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ベルリンのオペラの臆病?

引用元URL:http://www.ohmynews.co.jp/News.aspx?news_id=0000000002651

イスラム過激主義者を恐れて、モーツァルトの「イドメネオ」の上演中止
ミルジャ・マレツキー
2006-10-27 08:10

 ベルリンの歌劇場「ドイツオペラ」が、11月に予定していたモーツアルトのオペラ『イドメネオ』の上演を中止した。ドイツ警察当局が重大な危険があると報告していたためだ。

 このオペラは、自分が仕えるのは神か人間かで悩むギリシャの王イドメネオの物語だ。最終幕では、仏陀やイスラム教の預言者ムハンマドなどの切り落とされた頭が登場する。ドイツオペラ劇場のクリステン・ハームス支配人は、観客だけでなく出演する俳優の危険も大きすぎると言う。

 『イドメネオ』の初演は1781年だった。クレタ島の王イドメネオが、トロイ戦争後の帰路、海難に遭う。生き残るためには、7つの海を支配する海神ポセイドンと取引をせざるを得なくなる。王は、陸に上がって初めて出会う人間をいけにえにささげることをポセイドンに約束した。ところが、島に戻って最初に出会ったのは息子のイダマンテだった。イドメネオ王はポセイドンとの約束を破り、離島に追放することにする。

 イダマンテと連れ合いのエレットラが乗り込む予定だった船は、港を離れる前に海の怪物に攻撃されるが、イドメネオ王は怪物を征伐することに成功する。これを快く思わなかった海神ポセイドンは、イダマンテの命をとらない条件として、王位を息子に譲るよう王に迫る。オペラは、王が3つの宗教の創始者の切り取られた頭部をポセイドンの頭部の隣に並べる場面で終わる。

 このオペラは2003年にドイツオペラ劇場で上演され、再演が予定されていた。ハームス支配人は、最近、政治的な問題が起きているこの時に再演するのはリスクが大きすぎると考えた。

 今年初め、多くのイスラム教徒を怒らせるような預言者ムハンマドの漫画をめぐって、抗議が起きた。ローマ法王ベネディクト16世の講演も最近、議論を引き起こした。どちらの場合もイスラム諸国で大きな抗議運動を引き起こした。ドイツの国旗が焼かれたりもした(訳注:法王はドイツ人)。

 『イドメネオ』を秋の演目からはずすことを決めると、ドイツ国内ではメディアや政治家から広範な抗議が巻き起こった。

 メルケル首相もドイツ紙『ノイエ・プレセ』に対し、「中止は間違いであると思う。イスラム教の名の下で暴力を使いたがる人々と戦うためには、自己検閲は助けにはならない」と憂慮を表明した。「暴力を使おうとする過激主義者たちを怖がって、どんどん譲歩していくようにならないために注意すべきだ」。

 ババリア州ギュンター・ベックスタイン内相は、中止はイスラム教過激主義者による扇動が言論や表現の自由を奪っていること示す悲しい兆候だ、と述べた。

 緑の党のクローディア・ロス党首は、ニュース番組の中で、統合は寛容の概念に基づいており、寛容は自分の信念とは異なる考え方を許すことを意味すると思う、と語った。「この決定は、臆病さの兆候である」。

 『イドメネオ』の筋立ては、イスラム教に対する否定的な見方をしていないし、むしろ世界のすべての宗教を同じように批判している。この点から、ドイツの政治家だけでなくほかの国の政治家も、上演中止を強く批判しているのは理解できる。問題の焦点は、西欧社会がイスラム世界の過激主義によって脅されている状態が果たしていいことなのだろうか。また、これは自己検閲につながっていくべきなのかどうかということである。

オーマイニュース英語版から〔9月28日掲載〕)

オーマイニュース(日本版)より

この記事についたコメントは2件。

2 madoma 10/30 09:35
>>治らないなどとホントのことを言ってはならない偽善と建前があるのです。

 本質的に治らない病気というのはたくさんあります。肝炎やHIV、白血病も骨髄移植に成功したとして、様々な障害と治療を続けながら生きてゆくことになります。
 言ってはいけないことはありません。しかし言うのであれば、病気の当事者達ときちんと向き合うべきです。

 治らないのであれば死ぬべきだ、などとは誰からも言われたくないですね。
 極端に言えば、ですが。

 記事から受ける印象は、政治的対立で結局苦しむのはほとんど対立とは無関係な一般人であるということだと思います。

 イスラムを愚弄する者は死ぬべきだ。
 で、殺されそうになるのが役者。

 どうしたっておかしなことになっていると言わざるを得ないでしょう。
 おおよそ自主規制の反対は、既成事実であるとして、どちらも昔からあったものです。ともに善と偽善のにおいがします。

 危ない橋を渡りたがらないマスメディアというのは困ったものですが、現状ねばり強くしつこく誠実に訴えてゆくしかないのではないでしょうか。

1 Ronnie 10/28 00:42
先々週、N.Y.のMETオペラで「イドメネオ」を観てきました。
オーソドックスな演出で政治的意図などありませんでした。

先ほどのニュース23で、日本の表現の自由は世界50位だとか・・・。
この国は島国の村社会ですから、世間に逆らうと生きていくことができません。
本音を言ってはならないのです。
さくらちゃん事件では、死ぬ死ぬ詐欺だと批判が渦巻いてますが、ネット以外の
マスメディアはその偽善性をとりあげようとはしません。
治らないなどとホントのことを言ってはならない偽善と建前があるのです。

憲法で保証されている筈の言論の自由は、自主規制しなきゃならないのです。


住み分けと多様性は両立するものだと思いますけどねぇ。『ウクライナ上空に飛来した多数のUFO』をScience誌のCommentaryで論ずるのは場違いだろうというだけのことなのに、それを理解できていない人もちらほら見られますね。TOCANAでやったほうが面白いコメントも出てくるでしょうにw