「愛育病院」ってどんなとこ?
引用元URL:http://www.ohmynews.co.jp/HotIssue.aspx?news_id=000000000831
“ブランド病院”、その中身は 【特集 マイライフ・マイチョイス Part1】
記者名 宮崎 敦子
このところ、女性誌で“ブランド病院”として取り上げられることも多い東京・広尾の愛育病院。実際に愛育病院で出産した経験のある女性に、実情を尋ねた。
【画像省略】
愛育病院
撮影者:宮崎敦子
「紀子さまの帝王切開を愛育病院で、って聞いて驚きました。だって愛育病院は、とにかく『自然分娩』と『母乳育児』をものすごく強く押し出しているから。妊婦がもらう冊子の1ページ目に書いてあることがここの病院のすべてっていう感じ」
愛育病院での分娩を決めると、「愛育病院・[マタニティノート]」という冊子が渡される。妊娠中の体操から食事メニュー、分娩の経過についての説明やリラックス方法、授乳の仕方に至るまで、厚さ8ミリのボリューム感で詳しく説明する。その冊子を開いたページには、「産婦人科部長」と肩書きが記された文章が載っているが、冒頭部分にはこうある。
【愛育病院のお産の基本は“自然分娩”です。“産みの苦しみ”は母親と産まれてくる子どもにとって試練でもあります。この試練に耐え、新しい生命の誕生、その喜びを夫婦で分かち合うように神様が人類を造られたと私は思っています】
【画像省略】
愛育病院の[マタニティノート]や妊娠中のレシピ集など
撮影者:宮崎敦子
「自然分娩、自然分娩とあまりにも言っているから、『無痛分娩がいい』『私は和痛がいい』とはなかなか言い出せない雰囲気がありますね。料金表を見ても、無痛分娩のための麻酔については記載があるけれど、帝王切開の項目はリストに載っていないんです。手術室は1室しかないし、私が見たときはいつも真っ暗だった。あの部屋で紀子さまの手術もするということだと思いますけれど。帝王切開のイメージは薄い病院だと私は思いますし、やっぱりあそこが選ばれたのは病院の成り立ちのほうがより影響したのではないでしょうか」
愛育病院のウェブサイトを見ると、【愛育病院は昭和9年3月13日、昭和天皇より皇太子殿下(現天皇陛下)御誕生を祝しての御下賜金をもとに、当時ほとんど顧みられなかった母子の保健と福祉の事業のために創立された恩賜財団母子愛育会が出発点です】とある。皇室とのつながりは深い。もっとも、くだんの冊子にも、【沢山の人の中には医学的な理由で“自然分娩”ができない人もいます。お産の途中で母親が胎児に危険が迫ることもあります。私たちは、その危険への対応が不十分だった時代の悲劇を学んできました。愛育病院では“自然分娩”を大切にしつつ、母児の安全を守る最大限の努力をしています】との記述もある。自然分娩以外を排除しているというわけではないようだ。
「母乳育児についても懇切丁寧な指導がありました。“がんばればできない人はいない!がんばりましょう!”っていう感じで、母乳がよく出るようにマッサージする方法も手厚く教えてもらいます。それでも私が産んだとき、一緒に入院していたお母さんたちのうち1割ぐらいは母乳が出なかったんですけど、中には罪悪感を感じて悩んでしまう人もいましたね」
健診の態勢はどのようなものだろうか。
「一番困ったのは、受付と毎回の尿検査や体重・血圧の計測のために、1階と2階を行ったり来たりしなければいけないこと。動線を考えない配置になっていて不便なんです。それから愛育は30分に6人分の予約を取るんです。例えば10時に予約した6人は、全員が10時に集合。その中で一番早かった人が10時からの診察で、次に早かった人は10時5分から。最後の方だと時間通りに進んでも10時半近くになるし、だいたい一人5分では終わらないから、病院に足を踏み入れてから会計を済ませて出るまで2時間ぐらいかかってしまう。それから診察室が、仕切りと扉のある更衣室みたいな横並びのスペースで、隣の部屋の声がまる聞こえなんです。胎児の心音も待合室にまで聞こえるし、話が筒抜けになっちゃう感じ」
気になる費用の方はいかほどか。
「分娩費用の基本は50万円。一般室使用の場合、と但し書きがつくんですけど、1部屋に4人入れる一般室は2部屋しかなくて、そこに入れないと個室代を払うことになります。出産したときの空き状況で入れる部屋は決まるけれど、私は個室Bという1日2万円の部屋になって、総額だと70万円ぐらいかかったかなあ」
リクルートが2歳以下の第1子を持つ母親をサンプリング調査した「出産・育児トレンド調査2003」によると、分娩・入院費用の平均は約38.7万円。それに比べると割高だが、一般室料金ならば“ブランド病院”と聞いて想像するほどの値段の高さではない。
「山王病院(東京・赤坂)は分娩費用だけで100万。あそこに比べたら半額ですよ。とはいえ、山王は愛育と雰囲気もだいぶ違ってゴージャス感たっぷり。あちらでも健診を受けたことがあるけれど、ロビーにはグランドピアノがあるし、吹き抜けになっていて優雅な感じだし、設備もお金がかかっていそう。ウェブサイトに『入院病室はホテル仕様の豪華な個室で快適な療養を送ることができます』って書いてあるぐらいですから、ゴージャスです。『山王メディカルクラブ』っていうV.I.P組織みたいな会員制クラブもあって、専用のエレベーターがあるみたいだし、そういう人たちはカルテも緑色で、順番待ちもないんです。クラブに入っていない人でも、愛育みたいな予約システムではなく、10分ごとに区切られた自分の予約時間に行けばいいから、健診のために病院で費やす時間はずっと少なくて済むし、健診の部屋もちゃんとドアがついた個室になっていて、声が聞こえるなんていうことはありません。あと、些細なことですけど駐車場代も高いんですよ。愛育は1時間200円なのに、山王は30分300円もするんです」
経験者から見て、愛育病院の人気の秘密はどこにあるのだろうか。
「何から何までケアが丁寧だし、先生も信頼できるし、助産師さんも看護師さんもすごく協力的。安心感がありますね。産後に入院しているときも、24時間態勢で授乳のヘルプをしてくれます。お産のときにも、生まれる瞬間まで心音を真剣にチェックしてくれた看護師さんとか、私の陣痛が長引いて寝不足になり、お産の最中に足がつったのを2人がかりでマッサージしてくれた看護師さんとか、何人もの看護師さんが細心の注意を払い、親身になって接してくれたのがすごく伝わってきて、心がこもったいいお産ができたなと感じました。でも中には『愛育で産むとお受験で有利』という理由で選ぶという人もいるみたいですよ。本当に有利なのか分からないですけれど、最善を尽くすということなんでしょうか。特に、併設の愛育幼稚園に子どもを入れたいという人は愛育で産んで愛育の小児科に通わせるケースが多いようですね」
人気病院ならではの問題点はないだろうか。
「混んでいるというのは宿命ですね。陣痛が来ても間隔が縮まらなかった人が、『家が近いから』と何度も自宅に戻されたという話も聞きました。逆に人気のあまりということなのか、けっこう遠くから来ている人もいました。その人の自由だとは思うんですが、ひとごとですけれど心配になりますね。お産が急に進んだら間に合わないなんてことあるんじゃないかなって」
【画像省略】
愛育病院前には6日、マスコミが詰めかけた
撮影者:宮崎敦子
総合的に考えて、オススメ?
「『自然分娩で母乳育児をしたい!』という人には本当にオススメ。違う選択をしたい人には向いていないかなと思いますが、アットホームな病院ですよ。お食事も全般的にお味がいいし、特にクリスマスには、メニューの用紙もクリスマス柄のスペシャルバージョンで、ローストチキンがとてもおいしく、心が温かくなるような素敵なディナーでした。先生もスタッフもとても良質な、いい病院だったと思っています」
2006-09-06 10:44
※引用文中【画像省略】は筆者が附記
-----
【特集】マイライフ・マイチョイス【出産・育児編】に掲載された記事です。この記事についたコメントは2件。こちらは記事に関連したごく普通のコメントでした。引用はしません。
「女性自身」とかに載ってそうな記事です。