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高齢者グループホーム殺人事件判決

引用元URL:http://www.ohmynews.co.jp/News.aspx?news_id=000000002024

福祉現場の人手不足を放置している責任は
下川 悦治
2006-10-03 09:19

9月29日、名古屋高裁金沢支部であったグループホーム「殺人事件」の控訴審判決があった。犯行の背後に法制度の不備、管理体制を指摘した。ファンヒーターを長時間当て続けて死亡させた犯行そのものが許されないものであることは当然のことであるが、何が問題なのか、事件の背景は一般にはほとんど知られていない。

被告は、夜勤専門のパート職員として採用され、無資格のまま週3回、1人で入居者12人の世話をしていたという。どの職場も、非正規職員が増えているが、福祉の現場も急速に増えている。その背景には、高齢者施設は介護保険の報酬が低く抑えられていること、障害者施設では、障害者自立支援法による人件費削減という事情がある。福祉現場の費用のほとんどが人件費である。削減するには、人件費以外には余地がない。削減するには無資格の人を雇うなどして低賃金にしていくことになる。そうすると、職員が集まらなくなるという悪循環が繰り返される。今年の全国老人福祉施設協議会の調査によると、「慢性的不足」が14%、「やや不足気味」が47%で、約6割が人手不足になっている。(読売新聞9月18日他)
福祉の現場では、人材如何によって大きく援助の質が変わる。対人サービスの労働であるゆえに悩みは深刻である。福岡市の宅老所「よりあい」の機関紙では次のように述べている。これは、長崎でのグループホーム火災後、厚生労働省がスプリンクラー(火災を感知すると放水する設備)の設置を指導するという報道があったときのことである。「新聞やテレビは、火災報知器や、スプリンクラーがないこと、夜勤者が一人だということを、問題にしている。確かに、火災報知器や、スプリンクラーは、あるに越したことは無いだろう。よりあいも、火災報知器と避難誘導灯をつけた。よりあいのグループホームは赤字運営であり、300 万円以上するスプリンクラーの取り付けはとうてい無理である。そして、よりあいにいるお年寄りは、ベルがなっても何が起きたかを理解するのは、困難であり、誰一人自力で逃げられない。問題の根本は、非常に単純で明快ではないだろうか。昨年2 月に石川県で起きた虐待死事件も同じだと思う。『ケアの質』さらに『安全の確保』の確かな保障は何より『人手』である。これは小規模施設といわれる宅老所やグループホームだけの問題ではない。50 人や100 人の人達が生活する施設では、3 人~4 人で夜勤をこなしている。それも、パートやアルバイトの人達が担っているのが現実である」
夜勤者が一人というのは、障害者の入所施設でも同じである。そして、無資格者、非正規雇用が増えている。
 グループホーム火災の問題も厚生労働省はスプリンクラーの問題として現場に責任転嫁をした。今回の事件の背景となった制度的な不備についても、厚生労働省は責任を問われないままだとしたら、事件が再発する可能性は残ったままだ。国民の関心が高まらないと解決しない構造的な問題になっている。

オーマイニュース(日本版)より

ほとんどの方は知らないか忘れてしまっているかしていると思います。

この当時から状況が改善されたのかと言われればそこまで大きな変化はないようです。昨年(2021年)の8月の事件。

歳をとって身体が思うように動かなくなると不満もたまりつい周囲に当たることも多くなりがちです。そのような方を相手にする場合、それが頭ではわかっていてもそういうことが重なってくるとイラっとくることも理解はできます。この事件の犯人をかばうわけではありませんが、介護士さんやヘルパーの方のご苦労を知っていると一方的に責めるのも酷かなと思います。