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台湾LGBTプライド・トランスパレード2020

台湾プライドから一夜明けた。
帯びた熱を冷ますかのように、
台北の街には霧雨が降っている。
台北は雨の似合う街だと思う。
僕は今日、ほぼ丸一日、西門町の宿で爆睡。
灼熱と情熱の、台湾LGBTプライド2020。


1. 我愛台湾

今回の台湾パレードで、例年と違ったところと言ったら、ナショナルプライドに尽きると思う。
コロナ国内感染者200日連続でゼロ。
この大規模なプライドパレードを開くことができた唯一の国、台湾。
あちらこちらで「台湾」「台湾」の掛け声が。
ひょっとすると、台湾独立派の集会じゃない所で、こんなに台湾を聞いたのは、初めてかもしれない。
「台湾」が「ハッピープライド」のようだ。

私たちが手にした民主主義。
私たちが手にした自由、
私たちが手にしたみんなの結婚。
70名もの人が運んだ巨大レインボーフラッグ。
ゴールに近づいた際
一斉に湧き起こった、
割れんばかりの拍手。
台湾の人たちの、
台湾を誇りに思う気持ちと、
自由への情熱が熱を帯びて伝わってきた。
これはもう、本当に台湾のプライドなんだなあと。


2. トランス・パレード

天才オードリー・タンを生んだ台湾。
そこで2回目となる
トランス・パレードが開催された。
金曜夜19時に開かれたパレードは、
1,500人が行進。
てっきり、
台湾ではトランスジェンダーの可視化は
進んでいるかと思いきや、
そうではなかった事に歩いて気が付いた。
ゲイタウンのある、西門町を約30分かけて、
ぐるっと一周回ったのだけれど、
美容室から、食堂から、
出てきた出てきた、物見見物の人だかり。
指をさして揶揄するような仕草も、あちこちで。
台湾ですら、こうなのだ。

それでも隊列は前を向く。
「どの制服を着るか、どのトイレに入るか、どの性別なのかは、ぜんぶ私たちが決める。」
人々の好奇の目にもひるむことなく、
フロートの上から泰然自若とした様子で、
演説を続ける、勇気ある参加者たち。

きっと台湾はこれまでこうやって、
数々の障壁を突破してきたんだと思った。
ひまわり運動も、同性婚合法化も。
「ぜんぶ私たちが決める。」
これからもこうやって、
若い人たちの力で
あらたな壁を突破して行くのだろうと思った。
出る杭が多い台湾。打たれても怯まない台湾。

3. 多元文化

10月31日、台湾LGBTパレード当日。
気温は25度前後だと言うのに、
集まった人たちの熱量がすごい。
プライドパレードの爆発的エネルギーと、
まるで8月のような強い陽射しが、
じわじわと体の中にしみ込んでくる。
海外からの観光客を
迎え入れてないにも関わらず、
今年のパレードを歩いたのはなんと13万人。
つまり台湾全人口の0.5%がパレードを歩いた。
日本の人口は1億2400万人だから、
単純計算すると68万人が東京レインボーパレードを歩くようなもの。
なんだか計り知れない。
それだけ台湾の人たちにとって、
今年のパレードは、特別なものだった。

(パイワン族の若者たち)
国境の島々である、
金門島や媽祖島からの参加者。
そして台湾先住民の団体。
さまざまな文化と、
異なるイデオロギーを持つ台湾の人たちで
ごった返す会場は、
いわば現代台湾の縮図そのものだった。

4. レインボーマーケット

政治の話はさておき、
台湾LGBTプライドの話に戻ると
市政府に会場が移ってから
「レインボーマーケット」と呼ばれるエリアが
台湾プライドで用意されるようになった。
フードパンダ、Tinderそしてレッドブル。
日本のプライドでは見ない企業も。


すべての参加団体のブースサイズが
統一されたことによって
個別の予算の多寡ではなく、
参加数の多さで参加費を集めていくやり方。
ここは日本も学べると思った。
作り込むタイプのブースではなく、
既成のテントを使うやり方なので、
環境にも悪くない。
それにしても
「レインボー・マーケット」と言う言葉。
ややもすれば炎上しがちな、
商いとLGBTの問題を、可愛く表現した、
とってもいい表現だと思った。
プライドでお金が流れ、
そこを行き交う人々の間で文化が育まれる。
台湾人らしい、
逞しくもしなやかな発想だなあと思う。

備忘録:

ちょっと思い出したのでこのコピーをメモ。

エコロジーで大儲けする人がいないと、
環境問題なんて解決しない。(コピーライター:福島和人)

5. 台湾リーダーズ

このプライドには台湾のリーダーたちも
改めてコミットメントを表明。

蔡英文総統:(意訳)今日のキーワードはラブ&インクルージョン。もっと良い台湾を。今日だけではなく、これが毎日のキーワードとなりますように。

オードリー・タン大臣が、なぜこの日、教皇フランシスコによる回勅「Fratelli tutti」(友愛と社会的友情について)をポストしたのか。
プライドだけではなく、台湾海峡で高まる緊張、アメリカ大統領戦で深まる溝を考えたとき、このメッセージには特別な意味合いがあるのではないだろうか。

民進党のフロートで登場すると思っていた
蔡英文総統は、パレードにお姿は見せず。
今朝読んだ自由事報によると、
アメリカ大統領選に向け
緊張が高まる両岸関係について、
国民への伝え方を討議していたそう。

何かを選ぶことは、何かを捨てること。

台湾リーダーズの、
この勇気ある姿勢がきっと、
現代台湾の力を育んだのではないか。

6. ブルームーン

パレードが終わった10月31日の夜、
台北の空にもブルームーンが現れた。

2 、3年に1度しか出会えない奇跡の満月。
ブルームーン。

台湾が産んだ歌姫、テレサ・テンは唄の中で、
愛する気持ちの質量を、月明かりに喩えた。

你問我愛你有多深 我愛你有幾分
我的情也真 我的愛也真 月亮代表我的心

この日、台北の空に
ひょっこり姿を現した美しきブルームーン。

月明かりに照らされた台北の街並みは、
愛と自由を勝ち取るために
闘い続けてきた台湾人の過去を讃え、
台湾の未来を照らすかの如く、
静かで強い明かりに満たされていた。

Happy Pride Taiwan.

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