犬が死んだ。

昨日、2020年9月10日、飼い犬が死んだ。
仕事が終わって新潟から駆けつけたけど、間に合わなかった。1時間半くらい前に死んだらしい。最後は水をたくさん飲んで、唯一できる芸の、お座りをして、ヨタヨタといつもの寝るところまで歩いて行って、ぱたっと倒れたらしい。

帰ったら、目を開けたまま、まだ生きているんじゃないかって顔だった。でも、動かなかった。

相変わらずの立派な毛艶だった。
まつ毛だって、ヒゲだって、まだツンツンしている。

徐々に冷たくなって、かたくなって、でもその毛はいつまでも立派だった。

13歳と1ヶ月、立派に生きたと思う。
元々は小学生の頃に、親に強請って飼うことになった犬だ。
飼うために、勉強を頑張った。
塾のテストで一番上のクラスになって、やっと飼うことになった。

注文制でペットを置いていないペットショップに、たまたまいた一匹だった。
店に入ったらずっと鳴いていたけれど、ヒョイと抱き上げたらすんと止んだ。
「この犬だ。」
その時に直感した。

「うるさすぎて、前の飼い主に返されちゃったのかもね」
なんて親は言っていた。
もしそうなら、返されて良かった。あの日、運良く出会って良かった。最高の弟だ。

頭を撫でるのが好きだった。
散歩は嫌いでほとんどしない、好物は鳥のササミで筋肉質に育った。
でも昨日、死んだ後、頭を撫でたら、げっそりとして骨の質感が手に伝わってきた。よく頑張った。

頭は確かに、死を受け止めている。
でも、その亡骸を見ると、涙が勝手に目から溢れてしまう。
頭と心の回路は、意外と簡単に切れることを知った。

明日、火葬する。
彼にとって、喜ばしい13年間だっただろうか?
我が家にきて幸せだっただろうか?
言葉が喋れれば、聞いてみたとことはたくさんある。でも、今はそっとしておいてあげたい。心の中に生きていれば、いつだって会える。

彼からは、何もしてくれなくてもいてくれるだけで幸せないのちがあることを学んだ。

仏壇へ行って、水を一杯備えた。
明日、見送る準備はできている。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?