来たことがある。業界の視察団のひとりとして来たのだが、東京駅で出迎えた私に、父は無造作に2万円をポンッと手渡してきた。当時、東京での私の生活費は、アパート代を含めて月々2万5000円だった。

 東京駅で受け取った2万円は、想像すら出来ないほどの高額の臨時収入であった。「5000円くらいはもらえるかな……」と期待していた私は、友人と江ノ島へ行く予定立てていたのだが、あまりのうれしさに、伊豆の下田への1泊旅行へと上方修正したものだった。

 さて、そんな恵まれた学生生活をしてきた記者にも、今では娘と息子の2人の子どもがいる。2人ともに既に結婚して、幸せな生活を送っている。

 もっとも彼らの幸せな生活とは、健康で毎日仕事を続けていることをいうのであって、決して父親から臨時収入がしばしば入ってくると生活ではない。そもそも、父親である記者は、昔に自分が受けた恩恵と同じことを子供たちにしてやる事が出来ない。

 記者の学生時代、父親は業界の連中たちといわゆる“料亭”で愉快に騒ぎながら楽しんでいた。数回ではあったが父親に呼ばれて、記者もその料亭に顔を出した。着物を着た女性たちが三味線の曲にあわせて歌い、踊る。父親の傍らには白い細い指でお酌をする綺麗な女性がいた。

 片や今はどうだろう?

 記者は先日の日曜日、高校時代からの友人8人と囲炉裏を囲んで鴨鍋を楽しんだ。会費は2000円。それはそれで楽しい時間であったが、傍らに女性など居るはずもない。そもそも記者のいきつけは近所の居酒屋で、キープしてある安い焼酎を飲みながら、友人と他愛も無い会話を交わすのが日常だ。

 その近所の居酒屋で盛り上がると、記者は息子を呼び出すことがある。息子は内心イヤイヤながらも父親の手前、周囲に気を遣いながら礼儀正しく少しの焼酎を飲んで帰っていく。

 記者が父親に呼ばれ、料亭に行ったとき感じた“トキメキ”は、残念ながらこの居酒屋にはない。料亭に連れて行ってやることができない記者は、息子に“トキメキ”を感じさせてやることができない。

 さらに言えば、帰り際に息子に少々の小遣いを握らせてやりたいのだが、1万円札は出したくても、出すことが出来ない。1000円や2000円なら出せるが、それには記者のプライド(?)が許さない。

 もちろん、苦労せずにお金を受け取ることが幸せではないことはわかっている。それは充分に承知しているが、子供の単純に喜ぶ顔はいくつになっても見たいというのが親の情であろう。

 いざなぎ景気に生きた記者の父、それを超えた現在の好景気に生きる記者。2つの姿を天秤にかけると、いざなぎ超えしたはずの今回の好景気が負けているような気がしてならない。今の好景気は、経済成長率が低いままで続いているという。過去の考え方を大幅に変える必要性が、私たちには生じているということなのだろうか……。

オーマイニュース(日本版)より

※引用文中【画像省略】は筆者が附記


この記事についたコメントは8件。

8 まぐ 12/03 21:39
また日本の実力では1ドル=170円が相応しく、その数値なら日本の地方でも生産拠点になりえました。

基本的には貨幣価値=生産物の価値とならないと人間は自由になれませんが、生産物は減価する為に常に貨幣~>生産~です。これが人間を不自由にしていきます。(この説明は別の機会に)
穏やかなインフレにより貨幣価値が減じていくに従い、この弊害を補いますが、デフレでは貨幣価値がより大きくなり、弊害を大きくします。
また、欧州では調整インフレ政策(2%程度)が実際にとられています。(なお日本では物価指数でプラス0,3~0,5が中立的な数値で、その近辺で失業率が低位安定し、それに2%加算された状態で日本経済は穏やか成長が見込まれます。)
アメリカでも、FRB議長がグリーンスパンから調整インフレ論者のバーナンキに変わり、調整インフレが採られる可能性が上がって来ました。そのせいもあり、本誌連載の山崎元氏も調整インフレの解説を書くまでになっています。以前は調整インフレ論者を音の出るゴキブリ呼ばわりして、毛嫌いしていたのですが。変わり身の早さがエコノミストの身上でしょう。しかし、日銀総裁は二代に渡って、調整インフレを排しています。本来はこいつらが音の出るゴキブリなのですが、こいつらが強い通貨という旧態依然の幻想に囚われている限り、日本の景気回復は依然として微妙な位置にあります。

6 まぐ 12/03 21:06
景気が体感できない原因は二つあります。
1)実質成長率=名目成長率ーインフレ率であり、デフレを脱却してない現状では、ーインフレ率がプラスの数値となり加算されています。従って、いくらが月加算されても、それはデフレ率が加算された上げ底の数値で、本当は微妙な成長になっています。インフレ状態では実質成長率が、デフレ状態では名目成長率が実態に近いのです。
事実、そのことを弁えていた竹中元大臣は「本来の目標は名目成長率2%以上である」と言っていました。まあ、デフレ時に、こと更実質成長率を言い立てるのは一種の情報操作と言えるでしょう。
2)アメリカでは雇用なき好景気と言われていましたが、日本もそのような状態になったのでしょう。(団塊の世代の退職という特殊事情により現在は雇用増)まだら状態に好景気と不景気が日本に同居しています。現在の日本は昔のようには均等に通貨が廻りません。公共事業削減の今、地方は依然として不景気のままです。

5 ヨッシー 12/02 23:49
今の若者は金があっても料亭に行きたいとは思わないと思うが・・・
とりあえず俺は親の宴会に呼ばれたらどこに呼ばれようと行きたかないな。

居酒屋も料亭もどっちも勘弁して欲しい。

4 Mulder 12/02 07:33
今の好景気(?)は、賃下げや非正規雇用を増やすなどして、人件費を低く押さえ込むことによって、企業の収益性が上がったことによるわけですから、下々の者が体感できなくて当たり前。というか、ロードーシャは景気が悪いのだ。

対するロードーシャの方は、労組を「抵抗勢力」だと思い込まされ、団結だのストだの、会社にたてつくことを拒否して忠勤にはげむ。

日本のロードーシャ諸君、団結せよ。

3 木村延夫 12/01 21:31
( *H*)y-~~こんばんわー。

経済のことにはそんなに詳しくは無いボクだけど、年収30万円の人が年収を倍にするのと、年収300万円の人が年収を倍にするのとでは難易度が違うような気がしないでもない今日この頃。

2 WilЬur Wright 12/01 17:54
 バブルがどう、とか。
 難しい事は分かりませんが、景気がいい、悪い、の判断基準が変わってしまったのではないでしょうか?
 経済の仕組み、とかも。

 子供を楽しませよう、とする姿を想像すると、とても温かいものを感じます。
 記者のお父さんは、主体は子供ではなく、お父さん自身だったのではないでしょうか。
 自分が楽しい、あいつも呼んでやろう、という。
 想像の範囲を超えませんが。

 息子さんに、何か話をさせる事は出来ないでしょうかね?
 とても難しい事で、私の頭では思い付きもしませんが … 。

1 全力失笑 12/01 14:06
そもそも景気拡大の規模を長さで比べるのが間違いだと思います。


企業に儲けが出ないと事業も続けていけないわけで、事業が続けていけないと従業員に給料も支払えないわけですわね。国の経済政策が企業を重視する方向に偏るのも仕方ない面もあります。経済理論なんて聞きかじり程度しか知りませんが、誰にも正解がわからない以上うまくいった政策(理論)が良い政策だと思います。一時期流行ったMMT理論も物価の上昇が現実として目に見えている今はなりを潜めているみたいですしね。

金(Gold)だとか土地だとかインフレに強い資産がまた買われていくような状況になるのですかね。あんまり振り幅の大きな波は来てほしくないものです。