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句集を読む

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句集を読み、収録句の中から印象に残った句を何句かpick upさせて頂いています。
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2023年8月の記事一覧

句集を読む:『海図』

『海図』 佐藤郁良 2007ふらんす堂 著者は昭和43年東京生まれ、「銀化」副編集長。本書は著者の第1句集、第31回俳人協会新人賞受賞作。 [章立て] 調律師 海図 点景 最後の客 手話と劇薬 花野の駅 設計図 [好きな句 15句] 梅が香や禅寺の門閉ざされし いくたびもポストを覗く花の雨 短日や窓に母待つ子の指紋 そんなには生きまい四万六千日 書初の手に遺伝子の流れをり 新雪へ踏み込む悔いに似たるもの 大寒をせつせと蒸かす中華街 風鈴の乱れて誰か来る予感 揚げたてのコロ

句集を読む:『人類の午後』

『人類の午後』 堀田季何 2021邑書林 著者は「楽園」主宰。本書は第72回芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞作 [章立て] 前奏 Ⅰ Ⅱ Ⅲ 後奏 [好きな句20句] 本書の漢字表記は基本的に正字・旧字だが、以下の列記では原則として新字体を使用している。 戦争と戦争の間の朧かな 鳥渡るなり戦場のあかるさへ ぐちよぐちよにふつとぶからだこぞことし 自爆せし直前仔猫撫でてゐし 花疲するほどもなし瓦礫道 花の樹を抱くどちらが先に死ぬ 花降るや死の灰ほどのしづけさに 懇ろにウラン