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小島信夫さん死去

引用元URL:http://www.ohmynews.co.jp/News.aspx?news_id=0000000002691

時空の軽やかな行き来
I川 M之
2006-10-27 08:51

 小島信夫氏が26日未明に逝去された。91歳。現役最高齢の作家だった。

 晩年は、保坂和志という良き理解者に恵まれ、「無重力言語」(篠田一士)と評されるゆえに難解との理解が定着していた文体が、実は既成の文学概念を超越したきわめて独創的なものなのだと保坂氏の敷衍もあって再認識され、それによる新たな享受がここのところの保坂氏の読者の広がりとともに若い世代にも浸透しつつあった。

 文学史的には、山本健吉氏により命名された第3の新人のひとりとして位置づけられて、その枠組み通り、作品では主に日常生活が取り上げられた。1955年(昭和30年)に「アメリカン・スクール」で芥川賞。94年文化功労者。
 
 66年(昭和41年)に第1回谷崎潤一郎賞を与えられた『抱擁家族』には、妻のアメリカ青年との不倫に葛藤する主人公の内面の起伏が抑揚のほとんどない文章で、しかし緻密に表現され、その乗越えにもかかわらず、妻の乳癌の発現により死別で終幕という、初出から40年経過した今あらためて読み返しても時代の推移に全く風化していない、普遍的な家族像が描かれている。

 今年5月末に出版された『残光』(新潮社)が遺作となった。

 そこには、91歳になった小島信夫氏の交友、考察、愛情等々さまざまな主題が、時空を軽やかに行き来しながら表現されている。そうした融通無碍なありように、氏が文体だけでなく作品の内実においても、ありきたりのどんな図式には納まらない地平で書き続けていたことが鮮明に理解できる一冊である。

 「一方において、ぼくは出版社からまとまった長さの作品を約束させられた。ぼくは今を乗りきるために約束の小説をはじめるよりほかに道はなかった。」(『残光』あとがき242頁)

 90を越えた老齢でなお、書くことに自らの更新の拠り所を求めつづけた見事なくらい文学的で、真摯な姿勢に対し、哀悼の意ともに、あらためて深い敬慕を表したい。

オーマイニュース(日本版)より

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小島信夫氏の作品にはあまり接していませんが『殉教』と『アメリカン・スクール』だけは何かでおすすめされていて読んだ記憶があります。すごく読みづらい作品なのに面白かったという感覚が残っています。なんて言えばいいんだろう。登場人物が変、が一番適切かなぁ。ハマる人にはハマると思いますが、ラノベに慣れた世代だとちょっとつらいかも。