目が悪い

 散髪をした。

 私は視力がとても低い。メガネを外して洗髪の椅子に移動するのが不安で、途中に段差があったり、歩く距離が長い美容室は行く気がしなくなる。今回はよく行く床屋に行ったのだが、感染対策の衝立とか、ディスプレイのコードとか、障害物が増えていた。もしもこの世界にメガネが発明されていなかったら、私はわりと上の等級の視覚障害者なのだ。美容師は目の悪い者の気持ちをわかってくれない。鏡を手に仕上がりの確認を求めてくる美容師もよくいる。メガネがないとなにも見えないんだってば。


 メガネがない。

 私は視力が低い。朝目覚めると、たいがいメガネが見つからない。最近は細いフレームのメガネをかけているので、特に見つけにくい。メガネなしでメガネを見つけるには推理と地道な捜査が必要だ。昨夜の私には、目の悪いひとへの配慮がたりない。最近年長者からよい方法を教わった。スマホで枕元の写真を撮れば、どこにスマホがあるのか見えるのだ。これはすごい。メガネをかけていなくても、スマホはピントの合った写真が撮れるということに興奮した。メガネをかけていないときは、何も見えないから写真なんか撮れないと思っていた。

 子どもの頃から目が悪いから、似たような思い込みは他にもある。メガネを外すと、他の人を意識しなくなりがち。自分からは他人の表情が見えないものだから、他の人からも自分が見えなくなっているはずだと錯覚してしまう。この現象を利用して顔の運動をしたり、歌を歌ったりしている。

 ところで、VRとかが時々街でやっているのを見かける。あれもメガネをかけないで見れるというから不思議で何度か試しているのだが、ときどき、うまく画像が見れないことがある。私の目の問題なのではないかと思うのだけれど、他にもVRが見れない人っているのだろうか。なぞ。