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松原早耶・メモリアルコミュ1~4の歩み――"少女"が"アイドル"になるまで

※ニコニコブログに2020年12月28日に投稿した記事を移行したものです

はじめに

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12月28日は松原早耶の誕生日です。

毎年のことではありますが、年々早耶の話題が増えているようで感慨深く思っています。とりわけ、誕生日のタイミングは早耶へ言及してくださる方も多く、そうした声を拾っていくのが大変で嬉しい悲鳴です。

さて、誕生日というタイミングで早耶のことが気になったという方も少なくないでしょう。
そんな方には是非、早耶のメモリアルコミュをまず読んでほしいな、と思います。

今回は、いち早耶Pとしてメモリアルコミュ1~4で早耶がどんな物語を歩んできたか、私見をまとめてみました。いずれも名作との声高いコミュです。早耶の歩みも踏まえるとなおのこと眩く映ることと思います。

私見ですが、メモリアルコミュ1~4はR+までの物語ではないかと思っています。

誰かに嫌いって言われても、たった一人に好きって言ってもらえるアイドルになるの!
(R+松原早耶・特訓エピソード)

早耶のこの強く、それでいて、(今になって思えば)寂しさも感じさせる宣言に至るまでには、メモリアルコミュの物語が必要だったと感じるのです。

1.コミュ1――少女の踏み出した一歩

1-1.松原早耶は「可愛くなりたい女の子」である
メモリアルコミュ1はそのアイドルとの出会いを描くものです。早耶の場合も例外ではなく、コミュ1を通して、①どういう人間なのか、②どうしてアイドルになったのか、という2点が描写されています。

松原早耶という人間は、端的に言うと「可愛くなりたい女の子」です。シンデレラガールズにおいては珍しくない在り方です。でも、早耶の場合は決してそれだけではありません。コミュ1が早耶だけの物語性を描いています。

早耶:しーっ!静かにして!中に聞こえちゃうから…
控室から声が聞こえてくる...
読モA:サヤとかいうやつ、自分のことカワイイと思っているのがバレバレ。出しゃばるなって感じ
読モB:カメラマンも騙されちゃって、ウチらのこと、全然撮ってくれないし、ありえなくない?
早耶:…
P:行こう
(松原早耶・メモリアルコミュ1)

この場面をもって「早耶だけの物語」と肯定的に評するのは憚られる気持ちもありますが、こうした背景――可愛く在ろうとして、その在り方を否定されてきた過去を持ってなお進んでいるのが松原早耶なのです。

上記の場面のあと、「早耶は、自分を可愛く見せたいだけなんですぅ...だから、頑張ってるのに...!それなのにぃ~...」と零します。陰口を叩かれている場面では「中に聞こえちゃうから…」とPを制し、聞こえてしまった陰口の前では哀しそうな表情を見せるだけで何も言わずにいて、そのあとに、です。

陰口が聞こえてきた扉の前での対応に少し慣れているような印象を受ける通り、早耶にとってこうした経験は初めてのことではありません。以降のメモリアルコミュやRのカード台詞、あるいはぷちデレラなど、様々な場所で否定的な言葉を投げつけられてきたことをぽつぽつと語っています。

それでも、それでもプロデューサーと対峙した早耶は「自分を可愛く見せたいだけ」と言ってのけました。

本節の冒頭で「可愛くなりたい女の子」と早耶を評しましたが、より正確には「(誰に何を言われようとも)可愛くなりたい女の子」である、というのがコミュ1を通して明確に押し出されるのです。(この背景をただただ肯定的に捉えるべきではありませんが)この力強さは松原早耶固有のものであり、そして、最初に我々を惹きつける魅力だと思います。

1-2.そのタップが松原早耶の背中を押す
松原早耶はなぜアイドルになったのでしょうか。その答えはもちろん、プロデューサーが「頑張ってる。君は可愛いよ」と自身を認めてくれたからに他なりません。そんな言葉をくれた人についていきたい、それが早耶をアイドルへと駆り立てた大きな動機でしょう。

しかし、なぜあの言葉はそこまでの重みを得たのでしょうか。早耶を認めるという点では、コミュ冒頭でカメラマンも早耶を称賛する言葉をいくつも投げています。それだけではなぜ届かないのでしょうか。

その答えは、Rのカード台詞、あるいはぷちデレラの台詞に見ることができます。

プロデューサーさんは、ホントの早耶のこと見てくれましたからぁ…だから、ついてきましたぁ♪
(松原早耶・ぷちデレラ)
○○さんは本当の早耶を見てくれるから…
(R・松原早耶)

早耶の台詞を踏まえると、プロデューサーの掛けた言葉のなかでも「頑張ってる」が重みを持つことが見えてくると思います。

「可愛く見せたい」という早耶の在り方は決して「ぶりっ子」でも「媚びている」わけでもありません。純粋に可愛く在りたいという気持ちのもとに積み重ねてきた努力からなる表現なのです。早耶の努力を認めることは、すなわち、可愛く在ろうとする早耶の在り方そのものを肯定することだったのです。

注目すべき点として、早耶が「可愛くない」と非難されたという描写は今のところ存在しません。先のモデルも「自分のことをカワイイと思っている」、「出しゃばっている」と評してはいますが、可愛くないとは言っていないのです。

早耶を苦しめる言葉はその在り方に対するものが中心であったことが、ここからも伺えるのです。だからこそ、「可愛い」という言葉だけでは早耶の不安な気持ち、心細さを掬い上げることはできなかったのでしょう。

なにより、プロデューサーの言葉がどれほどの重さを持ったかは、早耶の行動がよくよく示しています。数日後、ほんの少し言葉を交わしただけのプロデューサーを追ってきて、何を言われてもついていくと言ってのける……。早耶がまだ18歳であることを鑑みると、なおのことその凄まじさが身に沁みます。

コミュ1において「頑張ってる。君は可愛いよ」とタップする瞬間、その瞬間に松原早耶とプロデューサーの運命が決定するのです。あのタップは非常に、非常に重みがある……。

一方で、コミュ1はあくまで「松原早耶という少女が自身を認めてくれた人間についていくと決断する物語」以上ではありません。コミュの中でアイドルにしてほしいと言われたプロデューサーは肯定の返事をしていないのです。

また、ここまで眺めてきた通り、早耶にとって大事なのは自身を認めてくれた人間についていくことであって、決してアイドルになることではありません。これは、第5回総選挙の投票時台詞でも明かされています。

怒らないで聞いてぇ?早耶、最初はアイドルとか大事じゃなくて。でもPさんが好きなモノ、早耶も好きになっちゃったぁ
(第5回総選挙・松原早耶投票時台詞)

まだ「可愛くなりたい少女」と「彼女に言葉をかけた男性」である2人が、以降のコミュで徐々に"アイドル"と"プロデューサー"になっていきます。

2.コミュ2――”アイドルとして”ついていくこと

2-1.「甘えんぼう」と「甘ったれ」
何を言われても可愛くなりたい、という強い決意を見せたコミュ1を踏まえると、コミュ2の早耶は印象が変わって受け止められるかもしれません。

早耶:はぁはぁ...もう~。プロデューサーさん、速いよぉ!もっとゆっくり走ろう~?
早耶:むぅ~......そうだ!
早耶:きゃぁ~ああ~ん、転んじゃったぁ~!いったぁ~い!これじゃあ走れない~!
P:大丈夫?
早耶:大丈夫じゃないかもぉ。もう、足もフラフラだしぃ...そうだ!もっとゆっくりでぇ、おしゃべりしながらなら走れるかもぉ?
P:立とうか
早耶:えーん。もう少し労わってよぉ。もう、動けないよぉ~。
P:行こう
早耶:ああーん、もうっ。待ってよぉー!プロデューサーさぁーん!!
(松原早耶・メモリアルコミュ2)

体力不足(アイドル転向後すぐなので仕方ない部分はある)で弱音を吐き、ずるして休もうとする……。コミュ1で見せた悲痛ともいえる決意はどこに言ってしまったのか、という印象もあるかもしれません。

でも、これが等身大の松原早耶でもあります。ぷちデレラのぷちエピソードで特に描かれていますが、当初の早耶は可愛く見せること以外はからきしです。同様に弱音も吐きます。コミュ1の決意があまりに眩しく映りますが、まだ18歳の少女なのです。

その一方で、このコミュは「松原早耶はへたれる面もある普通の少女です」で終わりにはしません。確かに、先の引用の通り早耶の甘えた面も描かれてはいますが、このコミュの早耶は最後まで走り切りました。文句を言っても、絶対にあきらめることはしないのです。

早耶:はぁ…はぁ…
早耶:ん?あっ!プロデューサーさん!ここだよねぇ?ゴール!
P:頑張ったね
早耶:わぁ!えへへ...うれしー♪早耶、頑張ったよねぇ!すごいすごーい!
(松原早耶・メモリアルコミュ2)

コミュ2実装と同時に実装されたのロワイヤルハートの親愛度台詞に、コミュ2の早耶を端的に示すような台詞があります。

むぅ~。早耶だってわかってますよぉ~。甘ったれと、甘えんぼうは違いますもんねぇ。だから、早耶、頑張りますぅ。
可愛くなりたいって、誰よりも思ってるのは早耶だからぁ……。早耶がいちばん頑張らなくちゃ。今まで伝えた言葉、嘘にしたくないからぁ~。
でも、ちゃんとやり遂げたら……甘えてもいいですよねぇ?○○さん♪可愛くて、甘えんぼうな女の子。それが松原早耶なんですぅ~♪
([ロワイヤルハート]松原早耶・親愛度MAX台詞)

等身大の早耶、そして「甘えんぼう」の早耶を描きつつも、彼女が決して「甘ったれ」ではないことを絶妙なバランスで描いたのがこのコミュだったと思います。

2-2.”プロデューサーに”ついていく
短い会話のみで顔が見えないプロデューサーは、このコミュではとりわけ厳しい人物のように映ります。体力不足の早耶に対して帰りも走っていくことを提案するなり走り出すなど、コミュ1であの言葉をかけた人物とずれているようにも見えてしまいます。

とはいえ、プロデューサーの立場から言えばこれも普通の対応なのかもしれません。アイドルになりたいと転がり込んできたものの、話を聞くに”自分に”ついてきたと取れる言動をする少女が、本当に”アイドルに”なりたいかは疑問視も不安視もするでしょう。

しかし、同時に決していたずらに厳しい人でもないことが見て取れます。早耶が転んだ演技をした際はまず大丈夫かを確認し、走り切った早耶を労い、(早耶にとって)ハードワークを課しつつも、気遣っていることが感じられます。その点では、ただただ”アイドルとして”レッスンをつけている、と言えるでしょう。

早耶自身もプロデューサーの態度は正しく受け止めており、「プロデューサーさんが、前を走ってくれてたから、ここまでついてこれた」と感謝も述べています。

既述の通り、ゴールまで辿り着いた早耶に対して「走って帰ろう!」とプロデューサーは早耶の言葉も待たずに走り出します。ここでの早耶の言葉は、早耶とプロデューサーの関係が変化したことを示していると思います。

早耶:ええっ!まだ走るのぉ!?厳しい~…でも、そういうところも好きかも…って、ちょっと聞いてる?...ああんっ、待ってよぉ~!
早耶:もうっ、いいもん!どこまでもついていくんだからね~!
(松原早耶・メモリアルコミュ2)

「プロデューサーについていく」というイメージがコミュ1に引き続き使われています。しかし、ここでは自身を認めてくれた人間についていくというコミュ1の構図からは既に変わっています。厳しくレッスンをつける”プロデューサー”についていく構図に上書きされているのです。

この点で、コミュ2は早耶の側から松原早耶とプロデューサーの関係を描き直すコミュだったと捉えることができると思います。

そして、最後まで諦めず「ついてきた」早耶の姿が、コミュ3でのプロデューサーの行動・対応に繋がってくると思うのです。

3.コミュ3――”アイドルとして”迎えること

3-1.”アイドルだから”怖い
コミュ3は早耶の弱さがよく見える内容となっています。コミュ1やR+の台詞に見える強い松原早耶からすると一歩下がったかのように見えますが、それぞれどうしてなのでしょうか。

まず、R+の台詞との整合性という点では、時系列を考慮する必要があると思います。R+はアイドル衣装を着ての登場ですが、コミュ3はアイドルとして初のお仕事(しかも宣材写真の撮影)なので、今回はR+以前と捉えるのが妥当かと思います。

そして、コミュ1に見える「何を言われても可愛くなりたい」という在り方がどうして発揮されなかったか、ここに重要な変化が見えると感じるのです。

P:何で悩んでるの?
早耶:さっきの写真、早耶は、みんながカワイイ!って思う写真じゃないと思ってて…
P:どういうこと?
早耶:アイドルって、いろんな人から好かれないといけないから、宣材写真は見た人が全員「カワイイ!」って言う写真じゃないと、ダメだと思うんですぅ…
(松原早耶・メモリアルコミュ3)

前章で、コミュ2は”プロデューサーに”ついていくという構図を描いた話と評しました。その流れを引くように、ここで早耶は”アイドルとして”思い悩むのです。アイドルだから、皆に好かれなくてはならない。「何を言われても」ではなく、「何も言われない」カワイイにならなければ、と立場の変化に伴って迷うのです。

これはRの特訓エピソードでより詳細、かつ、明確に語られています。

早耶、アイドルになるときに、怖いものが一つだけあったんです。
それは…嫌われること。
人に嫌われたら、アイドルできなくなっちゃいますし。
事務所の人に嫌われたらどうしよって...うぅ~...
カワイイ私でいると、嫌われちゃうんじゃないかって、不安で仕方なかったんですぅ...
(R・松原早耶・特訓エピソード)

この語り口には、自分の思う「カワイイ」がこれまで何度も何度も否定されてきたことがうかがえます。”アイドルとして”みんなに好かれなくては、と考え始めたことで、これまでの経験が早耶を惑わせてしまったのです。

あの日”ある人(プロデューサー)”が”1人の少女に”贈った「頑張ってる。君は可愛いよ」という言葉は確かに早耶をPの元へ向かわせ、その先へついていく原動力――魔法になりました。しかし、それは”アイドル”として歩み始めようとする松原早耶には決して十分なものではないのです。

コミュ3は、”アイドル”が最初の仕事にあたって惑うなかで、”プロデューサー”からの言葉を――魔法を受け止める構図になっていると言えるでしょう。

3-2.”プロデューサー”だから手を差し出す
コミュ3では、プロデューサーの「早耶にしか見せることのできない『カワイイ』を見たいと思っている人は、たくさんいるはずだ」という言葉が早耶を後押しし、良い方向に進んでいきました。

プロデューサーからのこの言葉はなぜ早耶を後押し出来たのでしょうか。同じく早耶の写真を高評価していたカメラマンの言葉、あるいは、あの日の「頑張ってる。君は可愛いよ」とは何が違うのでしょうか。

「頑張ってる。君は可愛いよ」という言葉は、早耶の努力を認める言葉でした。表面に出てくる結果としての「カワイイ」だけではなく、そう在ろうとする努力を含めて松原早耶を肯定する言葉です。

周囲から「ぶりっ子」や「出しゃばっている」と言われていた早耶にとって、なぜそう振る舞うのか、という部分も含めて受容してもらうことができた、と感じさせる言葉でした。これは、「ない」ことにされていた努力や気持ちが「ある」と認めること――すなわち、努力や気持ちの有無に焦点化されています。

しかし、それだけでは早耶の危惧――みんなには好かれない、という不安には立ち向かうことができません。むしろ、努力や気持ちはプロデューサーによって初めて認めてもらったものなので、周囲にそれを期待しようとは思えないはずです。

だからこそ、必要だったのはその在り方――「早耶にしか見せることのできない『カワイイ』」を見せることこそが大事なんだよ、と認めてあげることだったと思うのです。

3-3.テキストとタップの使い分けにみるプロデューサーの眼差し
個人的に、コミュ3におけるプロデューサーの台詞の出し方――テキストで出すか、タップさせるかの使い分けは非常に上手いと思っています。以下にプロデューサーの台詞を時系列順に、テキストかタップかを添えてリストアップします。

[タップ]一度、休憩をはさみましょうか
[タップ]何で悩んでるの?
[タップ]どういうこと?
[テキスト]早耶が一番カワイイと思う写真を撮ろう!
[タップ]不安?
[テキスト]迷ってる早耶はカワイイ?
[テキスト]早耶にしか見せることのできない『カワイイ』を見たいと思っている人は、たくさんいるはずだ
(松原早耶・メモリアルコミュ3)

注目したいのはテキストで表示される箇所です。いずれも今回のコミュで早耶を後押しした大事な言葉ばかりなのです。

これら早耶の在り方を肯定する言葉はタップではなく、テキストとして判断の間を持たせずに会話に挿入されていきます。既にプロデューサーにとってこれらの言葉、見方が当たり前になっていることが伺える素敵な演出だと思います。

そして、こうしてタップとテキストの使い分けを捉えると、改めてコミュ1で「頑張ってる。君は可愛いよ」とタップをさせる重みが増すように思います。あの瞬間はタップをする我々の意志に強く委ねられているのです。

3-4.”プロデューサー”と”アイドル”
以上を踏まえることで、コミュ3が”アイドルとして”悩む早耶に、”プロデューサーとして”手を差し伸べる構図であることが改めてよく見えるかと思います。「可愛くなりたい少女」と「彼女に言葉をかけた男性」として始まった関係は、コミュ3で改めて描き直されたように思います。

そして、この過程を描くにあたって、コミュ2がレッスン、コミュ3が宣材写真の撮影という順番であったことに必然性を感じるのです。

十分に”アイドル”ではなかった早耶が”プロデューサー”についていくというステップを踏まえたからこそ、”アイドルとしての”最初のお仕事――宣材写真を撮影することができたと思います。

元読者モデルなので、写真撮影は早耶にはお手の物です。もし、こちらが最初だった場合、早耶は今回のように”アイドルとして”悩むことはなくすんなりお仕事を完遂していたかもしれません。しかし、それではプロデューサーとアイドルとしての関係を醸成するには至らなかったかもしれません。

そして、プロデューサーにとってはこの順番は必然、というよりも、恐らく意図してこの順番にしたのが他ならないプロデューサーだったのではないかと思います。

コミュ2でも指摘した通り、突然押しかけてきた早耶はプロデューサーからすれば謎の存在です。本当にアイドルになりたいのか判然しないところもあったでしょう。だからこそ、まずレッスンを通してその気持ちを確認する必要があったのだと思います。

かくして、早耶とプロデューサーはここに至って、”アイドル”と”プロデューサー”として関係を結ぶに至ったと言えるでしょう。

4.コミュ4――アイドルとプロデューサーとしてのスタートライン

4-1 あの日取らなかった手を取る
コミュ4ではコミュ3で克服したかに見えた問題に早耶がもう一度ぶつかってしまいます。実際に観客の前に出るにあたって、みんな(特に女性)から嫌われてしまうのではないか、と控室に閉じこもってしまいます。

そして、そんな早耶を勇気づけたのは他でもないあの言葉です

P:早耶は頑張り屋だ
早耶:えっ...でもぉ…早耶が、頑張れば頑張るほど、みんなに嫌われちゃんですぅ...
P:みんなじゃない。他に見てる人がいる。
早耶:他に…そんな人…どこにいるんですかぁ...?
P:ここにいる
早耶:......プロデューサーさん......
P:頑張っている君は
  可愛いよ
早耶:...っ!!プロデューサーさん、その言葉…
(松原早耶・メモリアルコミュ4)

言うまでもないことですが、コミュ3の言葉との大きな違いは「早耶にしか見せることのできない『カワイイ』」を待っている人を「誰か」ではなく「私」として明確に伝えたことです。

早耶の台詞にも見える通り、自身の思うように振る舞うことで嫌われてしまうという経験は根深いものがあるようで、「本当の早耶」を見ていてくれる不特定多数の「誰か」を想定することが難しいのでしょう。

だからこそ、他でもないあの日「頑張ってる。君は可愛いよ」と「本当の早耶」を肯定したプロデューサーの「私が見ている」というメッセージが必要だったのです。

ただし、その言葉はコミュ3も踏まえて少しだけアップデートされています。早耶が早耶らしく在るために頑張っていること、そしてその結果表現される「松原早耶」を全て肯定するように、「”頑張っている君”は可愛いよ」となるのです。

アップデートという点では、改めてコミュ1の台詞をプロデューサーが持ってきたことで、コミュ1の結末のやり直しもまた果たされているように思います。

早耶:はぁい!スタッフさんもぉ、ありがとうございましたぁ~!今日はお疲れさまでしたぁ☆
P:おかえり
早耶:プロデューサーさん…!...ステージ、見ててくれました?早耶、どうでした...?
P:可愛かった
早耶:......うふっ♪でしょでしょ~☆あぁん、ホッとしたら、腰が抜けちゃったぁ☆もう立てなぁい☆
早耶:プロデューサーさぁん、立てなくなっちゃったんでぇ、早耶の手、引っ張ってくださぁい♪ほらほらぁ~♪ねぇ~☆
P:そういうところだぞ
早耶:うふふっ♪早耶って、とっても、手のかかる女の子だからぁ、ずっと、ずぅーっと、離れちゃダメですぅ。ねっ♪
(松原早耶・メモリアルコミュ4)

プロデューサーの元へやってきた早耶が手を引いてくださいとねだる構図は、どこかコミュ1を思わせます。そして、今回も手を引くわけではありませんが、この「そういうところだぞ」、そして、それに続く早耶の反応に、前回から関係が進んだこと――(コミュ3で示された通り)”アイドル”と”プロデューサー”として関係が結ばれたことを感じさせるのです。

ここに至って、ようやく”アイドルとしての”松原早耶の第1話ともいえるストーリーが完結したと思うのです。

4-2.物語は2人の関係に閉じない
コミュ1~4は主に松原早耶とプロデューサーが”アイドル”と”プロデューサー”としての関係を醸成し、最初の一歩を踏み出す物語でした。この中で、プロデューサーは早耶が苦しい過去を乗り越えるきっかけとなる言葉を都度贈ってきました。そして、コミュ4までの経験が冒頭に引用した以下の台詞や、次の台詞に繋がると思います。

誰かに嫌いって言われても、たった一人に好きって言ってもらえるアイドルになるの!
(R・松原早耶・特訓エピソード)
早耶のこと、嫌い~?って聞くと、嫌いって言われちゃうこともあるんだぁ…そんなときは、心がシクシク…
好きって言ってもらえる回数が増えたら、嫌いって言われる回数も増えるんだろうなぁ…でも、そういうアイドルも必要だよねっ♪
早耶、がんばるっ☆でも、○○さんだけは、がんばってる早耶を知っていてね。ずっとずっと大好きでいてね。
(R+・松原早耶・親愛度MAX)

ここに見えるのは早耶とプロデューサーのみの閉じた関係です。プロデューサーの存在・言葉のみを拠り所にスタートした早耶の姿です。

しかし、松原早耶を「好き」になってくれる人間は当然プロデューサーだけに留まりません。コミュ4は早耶がプロデューサーだけでなく、もっともっとたくさんの人に――それこそ女性にも愛されていく「これからの物語」を予見させます。

早耶:みんなぁ!待たせちゃってゴメンなさぁい!!こんなイケない女の子だけどぉ、早耶のこと、許してくれますぅ?きゅるん☆
観客:うおおおお!許しちゃう―!!
早耶:焦らしちゃったおわびにぃ、とっておきのダンス、見せちゃう~☆上手にできたら拍手のお・ね・だ・り、しちゃうからぁ~♪
女性ファン:きゃあぁぁっ♪早耶ちゃん、カワイイーっ!
(松原早耶・メモリアルコミュ4)

今後ともプロデューサーは絶対的な早耶の味方として強い拠り所になる一方で、こうして応援してくれるファンが早耶の大事な拠り所にになっていくのです。

まとめ

松原早耶のメモリアルコミュ1~4は、「可愛くなりたい少女」が「アイドル」へと至る物語として非常に丁寧に描かれていると思います。コミュ1で鮮烈に描かれた早耶の歩んできた道、そして、コミュ2以降で着実にアイドルへと変わっていく様、その上で改めて提示されるコミュ1のあの言葉……。担当贔屓であることは分かっているものの、素晴らしいコミュをいただいていると思います。

一方で、メモリアルコミュ4まではR+の頃までの物語と言えるでしょう。ここはあくまでスタートラインです。

例えば、コミュ3では逃げ腰の選択肢とも言えたセクシーな早耶、クールな早耶は、新たな魅力のため挑戦するべき対象として以降立ち現れてきます。

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(左から[アイドルバラエティ]松原早耶+、[かんぺきプラン]松原早耶+)

また、自身の苦しい経験があったからこそ、早耶自身は可愛くなりたいと思いながらも一歩を踏み出せない人の後押しをしようと考えるようになります。

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(ススメ!シンデレラロード・三好紗南編3話)

あるいは、一人ぼっちの寂しさを知っているからこそ、早耶は見ているよ、と伝えるのだ、とも。

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([キューティーチアー]松原早耶・特訓エピソード)

松原早耶の物語は、なりたい自分に向かって真っすぐ進んでいく物語です。そして、その想いに従って進んできた先に、今年2月に実装されたSSRの輝きがあります。とても素敵な子ですので、ぜひ触れていただきたいです。

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おわりに

松原早耶はコミュが良い、とは少なからず見かける言葉です。メモリアルコミュ1を見て早耶にすっかり惹かれてしまったという言葉もたくさん目にしますし、何より、私自身がその1人でもあります。

ここまで書いてきた通り、とても繊細で素敵な物語を抱えて進んでいる子です。誕生日というこの機会に(あるいはそうではない機会でも)、ぜひ触れていただきたいです。

次の1年が早耶にとってよりよい1年になることを願って――


なお、松原早耶の台詞や情報を深く知りたい方は是非、松原早耶wikiをご覧ください。
今回の記事を書くにあたっても大いに参考にさせていただきました。ありがとうございます。


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