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建設予定地を買い取り、産廃処分場反対終結へ

引用元URL:http://www.ohmynews.co.jp/News.aspx?news_id=000000003018

矢本 真人
2006-11-22 11:51

 廃棄物の中間処理施設、最終処分場は必要な施設ではあるが、周辺住民にしてみれば迷惑施設で、「なぜ我々の近くに来なければならないのだ」という感が強く、「自然環境の保全」「飲料水源の確保」を掲げ、反対運動が起っている。

 ここ群馬県下仁田町も降って湧いた廃棄物最終処分場建設計画に対し、町ぐるみで反対運動に取り組んだが、「反対の原因は何か」「山を残す解決法は何か」を真剣に考えた結果、「町が適切な単価で建設予定地を買い取ることが終結へ向けて最良の手段であると考えた(下仁田町長)」という。

 そして、最終処分場建設反対運動の終結に向けて、議会での買い取りの審議、住民への説明と承認を求めて動きが始まった。

 バブル期に高峯リゾート開発がゴルフ場建設を予定していたが、計画がとん挫し、転売されたのが2002年10月。最終処分場計画が発覚したのは、東京都大田区の山田建設の社員が周辺民家を訪れたからだ。町と議会は「地域の環境を守る」ため反対を宣言し、2003年4月山田建設が設置協議書を県に提出、住民への説明が始まった。山田建設の下仁田廃棄物最終処分場の計画概要によると、開発面積199,389平方メートル,埋立て面積76,602平方メートル,埋立て容量1921,970立方メートル、埋立て期間15年という大規模最終処分場であった(町役場で町民に閲覧できるようになっていた。私も閲覧し、意見を記した)。

 産廃税などを制定すれば、年に1億円程度を町に負担することもできるということだ。

【画像省略】
産廃処分場建設反対の垂れ幕が下がる下仁田町役場。この奥に産廃処分場建設予定地がある(2004年5月13日)
撮影者:矢本真人

 2004年11月13日に開催された山田建設と地域住民の住民説明会(吉田会場)では、「何故この地が適地なのか、計画書の説明が不十分」という意見を初め、「埋め立て地内での有害物質の挙動はどうなんだ。ダイオキシンはどうなるのか」や「埋立て物からどんな有害物質が出るのか」や「大気や水にどう影響するのか」など事業者にとっても答えにくい質問が飛んだ。

 説明会では、住民の有志で山田建設の既設の最終処分場を見学した結果として、「急に近くに最終処分場ができた。臭いと言っても一向に(担当者が)来ない。こんな物は造ってしまったらお終いだ」という周辺住民の意見が紹介された。

 また事業者側は、同じ説明会で「とにかく早く意見書を出して欲しい。そうすれば次のステップでより詳細な議論ができるようになる」とまずは意見書の提出を早くするよう促すばかりであったが、住民は「意見書を出せる段階ではない」と突っぱねた。

 町長の行政側の経過報告によると、山田建設と「町民全員が反対していること」、「撤退する場合の条件」などを真剣に検討し、反対意見や書類や資料などありとあらゆるものを県に提出、副知事らと方向付けをしたという(2006年11月9日 建設阻止住民の会 緊急総会にて)。

 通常、県は事業者の計画に問題がなく、同意書がとれていれば認める立場である。建設計画阻止に向け、下仁田町は県の立ち会いで方向付けをしたことに意義があるようだ。

【画像省略】
建設阻止住民の会 緊急総会(下仁田町文化センターにて)
町長、議長、その他役員と住民約300人が集まった(2006年11月9日)
撮影者:矢本真人

 そして、「反対の原因は何か」、「山を残す方法は何か」、将来また計画が出てこないためには町が適正価格で買い取ることが1番良い方法ではないかと判断(岡田町長)したということだ。

 買い取り価格は4億6000万円(岡田町長の話)。下仁田町の一般会計48億2000万円、人口1万854人、世帯数3655世帯(いずれも2004年度)にあっては支払い能力を超えた金額である。しかし町の環境を守るためにも、身ぎれいにして隣の市と合併するためにも必要なことであり、2006年11月9日の建設反対住民の会緊急総会(町文化ホール)で報告、承認された。

 75%が起債できることで、今年度中に1億1500万円の支払いが必要になる。町民の浄財に頼ると一戸当たり3万円になるが、具体的な方法はまだ決まっていないようだ。議会も住民の反応を見ながら根本的な解決に向け臨時議会を招集するという(この項に出ている数字は全て岡田町長の話)。

 住民の会緊急総会は、町民負担で建設予定地の買い取りを承認し、閉会した。

 全国に最終処分場建設計画とそれに対する反対運動、中には工事中で工事差止訴訟、稼働中のもので操業停止訴訟などが多発している。工事に着手したばかりで中断すれば大きな環境破壊を残すことにもなる。計画段階で予定地を買い取る方法は1つの策かもしれない。

 廃棄物の有効利用、削減策などもちろん必要である。しかし、中間処理施設や最終処分場は迷惑施設から脱却できていない。その理由の1つに今までの処理業者への不信感が根強いこともあり、事業者は反省しなければならない。また処分場の構造、技術は進歩している。より安全な(信頼性のある)構造のものも設置されている。いろんな処分場を見学し、理解を深めることも大切であるし、維持管理に周辺住民の参加(監視)も考えなければならない。

オーマイニュース(日本版)より

※引用文中【画像省略】は筆者が附記


この記事についたコメントは2件。

2 しーさー 11/22 19:07
廃棄物の処分こそ、公共性のある問題であり、こうした事業を民間企業が担うこと自体、いささか無理があるように思う。一定の処分費のもとでは、環境対策に掛けられる資金にもおのずと限界があるからだ。

下仁田の人々の英断に拍手

1 ブーゲンビリア 11/22 16:12
群馬県にも、このような誇り高い街があり、英断を下せる町長と町民がいるんですね。
初めて知りました。群馬県のイメージが変わりました。
これからは、こんにゃくと、ネギは下仁田ネギにしようと思いました。
わがまちでもがんばろうと思います。ありがとうございました。


経過報告書を関連書類全部含めて目を通しましたが、町行政への事務やら何やらの負担がものすごく大きい状態でよく解決まで導けたなと感心しています。これ住民が金銭的負担という痛みを背負う覚悟がなければ解決できてなかったんじゃないかと思います。

ただただ反対と叫んでいれば問題が解決できるわけじゃない良い一例かと。まぁそれでも廃棄物処分場の土地確保の問題は先送りになっただけなのでしょうが。難しいよね。個人的には原発と同じで有無を言わせぬ莫大な交付金で頬をペチペチさせるしか現実的な解はないんじゃないかと思います。