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いじめられたら、やめる ~鈴木邦男コラム~

引用元URL:http://www.ohmynews.co.jp/OhmyColumn.aspx?news_id=000000002910

鈴木邦男
2006-11-07 07:19

 高校3年の卒業間際だった。教師を殴って退学になった。「やっぱり、そのころから狂暴だったんだろう。だから右翼になったんだろう」と思われるかもしれないが、違う。逆なのだ。いわば、「窮鼠(きゅうそ)猫を噛む」状況だった。追いつめられ、思いつめての暴発だった。

 でも退学程度で済んでよかった。だって普段は自衛用に「飛び出しナイフ」をポケットに忍ばせていたからだ。学校は<戦場>だった。同級生や教師のいじめにあっていたし、ギリギリのときは刺し殺そうと悲壮な覚悟をしていた。そうならなくてよかった。

 中学校でもいじめられた。転校した学校はとんでもない不良中学で、不良が集団で暴れ回り、生徒も教師も震え上がり、何もできない。嫌だったし、学校なんか行きたくなかった。でも、行った。なぜだろう? 今から考えると、ただ単に、「知らなかった」のだ。「自殺」という選択肢を知らなかったし、なかったのだ。学校に行くのは当然と思っていたし、そこを我慢しないと、次の「自由」はないと思っていた。

 もしかしたら、遠く離れた地方では生徒の自殺はあったのかもしれない。しかし、伝わってこない。テレビのワイドショーもないし、センセーショナルな週刊誌もない。誰も騒ぎ立てない。だからないのと同じだ。「情報」がない時代もいいものだ。ただ、「学校をやめる」という選択肢は教えてほしかった。そのころだって大検(現・高卒認定)はあったのだし。でも誰も教えてくれなかった。

 「いじめで自殺」という新聞記事を初めて読んだのは何年前だったろう。そのときは驚いた。変な表現だが、「こんな手があったのか」と思った。特に、遺書を残し、「抗議の自殺」と書き立てられたときだ。こんな抗議のやり方があったのか。チクショウ。知ってたら僕もやったのにと思った。でも本当は、知らなくてよかったのだ。

 自殺のサインはわかりにくい。親に心配をかけまいと、明るく振る舞うからだ。いじらしい。優しいし、気を遣いすぎる。いっそ、「エゴイストになれ!」と言いたい。他人に気を遣うな。公共心も愛国心も必要ない。自分のことだけを考えろ! いじめられたら、そんな学校、すぐにやめてしまえ。やめたって、いくらでも方法はある。やめてから相談してもいい。

 学校でも、「やめる自由」を大声で言うべきだ。逆説的かもしれないが、それが子どもの命を守る。「自殺するな!」と言っているだけでは何の解決にもならない。「我慢して通いながら相談してくれ」と言っても無理だ。教師にそんな力はない。いじめられたら、やめる。これは生徒の「自衛の権利」だ。少子化日本にあって、子どもは生きてるだけで「愛国者」だ。「国家の防衛」や核議論より前に、子どもの「生命の防衛」だ。


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すずき・くにお
1943年、福島県生まれ。67年、早稲田大学政治経済学部卒業。70~73年、産経新聞社に勤務。学生時代から右翼・民族派運動に飛び込み、72年に一水会を創設、「新右翼」の代表的存在となる。現在は同会顧問。『新右翼 民族派の歴史と現在』(彩流社)、『夕刻のコペルニクス』(扶桑社)など著書多数。近著は『愛国者は信用できるか』(講談社現代新書)
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オーマイニュース(日本版)より

この記事についたコメントは18件。

18 ある晴れた日に 11/14 18:09
「いじめられたら、やめる」というタイトルに惹かれて読みました。私もそう思うからです。

子供がいじめられるために学校に行かなくてもすむように、義務教育を受けなくても高校を卒業しなくても、それに相当する教育を受ける(むしろ自分で奪いとるように学ぶ)方策を準備してやるのが、大人のするべきことではないでしょうか。

何が何でも学校に行かなくてはならない、という強迫観念から子供と親を解放するのがいいと思います。そのうちにいじめがはびこる学校には生徒がいなくなり、自然消滅するでしょう。

アメリカでは親が長期海外旅行などする際には、それについて行く子供は通信教育で勉強をすればよい、というシステムもあるそうです。日本でもそのようなシステムで義務教育ができるようになれば、よろこんで参入する教育業者はたくさんあると思いますよ。これこそ教育の「規制緩和」ですよね。

この記事を書いた鈴木さんが「新右翼の代表的存在」と紹介されていますが、なぜ鈴木さんはそのような「存在」になられたのですか?それはいじめを受けたことと何か関係がありますか?それとも他に理由があるのですか?

17 自称左翼 11/12 13:34
確かに、生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされている子供には、愛国心や公共心などより、生き抜くことのほうがはるかに重要でしょうし、教育基本法改正などより、いかに子供を死なせないかのほうがはるかに重要でしょう。
私は、当然鈴木さんを支持します。

16 まぐ 11/10 23:50
人間は、時として生か死かの修羅場を踏まざるおえない時がある。
未熟な人間はその時、つまらない枠組みに囚われて、己の命を立てる事を忘れてしまう。
そんな時は全てを投げ捨てて逃げるのが正しい。
場数を踏み、投げ捨てた枠組みを捉え直し、ようやく人は己の命を立てる事ができるようになる。
巷に溢れた自称、右翼のなんと打算深く、貧弱な精神である事か。
私は鈴木さんを断固、支持する。
同郷のよしみもあるけどね。

15 泉州太郎 11/09 16:27
行かなくていい、っていうのはそうなんでしょうが・・・
行きたくない子はとっくに不登校になったり、さぼったりしてるのかも。
それでもやっぱり学校に行きたい、って子供は少なくないんじゃないだろうか。

私の妻の高校時代の同級生はクラブ内でのいじめが原因で自殺したそうです。
その子は小学生から打ち込んでたバスケが大好きだったそうで、チームメイトからのいじめでそれを奪われたことの絶望で死を選んだ(と思われる)。

手を放せば楽になれる、って局面は人生の中で結構多い。
けれど同時に簡単に捨てきれないものもあるとおもう。
思春期ならばなおさら。
(うまくかけなくてすいません)

14 まさと 11/09 05:16
 わたしもそうおもうな~。いかなくていいのだよ、いやなら。イジメにいくくらいならキミも行くな! そしていじめられに行くのもよせ! 
教師は、学校はだいじなことをおしえわすれてます。

13 WilЬur Wright 11/08 21:47
>ギリギリのときは刺し殺そうと悲壮な覚悟をしていた。

 「殺してやろうか」 と思って、でも、ず~っと考えてると、
 「あんなヤツの為に、自分は一生 『人殺し』 と言われるのか」 と思ったり。

 学生時代の悩みっていうのも、その時には、本人にとっては、極めて真剣なモノです。
 「あんなヤツ殺してやる」 と思った事のある人は沢山いて、でも、実際にはやらない。

 結果的にやらなければいいんだ、と思いますけれどね。

 精神衛生上、問題はあると思いますが。

12 風の音 11/08 12:26
議論の精緻さはさておき、現実問題として、今はこれが最善だと思います。
「国のため」云々を語れる状況ではない現在の教育問題から目をそらさず、議論に加わる筆者の姿勢には、政治思想の如何に関わらず、学ぶべき点があると思います。

11 ブーゲンビリア 11/08 10:44
こどもが自殺する国で、サヨクもウヨクもないでしょう。
自殺するくらいなら、ウヨクでもサヨクでもいいから生きてください。

生きてるだけで、いいなあと思える季節もきっとやってきますからね。
がんばらない勇気を持って、こんな手抜きな記事を書けばいいんですよね。
ありがとうございました。

10 HIKO 11/08 03:39
"ギリギリのときは刺し殺そう"にはそのままは同意しかねます・・
その覚悟があるのであれば良き師匠の下、格闘技でも何でも別の
事にトライできると思います。ただ、本人がそれに気づく事は
必要ですが・・。
しかし
>自殺のサインはわかりにくい。親に心配をかけまいと、
>明るく振る舞うからだ。いじらしい。優しいし、気を遣いすぎる。
は何かとても気持ちが伝わってきます。

中高で楽しい思いができればよいですが、苦しい思いしかないのであれば
やめてしまって良いと私も思います。
学校は通う間は自分の世界そのものですが離れてみればそれ程自分を
自殺にまで追い込むべき対象ではないと思います。
大検とったり例えば趣味、例えばパソコンが好きならばITの鬼になり
将来仕事で見返す為のスタートを早くきってしまった方が良いと思います。
若いうちに3、4年アジア放浪したって良いと思います
(旅先での出会いも色々あると思いますよ)。

教師、思い返せばちゃらんぽらん集団があっというまに律儀な集団となった
立派な先生もいましたが(人徳で制された感じでした)、反面、
生徒に苛められる事を恐れて見てみぬふりする教師、生徒に振られて自分が
自殺しようとしたなさけない教師、頼れない教師も沢山いたと思います。

運悪くヤクザのような生徒に囲まれ頼りない教師に囲まれてしまった
可哀想な方々は大検や他の世界に目を向け、退学も選択肢に入れるべきと
思います。確かに退学はビハインドな面もあるでしょうが、要は退学に
よって、心の平穏を得て、新たな何かを得るためのスタートを切り、
後々あの時退学して良かったと思えればよい事と思います。

9 世界平和 11/07 21:55
 言われてみれば、いじめられっ子の顔をしてるような気がする。

8 X 11/07 21:51
いじめ問題については、被害者視点も大事だが「加害者にもっと重い制裁(刑事罰など)を与えるべき」という論調の記事が読みたいところ。

7 X 11/07 21:49
>公共心も愛国心も必要ない
>子どもは生きてるだけで「愛国者」だ
>「国家の防衛」や核議論より前に、子どもの「生命の防衛」
上記以外同意します。もし上記が筆者がもっとも同意して欲しい部分であれば、もっと巧妙な文章に変えるとよろしい。

>教師を殴って退学になった。
これは状況が良く分からないので同意も否定もしません。

しかし看板記者の鈴木・斉藤両氏の記事にもほとんどコメントがつかなくなりましたね。これはこれで寂しい限り。

6 Mulder 11/07 18:46
いいんですか、そんな「サヨク」的なことを書いて。。。

5 楽園 11/07 15:27
概ね同意。

自殺の瀬戸際まで追い込まれたら、「他人に気を遣うな。公共心も愛国心も必要ない」と言うのももっともだと思う。

それよりも、学校は「虐めは当然の如く存在する」事を前提に、「虐めへの対処法」を子供に対して本音で教えるべきだ。

カリキュラムに加えるべきだ。

4 水草 11/07 13:50
いじめに関しては概ね同意します。
しかし、無理矢理の力技で『愛国心』『国家の防衛』『核議論』の否定を文章中に忍ばせる。こんなやり方はかっこ悪いし卑怯です。

3 yonemura 11/07 10:33
まあ、そういうこともあるかもね。
愛国とは何の関係もないけど。

2 スナギモ 11/07 09:35
弱くてダメな人間に他人を救うことは無理だ、ということがわかりました。

1 哀独者 11/07 08:59
>他人に気を遣うな。公共心も愛国心も必要ない。自分のことだけを考えろ!

どさくさにまぎれてとんでもない事を。
他人に気をつかわず、公共心も無く、自分のことだけ考えてたら
辞めずに刺してしまうんじゃないですか?

ナイフを隠し持ち、人を殴れる人間と
自殺するような人間は全く別ですよ。


誰でも戦えるわけでもなし、いつでも逃げられる状況にいるわけでもない。結局いじめに遭っている状況に気づいて手を引っ張ってその場から離れさせることができる人がいないとダメでしょう。担任が気づかず、いじめられている子に友人がいないなら最後は親です。全部の責任を親に負わせるのも酷ですが、最後の砦が親であることには変わりないですね。


ヒャッハー!落ち武者狩りの時間が来たぜ!てなとこかなw 楽しそうで何よりです。わたしも参加したいけど別件で張り付いてることがあるのでチラ見くらいかな。