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ラテン音楽の巨匠は日本にいた

引用元URL:http://www.ohmynews.co.jp/News.aspx?news_id=0000000002904

~チューチョ・デ・メヒコ氏と日本のラテン音楽~
三田 典玄
2006-11-08 11:51

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撮影者:三田典玄

 今でも毎日その人の音楽はラテン世界のラジオで流れている。そしてまた、その人の音楽は世界中で高く評価され、日本の演歌グループが「キェン・セラ」として歌い、大ヒットしたこともある。日本の皇室の方々はじめ世界の王室の方々の前での演奏を数多くこなした。暗殺されたケネディ元米国大統領やその後のジョンソン大統領にはホワイトハウスに呼ばれて演奏した。ハリー・ベラフォンテやナット・キング・コールらとの共演もした。団塊の世代と言われている人たちには「懐かしい名前が並んでいる」と感じるだろう。

 私の友人であるチューチョ・デ・メヒコ氏のライブにはキューバの大使をはじめ、日本にいる南米の政府関係者などがやってくる。彼を知ったのは、私の高校時代の先輩であるメキシコ舞踊家・新井有美子さんからの紹介を受けたからだ。彼女は日本人でただ1人、メキシコの国立民族舞踊学院に通い、本格的なメキシコ舞踊を身につけた。いわば日本人でただ1人の本格的なメキシコ舞踊家だ。そして、彼女がメキシコに留学中に出会った「巨匠」がチューチョ氏だった。

 ぼくは新井さんの紹介でチューチョ氏の写真を多く撮らせていただき、本人にもかなり気に入っていただいた。それが友人となるきっかけだった。

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アルパを弾くチューチョ氏
撮影者:三田典玄

 ラテン音楽はどこか日本の演歌に近い節回しがある。そのためか日本でも多くのファンがいる。そして1960年代から70年代にかけて、その頂点に立ったのはメキシコの名グループ「トリオ・デルフィネス」だった。そのリーダーを務めたのがチューチョ・デ・メヒコ氏である。彼の歌唱力とアルパ(ラテン音楽で使われるハープ)の腕前は秀逸であり、ギターの名手でもある。ラテン音楽の天才とうたわれた。

 齢70歳を超えた今も、ラテン音楽を愛する多くの人たちのために歌っている。88年以来はずっと日本にいて、ラテン音楽を日本の多くの人たちに教えている。日本でラテン音楽を本格的にやっているミュージシャンのほとんどが彼に教えを受けていたり影響を受けていたりする。もちろんライブは数多くこなす。バンダイの携帯ゲーム「たまごっち」のテレビCMに出演したりもしている。

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「テピート」店内の様子
撮影者:三田典玄

 ここだけの話だが、彼の日本語はあまりうまくない。しかし、日本と日本人である妻の滝沢久美さんを愛している。だから、彼はずっと日本にいるのだ。

 チューチョ氏の音楽と声を聞いて驚くのは、「とにかく声が若い」ということだ。演奏のテクニックもまたすごい。今でも30代の声を持って、20代の演奏テクニックで歌うのである。懐かしい「キェン・セラ」だけではなく、サイモン&ガーファンクルがヒットさせた「コンドルは飛んでいく」、米国フォークソングの巨匠ピート・シーガーがヒットさせた「グァンタナ・メラ」などなど、ラテン音楽のスタンダードナンバーについて、その作詞や作曲過程、ミュージシャンとのかかわりなどで「チューチョ氏がかかわっていないものはない」と言っても言い過ぎではないと思う。

 彼の教えを受けたミュージシャンは誇張ではなく、みな一様にその「教授方法」を賛美する。厳しいのだが、とにかく練習中から「いい気持ち」にしてくれる。また、「気がつくと演奏の方法がちゃんと身についている」というのだ。「ラテン音楽の『楽しさ』を伝えたい」というチューチョ氏の気持ちがそういう練習の方法に反映しているのだろう。

 音楽は「音を楽しむ」と書く。ラテン音楽は、人の心の底からわきあがる感情を素直に表現し、演奏する人も聞く人も楽しくする。チューチョ氏はそんな「ラテン音楽の権化である」と言ってもいい。

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メキシコ民族舞踊家:新井有美子氏のステージ
撮影者:三田典玄

 チューチョ氏は半年前、東京世田谷区・東北沢に自身の小さな隠れ家のようなライブハウスを開店した。彼のファンの「彼の音楽を目の前で聞きたい」という多くの要望に答えるためだ。週末には米国の大統領も聞いた本物のラテン音楽を演奏する。小さな隠れ家ではおいしい本格的なメキシコ料理を楽しみつつ、聞きに来る人たちでにぎわっている。

 悲しいとき、とても落ち込んでいると、。楽しいときなど、どんなときでも自然に口ずさむ曲を誰でも1曲や2曲は持っているだろう。シンプルなメロディと歌詞なのに、なぜか耳に残り、ついて離れない。そんな名曲がラテン音楽には特に多いように感じる。一部のクラシック音楽のように近寄り難いものではなく、押し付けがましいロック野郎が売らんがために爪弾くバラードでもなく、ラテン音楽は自然に、柔らかに心に響く。歴史を経て、世界に認められた本物の音楽は、ここにもあるのだ。

 付け加えるならば、チューチョ氏に教えを受けた多くの日本のラテン音楽の旗手たちの活躍もこれから楽しみでしょうがない。




【関連リンク】
チューチョ・デ・メヒコ氏のホームページ
チューチョ氏の毎週出演する彼自身のライブハウス&メキシコ料理店「テピート」
新井有美子氏のホームページ

オーマイニュース(日本版)より

※引用文中【画像省略】は筆者が附記


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良い声ですよねぇ。

オマニーを読むようになってから初めて三田氏が『入門C言語』だけの人ではないと知りました。交友関係も広いようで氏の書く記事でへぇ~と新たな事実を知ることも多かったです。音楽とか芸術とか普段あまり関わりのない分野を知るとても良い機会になったと思います。

褒めてるんですよ、皮肉ではなく。