生活保護費の本格削減へ ねなしぐさ はじめ 2022年6月30日 01:55 引用元URL:http://www.ohmynews.co.jp/News.aspx?news_id=000000002453最後のセーフティ・ネットも下川 悦治2006-10-24 06:56【画像省略】写真はイメージ 障害者自立支援法で応益負担(1割負担)への切り換えがすんだ。さらに介護保険制度の中に障害者施策も組み入れるというレールまで敷いた政府は、さらなる節減策として生活保護費基礎額に手をつけようとしているようだ。 その地ならしとして、1つは他の制度との比較をしている。「年金や最低賃金(全国平均時給673 円)より保護費が高い」という言い方がなされているのだ。それを受けてかすでに新聞にも「年金より保護費が高いのはけしからん」という投書が見られるようになった。一般の生活水準との比較ではなく、あえて大変な生活をしている人と比較しているようだ。それによって国民同士の不満がぶつかり合うかたちになりつつある。そんな考え方を可能にする条件が見られる。それは「平成17年度国民生活基礎調査(厚生労働省)」によると、年収200万円未満が18.7%を占めているというところにある。つまり6世帯に1世帯が生活保護基準以下の収入であり、生活の不満は蓄積されているわけだ。 次に「自立」という言葉が使われているという点があげられるだろう。「保護」からの脱却としての就労促進である。就労という誰も文句のない看板を掲げているのも、障害者自立支援法のやり方と似ている。障害者自立支援法では、利用料の負担のために生活保護になる可能性まで想定した制度設計になっている。私が関わる障害者の施設でも、生活保護受給者のなかに老後の生活不安が広がっている。不安の解消のためには自立する条件整備が課題であると考える。 経済協力開発機構(OECD)によると、その国の平均的な世帯所得の半分以下しかない人の比率を示す「相対的貧困率」は、日本は15.3%(2000年)である。これは、加盟国27か国中第5位の高率である。デンマーク、スウェーデンなど北欧諸国の3倍であり、しかも、年々増加する傾向にあるという調査がある(「OECD ワーキング・レポート22」)。これは人口全体で計算したもので、OECDのもう1つのレポートでは18~65歳の労働人口に限定した調査もある。これでは対象の17カ国中、日本は相対的貧困率13.5%で、アメリカに次いで2位となっている(同レポートより)。また、「貯蓄なし世帯」は、2005年には23.8%になっている(「家計の金融資産に関する世論調査」日銀金融広報中央委員会)。言われているように格差社会は数字にも表れていると言えるだろう。その結果として、生活保護世帯の増加になっているわけだ。【受給制限の動き】 10月6日発表した「社会福祉行政業務報告」で生活保護受給世帯が100万世帯を超えたことが強調された(人員は約150万人)。多くのメディアもここだけを強調している。だが、問題がそこだけにあるのではない。 近年では窓口での「水際作戦」と呼ばれる、「生活保護を申請させない動き」が長い期間続いている。これによってか、北九州市では孤立死した人などの問題の他に衝撃的な事件が起こった。「生活保護の受給を北九州市に打ち切られた男が6月、小倉北区役所で割腹自殺を図ろうとして銃刀法違反容疑で現行犯逮捕された事件があり、男は9月22 日、福岡地裁小倉支部の公判で「死ぬしか方法がなかった」と供述した。路頭を迷い続けた男は、市の対応について「自分を犠牲にして、ちゃんとしてもらおうと思ったと話した」(9月23日朝日新聞)という。 厚生労働省は全額税金で負担している生活保護受給者の医療費「医療扶助」について、「08年度から一部自己負担を求める方向で検討に入った」という報道が一部であった。確定はしていないが、想定される問題であろう。生活保護費の50.9%が医療費扶助(平成18年度福祉事務所長会議・厚生労働省資料)であり、政府はこの削減を目標にしている。特に、精神障害者の退院促進については障害者自立支援法と生活保護行政の両面から進めることにしている。精神障害者の入院患者の2割が生活保護であるという。【生活保護の実態はどうなのか】 保護世帯のうち最も多いのは夫婦ともに65歳以上の高齢者世帯で、全体の43.4%、障害者・傷病者世帯37.4%。母子世帯8.7%は前年度より増えている(「社会福祉行政業務報告」)。生活保護を受け始めた理由は、「傷病」が42.8%と最も多く、「収入の減少・喪失」は19.5%であり、病気や失業によるものが依然と大きいことを示している。 生活保護は削減しなければならないほど大きいものなのか。生活保護の受給資格がある世帯のうち、実際に保護を受けている世帯の比率を示すパーセンテージを「捕捉率」という。海外ではドイツで約70%、英国で約80%であるのに、日本では14~20%程度といわれている。学者の推計の範囲ではあるが、高く見積もっても30%を超えず、非常に低いもの思われる(捕捉率などの行政の調査は実施されていない)。先に述べたように年収200万円未満や100万円未満の人が増えている。いま生活保護費基礎額を削減する必要があるのかどうかが問われているのではないだろうか。 日本弁護士連合会はあるべき方向として、次のような提言をしている。◎保護費の基準額切り下げをやめ、基礎年金の引き上げや生活保護法の積極的適用を◎保護申請が権利であることを確認し、申請権を侵害する窓口での運用は直ちに是正を◎苦情相談を受ける第三者機関の設置など、積極的に生存権を保障するための法改正を◎低所得者対象の公的融資制度の整備などセーフティーネットの充実を「日本弁護士連合会第49回人権擁護大会」資料より 生活保護制度は、憲法25条の具現化として日本社会を支えてきた。それについては「朝日訴訟」という有名な裁判があり、憲法の考え方に沿うような制度として定着してきた。その制度が今根本から揺らいでいる気がして憂慮する。オーマイニュース(日本版)より※引用文中【画像省略】は筆者が附記この記事についたコメントはありませんでした。 NPO 朝日訴訟の会 ホームページ asahisosho.or.jp 選挙期間中なので特定名称は書きませんが、存在意義が皆無と思われる政党の主張の中にも一定程度は耳を傾けてもよいものが混じっていることは事実です。その方面に限っては良い仕事もされた実績がありますしね。それを行なう根本の目的が何かは知りませんが。問題提言として良い記事だと思います。 ダウンロード copy #OhmyNewsJapan