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雪板あそび

今シーズンは暖冬で、それはあまり関係ないけども、雪山へ行く機会が無かった。2月半ばになって福井の荒島岳へ誘われ、押し入れから冬靴を引っ張りだした。

早朝に大阪を出発して約4時間。1,500mくらいの標高で、そんなに大したことないかなと侮っていた。登山口から山頂まで1,200mくらいを一気にガツンと登らされる、割とハードな山だった。山頂からは360度の眺望があり、さすが百名山に選ばれているだけあって見晴らしが良かった。少し雲が掛かっていて白山は見えなかったけど、すれ違う下山者が風が強すぎて登頂を断念した、というからラッキーな時間に登れた。途中Tシャツ1枚になるくらい暑かったし、天気もまずまずで登山者も多めだった。

今回は三人での山行だったのだけど、そのうち一人が雪板を担いでいた。雪板とはスノーボードにビンディングが付いていないただの板。専用のブーツをはく必要がない。テンカラが釣り界のUL(ウルトラライト)スタイルだとすれば、雪板はスノボ界のULという感じだろうか。

下山しながら、少し開けた緩めの斜面を見つけて、雪板に乗ってみる。ずっと担いでいた持ち主も、今日が初めての使用だという。靴からアイゼンを外し、板にスリングを取り付けてカラビナで腰に固定する。準備はそれだけ。あとは乗るだけ。

スタートするときには、スノボのように板に乗った状態でストップしておくことができない。片足を板に載せ、もう一方の足を載せると同時に板は滑りだす。エッジを使ってスピードをコントロールすることができないし、バランスをとるのが難しい。サーフィンはやったことないけど、たぶんそれに近い感覚なんだと思う。雪と山の傾斜にうまく乗る必要がある。雪板と自分が繋がっているわけではないから、力任せに操作はできない。

限定された環境で使用することに特化して、スキーもスノーボードも専用のブーツもビンディングも進化してきた。お金を掛けて道具を揃え、高速道路に乗ってスキー場へ行き、リフト券を買ってゲレンデを滑る。

そうじゃない雪遊びがあっていい。誰も整備してない雪の積もった山で、自分が滑れそうな適地を探して滑ってみる。自分の脚で登り返す。道具が単純だからこそ滑るのは難しい。その環境を読んで、雪の状態、斜面の角度に自分を合わせていく必要がある。ほんの少し乗れるだけで面白い。

小学生の頃、雪が降った朝はワクワクした。通学路の景色は一変して、全部が遊び場になった。道具なんてなくても、雪があるだけでじゅうぶん遊べた。そんなことを思い出した。

また新しい遊びを見つけてしまった。新しい雪山の楽しみ方を知った日帰り旅だった。

そういえば、暖冬だった。次はもう来シーズンかもしれない。


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