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『薬でうつは治るのか?』片田珠美

引用元URL:http://www.ohmynews.co.jp/News.aspx?news_id=000000002420

Happy Drug Junkies
O羽 S史
2006-10-16 04:28

『薬でうつは治るのか?』とは、結構思い切ったタイトルであると思う。現在のうつ病治療において、有効だとみなされている治療法は休養と投薬の両輪による治療法だからである。そこに心理療法の長椅子の入り込む余地は、ない。

ハッピー・ドラッグというのは「夢の効うつ剤」SSRIについたキャッチコピーのようなものである。
これは今までの効うつ剤とは違う。あらゆるタイプのうつに効くし、副作用も今までとは段違いだ、貴方をうつ病から解放してハッピーな気分にさせてくれる、まさに夢のドラッグだ。
欧米においてはそんなふうに喧伝されていた。
そして、今現在、日本においても効うつ剤と定着し始めている。

しかしハッピー・ドラッグの華々しいデビューの一方で、その一方で近年増え続けているうつ病について、この本で描かれる状況は深刻である。
まったく薬が効いているのかどうかも分からない、少し改善したかと思い薬を止めるとすぐに悪化してしまう、そんなふうな患者の声が多くなってきているという。
つまり、うつ病はかなり慢性化してきているのだ。

この本ではうつ病について、精神病理学的に薬の効く「純然たるうつ」と薬の効かない「純然たるうつ」ではないうつ、という二つに分けて考えている。

「純然たるうつ」というのは脳や身体などが原因である身体因性のうつである。これは脳の失調として起こる。そのために脳内物質の分泌を促す抗精神剤が利くわけである。

「そうでないうつ」というのは、生物学的要因によって起こると考えられている内因性のうつと、心理的ストレスが原因となって引き起こされる心因性のうつである。
内因性のうつにも心理的な引き金が存在することが多々あり、内因性と心因性のうつの区別は少しあいまいである。

つまり、今現在増加しているうつ病は薬の効かない後者のタイプであって、後者に投薬療法をなすことによってうつは慢性化してきてしまっていると筆者は指摘している。

副作用が少なく長期間投与できるSSRIが理想の効うつ剤であるのは、つまり慢性化したうつにとって理想的であるからだ、というの筆者のするどい慧眼であると思う。
しかし、ハッピー・ドラッグにも副作用がないわけではない。かなり濃厚な疑いとして患者の自殺願望を促進させる作用があるのではないかという研究もあるし、コロンバイン州の銃乱射事件に事件において犯人の一人の体内から多量のSSRIが検出されたという報告もある。

筆者の精神病理学における「うつ病」定義のあいまいさの分析は深いし、最近の「QOL"Quality of Life"(生活の質)」を声高に重視する風潮について「いつになったら治るのか」「本当に治るのか」という患者の声をごまかしているだけだという指摘は鋭い。

しかし、ラカン派の精神分析医である筆者の心理療法に肩入れする姿勢にはやはり少々疑問が残るし、現役の医師である筆者の製薬会社に対する切り口は浅い。

増加し、慢性化するうつに関して、やはり深く関わっているのは製薬産業である。
市販された睡眠薬「ドリエル」が爆発的に売れている。おそらく、その利用者の中にも、SSRIの潜在的なニーズはあるわけである。
それが顕在していくなら、日本においてもSSRIが「精神のアスピリン」としてポピュラーになっていくなら。
見逃してはいけない、それはいま起ころうとしている一つの精神医療におけるポリティクスの場なのである。

はたして我々がSSRIを受け入れ、幸せの薬の中毒者として何とか首をくくらずにやっていく道を選ぶのか、それとも「医学」という近代人の理性が打ち立てた体系の鬼っ子である「精神医学」というもの自体を見直す時期に来ているのか、いま我々は分岐点に立っているのではないだろうか。

オーマイニュース(日本版)より

ニュースのたね記事なので詳細はわかりませんが、おそらく「BOOKS」カテゴリに投稿されたものではないかと思います。SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)の解説は以下。

うつは誰でもかかる可能性のある病気ですので、あ、やばいかなと思ったら専門医にかかって早めに治療しましょう。それでも心配ならセカンドオピニオンで他のお医者さんの診断も受けてもいいかもしれませんね。症状が目に見えて良くなるまでにわりと時間がかかるようですので、腹を据えてつきあう必要はあると思います。

職場のフォローがあるとよいですね。