現代語俳句投句会 第3回 結果発表
「現代語俳句投句会」と題して、
現代語で詠んだ俳句を募集しています。
第3回は5名のみなさんに
全32句をお寄せいただきました。
以下その結果発表です。
現代語俳句投句会 第3回
2020年 3月
◎ 特選句 ◎
叶わない恋ならいっそ蝶となれ
笹塚心琴
花吹雪すべて忘れてしまおうか
笹塚心琴
花として歩いてゆけと祖母のふみ
笹塚心琴
ふるさとも涅槃も遠い西行忌
矢口れんと
白れんの地球をつつむやさしさよ
矢口れんと
たんぽぽとはじめの一歩保育園
吉田翠
ただ歩き眺めることよ花の門
吉田翠
こんなにも風とあそぶか白木蓮
吉田翠
◯ 入選句 ◯
たんぽぽをたんぷぷという子がひかり
笹塚心琴
たよりなく浮き世をわたる初蝶か
矢口れんと
ふるさとに便りを出すかシクラメン
矢口れんと
誇りあれ形はなくも卒業ぞ
吉田翠
惜しみなく人のこころに咲けよ花
吉田翠
なごり雪ともに見上げる白い日よ
悠凜
◇ 佳作 ◇
子供達菜の花なんて食べないし
ユッキー
草の芽とともに天指す無垢な指
笹塚心琴
あの人も雁と帰って一人飲む
笹塚心琴
いぬふぐり踏まれても地を彩って
笹塚心琴
寂しくもすべて良かれと花は散る
吉田翠
ぼた餅に目じりのさがるお中日
吉田翠
見惚れるは花あでやかに舞う姿
悠凜
ホワイトデーなごりの白が舞う空ぞ
悠凜
餅にらみ牡丹か草か春彼岸
悠凜
敬称略
句の並びは投句会ご投句順です
【特選句より鑑賞】
叶わない恋ならいっそ蝶となれ 心琴
一句一章の句です。この句は、若いながらの切実さと浮わつきのない現実味が感じられて共感ができます。俳句では1句のなかの正と負・陽と陰のバランスをうまくとることも必要になります。心琴さんの句は毎回どれも若々しく瑞々しいです。
ふるさとも涅槃も遠い西行忌 れんと
西行は平安後期の歌人・僧侶。忌日は陰暦2月16日。「願はくは花の下にて春死なむその如月の望月のころ」と詠んだそのとおりの日に亡くなっています。この句は西行法師にむけても詠まれています。読者の心はしぜんと時空を超えていきます。
ただ歩き眺めることよ花の門 翠
「花」は俳句では桜のことをさします。その美しさ・華やかさに重点をおいた語です。この句は「花」という語の力にすべてを託した句です。作者ととともに読者お一人お一人が眺めくぐってゆく花の門。その先に何が見えてくるでしょうか。
【ご投句いただいたみなさんの全作品です】
◯ ユッキーさんの作品 ◯
子供達菜の花なんて食べないし
◯ 笹塚心琴さんの作品 ◯
花吹雪すべて忘れてしまおうか
叶わない恋ならいっそ蝶となれ
草の芽とともに天指す無垢な指
花として歩いてゆけと祖母のふみ
いさかいも花の下ではほどかれる
たんぽぽをたんぷぷという子がひかり
ぜんまいの苦さが旨さになる破瓜
あの人も雁と帰って一人飲む
桃の顔いわれ嬉しい褒め言葉
いぬふぐり踏まれても地を彩って
◯ 矢口れんとさんの作品 ◯
たよりなく浮き世をわたる初蝶か
白れんの地球をつつむやさしさよ
歳月と初花かおる風のあと
ふるさとも涅槃も遠い西行忌
ふるさとに便りを出すかシクラメン
◯ 吉田翠さんの作品 ◯
ただ歩き眺めることよ花の門
花ふぶき幼子の背のひとひらよ
寂しくもすべて良かれと花は散る
ぼた餅に目じりのさがるお中日
誇りあれ形はなくも卒業ぞ
たんぽぽとはじめの一歩保育園
こんなにも風とあそぶか白木蓮
惜しみなく人のこころに咲けよ花
◯ 悠凜さんの作品 ◯
くちびるの咲き初める花さくら色
見惚れるは花あでやかに舞う姿
目を奪う花ほこらしく散る様ぞ
徒花の美しき様散ってこそ
ホワイトデーなごりの白が舞う空ぞ
なごり雪ともに見上げる白い日よ
未知の世にそれでも発つか綿毛たち
餅にらみ牡丹か草か春彼岸
みなさま、
ご投句・ご参加ありがとうごさいます