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公共心の喪失が社会をむしばむ

引用元URL:http://www.ohmynews.co.jp/News.aspx?news_id=0000000002759

まず公平な社会を実現し、国民のマナーを取り戻せ
矢本 真人
2006-11-13 06:42

 犯罪や離婚、自殺やいじめなどの「社会病理現象」が毎日のように新聞紙面やテレビのワイドショーをにぎわせている。その背景として、表面には表れにくいが国民の心を深く患わす無気力、無感動、無関心、無責任な「モラトリアム人間」が急増しているということがあげられるのではないかと考える。

 モラトリアム人間については、昭和50年代に「高度な経済水準の達成」や「社会保障制度の成熟化」を成しとげた福祉国家に見られる“先進国病”と分析されたことを思い出す。しかし、現在は社会保障制度も崩壊し、経済では企業は業績を伸ばし好景気が続く。一方で、超低金利は国民に344兆円もの損失を強いているし、高齢者への負担増などを見ると、まともな政治が行なわれていると思える状況ではない。そして政治指導者によるマスコミを通じた「政治的アピール」にも無力感を覚える。

 こういった現在の社会現象に対して、総合的かつ整合性の取れた対策は取られていないと言える。対症療法的な対策では政局は不安定になり、自己主義で無責任な行動が増えてしまう。そうすると社会的規律は低下し犯罪が急増する。

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出典:内閣府「社会意識に関する世論調査」(2006年2月調査)のなかから現在の世相。それぞれ、青線=自己本位である、橙線=無責任の風潮が強い、緑線=ゆとりがない、を表す

 内閣府の「社会意識に関する世論調査(2006年2月調査)」で、現在の世相を“暗いイメージ”ととらえた場合、どのような表現が当てはまるかを調査している。「無責任の風潮が強い」(55.6%)が最も高く前回調査(52.6%)に比べ上昇している。ついで「自分本位である」(47.2%)、「ゆとりがない」(31.6%)、「連帯感に乏しい」(30.5%)、「不安なこと、イライラすることがおおい」(30.3%)となっている。

 自分本位で、無責任な風潮は、「我慢できない」、「相手のことを考えない」、「世間体を考えない」、「こうすればその結果こうなる。だからどうするか」の思考が出来ないことにもなる。当然ながら、他人の権利と矛盾し衝突するなどのいさかいが起きるだろう。だが本来、社会生活を維持するためにはこういったことを調整する必要があるのだ。

 「日本国憲法では、人権相互間の矛盾や衝突を調整する原理として、『公共の福祉』概念があり、実質的には『公平』と『人間性』を尊重する最高の指導理念である」(憲法 有斐閣 昭和39年=1964年)と、ものの本にはある。しかも、公平(公正)であることは行政に対する信頼性で重要な要素になっている。政府に対する一般的信頼は社会的公正感によって強められ、社会集団内において自分が公正に扱われていると感じるかどうかが政府に対する態度を規定するという考え方もある。

 企業優先の税制や一般納税者と比べ国会(地方)議員や国家(地方)公務員の著しくバランスを欠いた特別待遇。一方で低所得者である高齢者の負担増は問題である。また、政府機関の幹部の利権行為や公共事業にからむ利権と不必要な公共事業の強行。業界との癒着構造、議員と公務員の癒着構造、一票の格差に見る議員定数の問題。官公庁をはじめとする情報公開の不十分さなど公平さを欠く事項はあげたらきりがない。

 また、人権やトラブルにからんでは大きな問題も抱えている。その調整あいは対策のために公的機関(いじめ問題では警察と学校、教育委員会や児童相談所など)が連携するわけだが、これがうまく働かない場合がある。彼らにしてみれば「どうやって一線を画するか」が最大の課題になってくる。様子を見ようと放置した結果、あってはならない事態を引き起こすこともある。「最初に判断ミスを起した」と反省するが、事態は一向に改善されているようには思えない。他人の人権と衝突した時の調整機関の役割は大きい。

 行政改革と言いながら、甘い汁ばっかり吸い取っているのが今の官僚機構であるといえるだろう。その一方で人口6975人(世帯数 2063世帯・2006年10月1日現在)の福島県矢祭町は「町村合併をしない宣言」で有名になった。税収減対策に町長と職員が一丸となって取り組み、行政サービスも拡大し、町民に評価されている。自治体の規模の大きさの違いがあると言えばそれまでだが、他の地方自治体、国も税に対する考えが甘い気がする。「公僕」ではなくて、「殿様」感覚では国民の支持はえられないことは自明といえるだろう。

 「ゆとりがない」を挙げた人は男女ともに40歳代で仕事、家計、家庭教育がもっとも大変になってくる時期で、家庭の役割を「家庭の団らんの場」や「休息・安らぎの場」や「親子が共に成長する場」(「国民生活に関する世論調査」内閣府 2005年6月)と考えると、「ゆとりがない」ことは社会にも大きな影響を及ぼすと考えられる。日常生活での「我慢」や「ストレス」を受け止めてくれる場所として家庭の包容力は大切であり、子供の教育の多くを担う家庭の崩壊は社会的に問題が大きいと推測できるだろう。
             
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内閣府「社会意識に関する世論調査」(2006年2月)1社会に対する意識 (3)国民全体の利益か個人の利益か

 同じ内閣府の「社会意識に関する世論調査(2006年2月調査)」で、明るいイメージとして「ゆとりがある」をあげた人が10.2%とされている。こういったところでも格差が出てきているのだろうか。

 しかし、自己本位で無責任の風潮が強いとは言いながら、まだ捨てたものではない結果もあった。同じ調査で、「今後、個人の利益より国民全体の利益を大切にすべきか、国民全体の利益より個人の利益を大切にすべきか」との設問に、「国民全体の利益を大切にすべきだ」と答えた人が44.9%でもっとも高く、前回調査より上昇している。

 小泉改革の負の遺産として格差社会が問題視され、改革の見直しの必要性が叫ばれている。しかしまずやるべきは公平(公正)性の面で目に見える改革をやり、政治に信頼性を取り戻すことであると思う。そうすれば国民は社会のルールを守り、国民としての権利と義務を果たし、連帯感のある国づくりができるかもしれない。安倍首相の目指そうとする「美しい国」はそういう国であって欲しい。

 足尾鉱毒事件で、天皇に直訴してまで被害者を救済しようとした田中正造の「国民監督ヲ怠レハ 治者為盗」の言葉は100年後の今も十分通用すると思う。国民は諦めることなく、しっかり監督(監視)しなければ、為政者(議員や公務員)は盗人同然になることだって考えられるのだ。

オーマイニュース(日本版)より

※引用文中【画像省略】は筆者が附記


この記事についたコメントは3件。

3 K納M和 11/13 22:07
>無気力、無感動、無関心、無責任

それもありますけど、「セクショナリズム」、つまり、小さい範囲で自分勝手に満足している部分が多くなってると思いますけど。

満足している部分においては、別に無気力でも無関心でもないようです。
でも、それ以外の範囲に関してはほぼ完全に無関心なのでしょう。

>行政改革と言いながら、甘い汁ばっかり吸い取っているのが今の官僚機構であるといえるだろう。

言えるのは明らかですが、、だからどうします?

>公平(公正)性の面で目に見える改革

それは「どうする」とは無関係だと思います。なにせ「改革」って
国に何かするか、あるいはさせることを期待する態度なのでは。

国が行うことは思い切り縮小しているのがいまの構造改革でしょう。
国が出来るのはせいぜい
-プライマリバランスを整える
-細々と借金を返す
ぐらいがいいとこです。国への監視はせいぜい上記二つぐらいにして
おく方がましだと思います。

それより、日本社会をどのように設計するかに、どのようにコミットするかのほうが重要なんじゃないかと思います。記者は日本をどのような国にしたいのですか。

国が何かしてくれることを期待する、というのは、もはや「なし」だと
思います。確かに

>著しくバランスを欠いた特別待遇。

などもあるでしょうけど、それはじゃあ国の自浄作用に任せる?
そのほうがむしろ無責任でしょう。記者はどうしたいのですか。

ちなみに、ほんとに格差をどうにかできるのであれば、どーぞ立候補を。
まぁ、自分がその立場に立って格差を享受することになるでしょうけど。
どっかの知事みたいに。

2 yonemura 11/13 11:54
ちなみに、「モラトリアム人間」とは、普通はあなたの言っているように
>無気力、無感動、無関心、無責任
な人間を指すのではなく、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A2%E3%83%A9%E3%83%88%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%A0
>例えばニートのように社会的に認められた期間を徒過したにもかかわらず猶予を求める状態を指して用いられることが多い。

ので知っておいたほうがいいですよ。
とりあえず社会への不満を、適当にレッテル貼りをした相手にぶつけるのはプロ市民のデフォルトなんでしょうか?

1 yonemura 11/13 11:49
「離婚は社会病理現象だ!」と、フェミニズム団体に投稿するといいですよw


じゃ、どうすればいいの?との問いには、できることからコツコツと解決していくしかない、と答えるしかないですね。公金を不正流用するだとかを厳しく監視する市民オンブズマンの役割はますます高まりそうです

警察の裏金問題にするどく切り込んだり、自治体内部の公金不正流用を指摘したりと大変精力的に活動されている市民オンブズマンの中の方たちもいろいろなしがらみに捕らわれて大変そうですね。そういえば自治体から事業を委託されている先の団体についてはほとんど調査はしていない印象ですね。

ま、そもそも行政に対する監視制度ですから、対象を広げるのも人員的にちょっと無理筋な気もしないでもないかな。

いろいろなしがらみに捕らわれているといえば、この方もそうですね。

お~こわいこわいw