知識の外のある力を信じる人々-夢二の記事
「東京災難画信」二、都新聞 大正12年9月15日掲載
浅草観音堂を私は見た。こんなに多くの人達が、こんなに心をこめて礼拝してゐる光景を、私ははじめて見た。琴平様や、増上寺や、観音堂が焼残つたことには、科学的の理由もあらうが、人間がこんなに自然の惨虐に逢つて智識の外の大きな何かの力を信じるのを、誰が笑へるでせう。
神や仏にすがつてゐる人のあまりに多いのを私は見た。 観音堂の「おみくじ場」に群集して、一片の紙に運命を託さうとしてゐる幾百の人々を私は見た。それは必ずしも日頃神信