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【映画】口数の少ない「キラー」の華麗なおしゃべり 『礼儀なきものたち』

引用元URL:http://www.ohmynews.co.jp/LookKorea.aspx?news_id=000000000374

「独特さ」は見事… 構成はイマイチ
記者名 パク・ヒョンジュン

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 またもや「広報」に懸念を抱かざるを得ない映画が現れた。映画のタイトルは『礼儀なきものたち』。豊かな表情の持ち主のシン・ハギュンが満面に笑みを浮かべ、その横に並んだキャッチフレーズも、なぜか「爽快な映画」を連想させる。

 ポスターには「一発でぶっ飛ばしてやる」と書いてあるが、一発でぶっ飛ぶような映画ではなかった。ポスターの雰囲気は、映画の実際の雰囲気に比べてだいぶ誇張されている。

 映画の性格と異なる宣伝は観客の誤解を招くもとであり、はなはだしくは映画そのものに対する酷評につながりかねない。観客は馬鹿ではない。誇張された宣伝をしなくても、映画さえよければいくらでも注目を集めることはできる。

 『礼儀なきものたち』は、「殺し屋」が主人公だ。主人公「キラー」は、舌足らずによるコンプレックスから、しゃべらない道を選んだ。そのため、映画でのキラーの台詞は独白だ。

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 キラーは、刃物さばきだけは見事な技をもつ。注文どおり誰彼かまわず殺すことに良心を痛めた彼は、先輩のアドバイスを受け、「自分なりのルール」を決めて「礼儀なきものたち」のみを片付けることにする。

 キラーはものが言えないという設定、キャラクターに具体的な名前をつけていないという設定、また、キラーをはじめとする殺し屋はそれぞれ社会で散々つらい思いをした経験をもつという設定がポイントだ。『礼儀なきものたち』はそうした設定を通じて、観客が映画に対して豊富な感想と解釈を持ちえるよう働きかけている。

 キラーが語る「礼儀なきものたち」は、社会を蝕む腐敗した人間がほとんどだ。典型的な演出で映画が作られたなら危険ともいえる設定だが、独特の設定とキャラクターの力が意外な効果を引き出している。

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 一方、『礼儀なきものたち』では、映画『相棒』のように暴力団どうしの抗争に刺身用の包丁が用いられたりする。久しぶりに目にする残酷な乱闘劇だ。やや行き過ぎではないかとも思われるが、これまた独特の構成に支えられ観客の目をくぎ付けにした。

 腐敗した人間を批判する設定は「賭博」だ。悪役は絶対許せない「悪人」として描かなければならないうえ、独特さとしっかりした構成を備えてこそ、観客を納得させることができる。月並みなモラルの講義を受けるため、金と時間を費やして映画館に足を運ぶ観客はほとんどいない。

 『礼儀なきものたち』は、キャラクターと設定の「独特さ」を完成するうえでは、間違いなく成功している。しかし、残念なことに「しっかりとした構成」を備えていない。映画の中盤からキラーに奇妙な家族ができて、彼を覚醒させるという設定まではよかった。問題は、その過程でこの映画が追及している「独特さ」からやや外れ、無理やり、月並みな涙ありの人情劇にすりよったという点だ。

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 しかも、『ガン&トークス』といった、韓国の殺し屋を題材にした映画の図式から完全に抜け切っていないという点もある。キャラクターを見守る視線、特別出演したキム・ミンジュンの「バレエ」は、間違いなく
『ガン&トークス』を連想させる。

 『礼儀なきものたち』は、テーマとドラマを同時に押し進めたことが災いし、後半ではやや脱力感を覚えさせる。「独特さ」さえも、前述したように、従来の映画との「類似した要素」が目につき、力を失っている。にもかかわらず、シン・ハギュン独特の豊かな演技ときめ細かいカメラワークが「共倒れ」を防いでいる。

 シン・ハギュンの豊かな演技は、「涙ありの人情劇」であっても、一部の観客を納得させる力をもつ。彼の切々とした演技のおかげで、「涙ありの人情劇」もある程度はこの映画が語る「礼儀なきものたち」につながる効果を得る。私たちは、俳優が映画を棒に振るケースも見るが、俳優が映画に息を吹き込むケースも見ることができる。

 『礼儀なきものたち』とシン・ハギュンは後者に近い。この映画が大衆に大きく支持されるかどうかは未知数だが、ジャンル映画、または「ブラックユーモア」に傾倒する一部のファンにとっては注目に値するだろう。
2006-08-30 12:37

※引用文中【画像省略】は筆者が附記
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WOWOWで日本語吹替放送していたら見るかもしれない映画です。韓国での封切り後すぐに本家オーマイニュースに記事が投稿され、それを急いで翻訳・掲載したようですが、日本で上映されたのかどうかは知りません。

Gメン75で毎年夏休みに香港でロケをやってた回を観ていた世代なので韓国映画よりは香港映画を観る機会のほうが多かったです。縦に長いのが香港映画です。