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カレーと中学生と空自司令官~東京防災訓練

引用元URL:http://www.ohmynews.co.jp/News.aspx?news_id=000000000591

荒川河川敷からリポート(3)
記者名 三宅勝久

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自衛隊や米軍のほか警視庁や消防庁など、さまざまなヘリが参加した。
撮影者:堀 信

 今回の防災訓練でもっとも観客の目を引いたのは自衛隊と2人のVIPだ。

 子どもたちが興奮して言う。

 「すごい! 自衛隊の自動車をこんなに近くで見たのは初めて!」

 消防車の放水訓練には無関心の観客も、自衛隊の装甲車が派手なエンジン音をたてて通ったとたん、一斉に熱い視線が注がれる。自衛隊側も、今回の訓練を存在感アピールの絶好の機会と考えているようだ。航空自衛隊航空総隊司令官の田母神(たもがみ)俊雄空将が言う。

 「日本はいつ災害が起きるかわからない国。こういうイベントを通じて、いざという時は対処が必要なんだと理解してもらいたい。自衛隊が何をできるのか、役割をアピールしたい。(災害派遣などで自治体に)自衛隊を使ってほしい」

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ボランティアの中学生と田母神司令官。
撮影者:三宅勝久

 インタビューする横からカレーの匂いが漂う。トラックの前で若い自衛官がカレーの大鍋をかき混ぜている。濃緑のテントの中で隊員に混じって配膳しているのは、体操服の少年・少女だ。なぜ、子どもが自衛官と一緒に働いているのか?

 「区から、ボランティアに参加してほしいと依頼があり、自衛隊の炊き出しを手伝うことになったんです」

 足立区立第四中学校の和田雅光校長が説明する。1年生全員267人が訓練会場を訪れ、うち約40人が自衛隊や別の炊き出しのボランティアに参加したという。

 杓子を手にカレーをつぎ分ける生徒たちを見守りながら、幹部隊員は「都から『ボランティアの子どもがきます』とだけ聞いていました。よく働いてくれますよ」。別の隊員も「日ごろの訓練は厳しいですが、今日はとても楽で楽しい。こんなのは初めてです。鍋洗いもやってくれるし」とうれしそうだ。

 「面白い。楽しい」「イスをすすめてくれた。自衛隊の人は優しい」と子どもたちは口々に言う。“自衛隊初体験”の印象は上々だ。

 「記者さんも食べていってください!」

 生徒たちに勧められて食べたカレーは、甘すぎず、辛すぎず、悪くない味。仕事に馴れて余裕が出てきた子どもたちに、隊員が気遣って水を出す。

 「自衛隊と言えば海軍カレーが有名ですけどね。ウチのもおいしいでしょう」

 子どもたちと並んで写真を撮った田母神空将が話す。

 「ほほえましい。ぜひ我が部隊に入ってほしいですね。子どもは無限の可能性を持っている。教育の仕方ですぐれた大人になりますから」

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陸上自衛隊のイベントをPRする広報担当者。
撮影者:三宅勝久

 実は訓練に先立つ8月31日、同じ荒川周辺で自衛隊だけの仮設橋設置の訓練が行われた。そのときは、今日のような雰囲気はなかった。高速道路やビルを間近に臨む場所に、テント数百張りが出現、装甲車やトラック、救護車など自衛隊車両数百台が土ぼこりをあげて走り回るさまは、まるで映画のロケか戦地。装甲車の後部ハッチを開けて休息する自衛官にカメラを向けたとたん、「車の内部は撮影禁止ですから」と緊い表情で制止した。警務隊員の姿も多数みられた。

 一夜明けた自衛隊は「優しい自衛隊」。自衛官が観客に音楽祭の案内チラシを配って歩くサービスぶりだ。一方、本部テント周辺は、終始、多数の制服、私服警官、SPがにらみをきかす緊迫ぶり。この日の主役、小泉純一郎首相と石原慎太郎都知事。額賀防衛庁長官、竹中総務大臣など政府高官、陸海空の幕僚長、そして在日米軍のブルース・ライト司令官らが列席しているためだ。

 一般観客は本部テントの数十メートル手前から立ち入り禁止。小泉・石原“ご両人”を撮影しようとするマスコミ関係者ですら、縄張りによって20メートル以上近づくことはご法度だ。土手の斜面に中腰でふんばりながら縄張りロープの端を握るのは都の職員。ずぶ濡れだ。よい映像を撮ろうと近づこうものならたちまち警官が静止する。

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訓練の様子を見る小泉首相と石原都知事。
撮影者:三宅勝久

 午後1時半、訓練は終わるころようやく雨は小降りになってきた。濡れねずみになった我々を前に小泉首相が講評を述べる。

 「かくも大規模な訓練ご苦労さまでした。備えあれば憂いなし……この気持ちが大事です」

 続いて登壇したのは石原慎太郎都知事。都の要請により初めて訓練に参加した在日米軍と、韓国ソウルのレスキュー隊に対して謝辞を述べた。

 さて今回の防災訓練にいったいどれくらいの税金が遣われたのか。東京都の広報担当者は、「担当者と連絡がつきません。申し訳ありませんが来週またご連絡ください」と疲労困憊した様子で答えた。
2006-09-01 20:33

※引用文中【画像省略】は筆者が附記
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この記事を読んだ後にあらためて以下の佐々木俊尚氏のエントリを読んでいただけると、佐々木氏が何を言いたかったのかがはっきりと理解できると思います。

この記事の取材に日本版オーマイニュース編集部からどなたが同行されたのかにも注目すると良いでしょう。

この記事についたコメントは76件。引用したこの記事を見て(保守的かリベラル寄りは別として)特に違和感を感じなかった方に向けて以下のコメントを引用しておきます。

65 ぶっち 09/03 22:46

>ぶっちさん、2回じゃなくて3回投稿されてますよ。

 その通りです。余計な発言が2回というつもりで書きましたが、言葉足らずだった点はお詫びします。編集部には削除依頼をお願いしました。

>また、カレーライスに対する考察が浅すぎるのではないかと懸念致します。

 発言をよく読まれていないようなので、もう少し説明ししましょう。

 防災訓練はできるだけ実際に近い形で行った方が効果的です。そのためには、被災直後の、温食が提供できる前の環境を体験してもらった方がよいでしょう。ところが、自衛隊は訓練の参加者に喜んでもらおうと美味しいカレーライスを作ってしまったのです。これは参加者をお客さん扱いしているに他ならなりません。

 また、肉や野菜を入れた汁物の方が大量に簡単に作れます。汁物は子供から大人まで食べられますが、カレーライスは子供や老人には辛すぎて食べられない場合があると考えられます。災害のショックが強い時に、辛いものに食欲は湧かないでしょう。

 実際に、どんなメニューが好評だったかという資料は持ち合わせていませんが、神綱病院の記録によると、ガスが使えない時はレトルト食品のカレーを使ったようです。とりあえず暖かい食事が出せるようになると、クリームシチュー・ボルシチ・カレーライス・柏汁・けんちん汁・のっぺい汁・みそ汁・カキのチャウダー・白菜のスープ・さつま汁等を出すようになりますが、プロパンガスが使えるようになると、カレーライスを出す日はクリームシチューに変更したとあります(http://www.lib.kobe-u.ac.jp/html/kos/10-26/102_067.html)。炊き出しでカレーライスを作った避難所もあったでしょうが、病院がそれを避けたのには何かの理由があるのだと考えます。

 被災経験のある方のコメントを求めます。